"真っ暗な部屋の退学届" 第2話
昔、俺が学受験に失敗した、両親より先に酒もめない俺をファミレスへ連れしてくれたのは織だった。
『回くらい転んだって、そんなに変わんないって』
そう言って笑っていた。
今度は俺の番だとった。
「どうする?」
答えを急かさず、美緒のにを差しした。
美緒は俺のをじっと見ていた。
やがて。
遺を片腕で抱え直し、もう片方のをゆっくり俺のにねた。
「……く」
その声はさかった。
だが、はっきりしていた。
母がろで息をんだ。
俺は美緒のたい指を握った。
「分かった」
「迷惑じゃない?」
「迷惑だったら最初から言わないよ」
そう答えると、美緒はほんのしだけ唇をかした。
笑ったのか。
泣きそうになったのか。
そのの俺には分からなかった。
ただつだけ分かっていた。
このから。
俺の暮らしは終わった。
そして、美緒の「母親のいない活」が始まった。
俺たちはお互い、それがどんな毎になるのか何もらなかった。
「……孝太郎おじさん」
「何?」
「この部、最に掃除したのいつ?」
美緒をへ連れてきたその夜、最初に突きつけられたのはしみでもでもなく、俺の活能力に対する静な指摘だった。
2LDKのマンションは、暮らしには分すぎる広さだった。ところが使っていなかったには段ボール、季節れの、読み終えた雑誌が積みがり、「部がつ余っている」
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という俺の説がほとんど詐欺にかったことを、美緒はドアをけて5秒で理解したらしい。
「応、客なんだけど」
「客、ここで寝かせるの?」
「最来てないから」
「来なくなった理由、分かった気がする」
呆れた顔が織にそっくりで、俺はわず笑ってしまった。
にしては落ち着きすぎた美緒も、俺が笑った理由には気づいたらしい。「何?」と眉を寄せた、自分でも何となく察して線を逸らした。
「……お母さんも、そういう顔してた?」
「してた。俺の部見るたびにな」
「やっぱり」
その夜、俺たちは30分ほどかけて部を片づけた。とりあえず寝られる所だけ作ろうとっていたのに、美緒はゴミ袋を持つと際よく雑誌と品を分別し、俺よりも先に収納の使い方まで決めてしまった。
「こっちは捨てていい?」
「それはいる」
「3の通販カタログだよ?」
「じゃあいらない」
「判断遅い」
こんなやり取りをしながら部がしずつのめる空になっていくと、葬儀でまとわりついていたたい空気が、ほんのしだけくなった。
夕は帰りで買ったハンバーガーだった。
自分でもを引き取った初の夕としてどうなのかとったが、美緒は文句も言わず、ポテトを本ずつつまんでいた。
「学はどうする?」
「今のところから通えるよ。線は変わるけど、はそんなに変わらない」
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「じゃあ定期は作ろう。必なものも買おう。制とか教科はから持ってくるとして……」
話しながら、急に責任のさが現実になった。
これまでは自分だったから、朝を抜こうが夜にラーメンをべようが自由だった。だが今は目のに、まだ育ち盛りのがいる。
「つ、きな問題がある」
俺が真顔で言うと、美緒の表が固まった。
「何?」
「料理だ」
「……料理?」
「俺、ほとんどできない」
数秒の沈黙の、美緒が吹きした。
最初は元を押さえていたが、次第に肩まで震え始めた。
「笑うなよ。結構真剣に悩んでるんだぞ」
「だって……何か変な話かとったのに」
「毎コンビニ弁当ってわけにはいかないだろ。だぞ」
「お母さんから聞いてた」
「何を?」
「『孝太郎は優しいし顔もまあまあだけど、料理だけは本当に駄目』って」
「姉さん、そんなことまで話してたのか」
「結構話してたよ」
美緒はそう言いながら笑った。
その笑顔を見た瞬、胸の奥がし痛んだ。
織の笑い方に似ていたからだ。
「料理は私がする」
「いや、それは悪いだろ」
「お母さんに教えてもらってたから好きだし。何もしない方が落ち着かない」
「でも受験だろ」
「毎じゃなくていいよ。できるにやる」
そう言った。
美緒は度だけ、テーブルのの遺に目を向けた。
「何もしなかったら、お母さんにられそうだから」
るい声だった。
それなのに、その横顔は今にも泣きそうだった。
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