"井戸に沈んだ制服" 第11話
あの、寺へ持ってくはずだったものと同じ種類の籠も物置にあった。
男は玄関へ座った。
母はここで靴を履いた。
戸を閉めた。
所の女性へ笑いかけた。
そして約100m歩いた。
そこからが消えた。
「どうして乗ったんだろう」
もし池田のだったなら。
越子は彼を覚えていたのだろうか。
40くの元同僚。
「池田先?」
と声をかけられ、
「久しぶりですね」
と応じたのかもしれない。
で送ると言われたのか。
何か相談があると言われたのか。
それとも全く違う方法だったのか。
答えはない。
捜査員も何度も同じ面を像した。
しかし、越子が自宅から約100mのところでに乗ったらしいという推測以のことは分からなかった。
田健のにあった古井戸は、そのも何度か捜索された。
最初の発見。
再捜査。
池田宅のが見つかった。
を抜き、底を調べてもしい証拠はなかった。
最には、全の理由もあって埋めることになった。
が運ばれた。
暗いを溜めていた穴がしずつ埋まっていく。
最のが入る。
面がならされる。
しばらくすればがえ、そこに井戸があったことすら分からなくなる。
田は作業をくから見ていた。
あの、自分が引きげた黒い布包み。
制。
その内側から現れた蓋骨。
忘れようとしても、何度もにた。
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「埋めたって、なかったことにはならないな」
誰に言うでもなく呟いた。
もしずつ変わった。
事件までけたままだった玄関には鍵がかかるようになった。
夕方にで歩く齢者を見れば、
「送ろうか」
と声をかけるが増えた。
らないがくまっていれば、誰かが気にする。
以なら、
「そんなに疑わなくても」
と笑われたことが、笑えなくなった。
池田正をっていた民ほど、その変化はきかった。
危険な物は、分かりやすい顔をしている。
事件が起きる、はどこかでそうっていた。
しかし池田は違った。
静かな元教師。
暮らしの活者。
古い本を読む老。
ですれ違えば軽くをげる。
そんな物ののに、何もの女性の靴があった。
警察が越子の子供たちへ証拠について説した際、の捜査員が発した言葉がく残った。
「お母さまの靴は見つかりました」
そこで度言葉を切った。
「ただ……そこには、あまりにもくの靴がありました」
族はを理解した。
母だけではないかもしれない。
名すら分からないが、まだいるかもしれない。
から押収された品々はつずつ理された。
所者が判したもの。
判しないもの。
失踪事件との関連を疑われたもの。
単なる盗品と考えられたもの。
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が経つにつれ、捜査できることは減っていった。
当をるもくなる。
記憶もれる。
古い記録も完全ではない。
それでも池田のノートに残された3の方女性については、越子事件とともにく検討が続けられた。
遺骨は見つからなかった。
最期の所も分からない。
族へ返せる確な答えもない。
公式記録のでは、すべてが綺麗に解決したわけではなかった。
容疑者は。
核となる部分は未解。
それが、この事件の最に残った現実だった。
越子の親族はに、彼女のさなを理した。
箪笥から昔の学代の写真もてきた。
若い越子が教師仲と並んでいる枚。
20代の彼女は、現とは違う黒髪をくえ、し緊張した表をしていた。
同じ代、同じ学に池田もいた。
それを考えると、族はその写真をく見ることができなかった。
何ものつの職。
そのには何も起こっていないように見えた。
そして40く。
越子の蓋骨は、その学の古い制に包まれていた。
制が何をしていたのか。
池田は説しなかった。
青。
学。
純粋さ。
過への執着。
彼のからた断片な言葉をつなげれば、いくつもの解釈ができる。
だが、それは本の歪んだ世界のでしか成しないものだった。
族にとって越子は、
「浄化の対象」
などではない。
母だった。
祖母だった。
元教師だった。
隣だった。
毎週、果物とを籠へ入れて寺へ歩いていた、の普通の女性だった。
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