"20億追放妻の封筒逆転" 第4話
へ戻ると、健也がリビングにいた。
彼は私が本へ呼ばれたことをっていた。
「話、聞いた?」
私から尋ねると、健也は目を逸らした。
「うん」
「20億円」
「……うん」
「国へろって」
「ってる」
あまりにも簡単に答えるので、私はったままけなくなった。
「あなたは反対しなかったの?」
健也はため息をついた。
「結菜、僕もどうしたらいいか分からないんだ」
「分からない?」
「美奈は妊娠してる。それも双子だ。両親がどういう考え方するか、君も分かるだろ」
「それで私は?」
健也が眉に皺を寄せた。
「君には20億円があるじゃないか」
私はわず笑った。
「そうね」
「悪いで言ってるんじゃない」
「じゃあ、どういう?」
「でしいを始めた方が、君だって幸せになれる」
健也は本気でそう信じようとしているようだった。
私は彼を見た。
5、緒に眠った男。
私が採卵に痛みでけなかった夜、「丈夫」とを握ってくれた男。
そのが今、別の女との子どもを選び、私にはを持って消える方が幸せだと言っている。
「美奈さんをしてる?」
健也はすぐには答えなかった。
その沈黙で分だった。
それでも私は待った。
やがて彼は、い声で答えた。
「……してる」
胸の奥で、最に残っていた糸が切れた。
私は泣かなかった。
「分かった」
「結菜」
「もういい」
その夜、私は寝のクローゼットからスーツケースをした。
広告
健也はドアのにっていた。
「署名するの?」
「まだ決めてない」
「僕をんでる?」
を止め、彼を見た。
「今はまだ、むほど理できてない」
健也は俯いた。
「ごめん」
「その言葉、何回言うの?」
「……」
「ごめんで全部戻るなら、何回でも聞くけど」
私はそれ以言わなかった。
翌朝。
目が覚めた瞬、い吐き気に襲われた。
トイレへ駆け込み、何度かえずいたが、何もない。鏡を見ると、自分でも驚くほど顔が悪かった。
寝だ。
ストレスだ。
数まともにべていないせいだ。
そうった。
ところが、カレンダーを見た瞬、が止まった。
理が遅れている。
普段なら妊治療のたびに単位で気にしていた。しかし今回、夫の倫騒が始まってからというもの、私は付を数えることさえ忘れていた。
最に病院で受けた胚移植。
週。
結果確認の、仕事が入った健也は同しなかった。病院では数値が微妙で「まだ判断できない」と言われ、その私は再検査へかないまま、庭が崩れていった。
私はを震わせながら、いつもの産婦科へ話した。
診察のい壁を、私はぼんやり見つめていた。
採血を受け、超音波検査を終えたあとも、期待しないよう自分に言い聞かせていた。5、何度同じことを繰り返したか分からない。し遅れただけで期待し、結果を聞いて落ち込むことに、もう疲れていた。
広告
医師がモニターをこちらへ向けた。
「斎藤さん」
その呼び方が、今はし苦しかった。
「妊娠しています」
私は瞬きをした。
「……え?」
「現6週半くらいですね。先の胚移植が着したと考えていいでしょう」
画面に、さな黒い袋のようなものが見えた。
「ここです」
医師が指した。
私は何も言えなかった。
胸の奥から何かが気にがってきて、呼吸が乱れた。
「先」
声が震えた。
「本当に?」
「はい。ただ、かなり疲れているようなので無理は禁物です。今はできるだけ休んでください」
私は診察をたあと、廊のベンチへ座り込んだ。
ずっと欲しかった子ども。
永に来ないとっていた命。
それが、夫と別れるかどうかを決めるの真んで、突然私のにいるとらされた。
希を呼んだ。
病院へ駆けつけた彼女は、私が差しした超音波写真を見るなり、両でを押さえた。
「結菜……」
私は笑おうとした。
でも無理だった。
希の肩へ顔を埋め、子どものように泣いた。
「どうして今なの」
「結菜」
「もうしかったらって考えちゃう。あのが美奈さんを選ぶだったらって」
希は背をさすった。
「でも、それを考えちゃだめ」
「分かってる」
分かっていた。
子どもがもうしく来たからといって、夫が浮気をしなかった保証などない。
がいなくなった保証もない。
義実が私を切にした保証もない。
私は泣き終えると、超音波写真を両で持った。
「言わない」
希が驚いた。
広告
おすすめ作品
-
完結第17話
しおれた野菜と30万円
正月準備のため妻・綾野に三十万円を預けた修平が帰宅すると、冷蔵庫は空になり、綾野はしおれた野菜を抱えて震えていた。防犯カメラには、合鍵で侵入した母・久美子と妹・ゆりが、食材と現金を奪い、「妻が使い込んだことにする」と脅す一部始終が残されていた。 修平は援助や契約を停止し、父の遺品を調べる。その結果、母は前夫の家から二百万円を持ち逃げし、血のつながらない修平を守ろうとした父に返済を肩代わりさせていたことが判明する。完済後も母は架空の利息をでっち上げ、修平の出生を暴露すると父を脅して、長年金を奪い続けていた。人生逆転|嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場2.5万字5 919 -
完結第15話
妊娠中の娘が逃げ帰った夜、大富豪の母が動いた
妊娠8か月の娘・はるかが、顔に傷を負い、母エリコの家へ逃げ帰ってきた。病院では新しい肋骨の骨折に加え、以前の骨折痕も見つかる。夫・匠による暴力は、一度きりではなかった。 匠は巨大企業グループの創業家の一員。だがエリコはその地位にひるまず、娘の安全を確保し、診断書を残す。同時に信頼する会計士へ調査を頼むと、匠一家が関わる財団に巨額の不正な資金移動の疑いが浮かび上がった。 報道を受けても疑惑を否定し続けた匠は、緊急会見の最中、はるかへの傷害容疑で逮捕される。さらにグループの資金問題にも捜査が及び、権力を盾にしてきた一族は追い詰められていく。 母の行動が事態を動かす一方、すべての始まりにあったのは、はるかが自分とお腹の子を守るため、あの家から逃げ出した決断だった。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.3万字5 1216 -
完結第11話
棺の中で眠る娘と、吠え続けた秋田犬
秋田の豪雪地帯で、七歳の少女・雪の葬儀が営まれていた。ところが愛犬ハチだけは棺に向かって激しく吠え、畳を掻き続ける。周囲が狂犬扱いする中、前妻であり元救命看護師の静子は、棺の内側から聞こえる微かな音と、雪の指先の動きを見逃さなかった。 静子が葬儀を止めて棺を開けると、雪には脈と呼吸が残っていた。静子は的確な応急処置を行い、雪はついに「お母さん」と声を発する。無力だと見下していた静子に娘を救われ、後妻エミリーと父・健一は言葉を失う。 しかし、奇跡の生還で物語は終わらない。救急搬送される娘に付き添いながら、静子は「なぜ雪が猛吹雪の夜、裏山へ出たのか」という疑念を抱く。人生逆転|真実|真相|親子関係1.6万字5 673 -
完結第15話
炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男
正木電気の新人・潮見知夏は、猛暑の中で草むしりを強要され、総務部長・黒岩から執拗な嫌がらせを受けていた。五年ぶりに本社へ戻った滝川武は彼女を救い、腐敗した職場の実態を静かに探り始める。 知夏は書類整理中、解約済みの植栽会社へ毎月五十万円が送金され続けている事実を発見。その直後、地下倉庫へ追放され、ついには炎天下で倒れてしまう。滝川と堀田課長は、黒岩と八谷常務による総額二億三千万円の横領証拠を揃え、臨時役員会を招集する。 そこで滝川が専務執行役員であることが明かされ、帰国した正木社長も黒岩を追及する。職場逆転|因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 474 -
完結第11話
父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠
父の葬儀の読経中、夫のスマホが3度震えた。 「会社で緊急のトラブルがあった」 そう言って席を立った夫は、私の父を見送ることなく姿を消した。 喪主だった私は、何も言えず一人で最後まで葬儀を終えた。 その夜、冷たい家に戻ると、午前2時57分―― 亡くなったはずの父の名前から、メッセージが届いた。 「誰にも言わず、母さんの墓へ行きなさい」 半信半疑で向かった先で、父が残していたものを見つけた。 そこに入っていたのは、夫の知られざる裏切りと、私を守るための証拠だった。 そして私は初めて知った。 父は最後の日まで、私の人生を守ろうとしていたのだ。夫婦|親子関係|修羅場|不倫1.6万字5 471 -
完結第13話
私を捨てた元婚約者が、十数年後に知った本当の私
高校卒業二十周年の同窓会に、招待されていない富本吉春が、社長令嬢の妻・エミナを連れて現れる。十四年前に婚約者だった医師・真子を裏切った彼は、「金持ちと結婚した俺だけ幸せでごめんな」と公然と嘲笑するが、真子は静かに「本当にそう思う?」と問い返した。 かつて吉春は、激務の真子に家事と結婚準備を押しつけたうえ、同級生の美雪を自宅へ連れ込み、開き直って婚約を破棄していた。両親に慰謝料まで肩代わりさせた彼と縁を切った真子は、その後、誠実な同級生・小関京介と再会して結婚。京介は倒産寸前の家業を、東証プライム上場企業へ成長させた経営者になっていた。 同窓会場で真子が過去の浮気と卑劣な責任逃れを暴露すると、吉春の虚飾は崩れ始める。そこへ京介が現れ、真子の夫だと判明。さらに吉春の妻エミナは彼を見るなり「小関社長」と青ざめる。物語は、エミナと京介の関係、そして吉春の“勝ち組”という嘘が暴かれる直前で途切れている。夫婦|裡の顔|不倫2.0万字5 696 -
完結第13話
黒い着物の誓い
「お前んち、ヤクザだっけ?w なら今すぐ呼んでみろよ」 同窓会の席で、私は昔のいじめ加害者に笑われました。 祖母の形見の黒い着物を見て、 「極道の真似事かよ」 そう言った男は、私の胸元に酒を浴びせたのです。 周囲は笑っていました。 10年前、教室で机に落書きをされた時と同じように。 私は怒りを抑え、ただ1本の電話をかけました。 「5分で来てください」 すると―― ホテルの前に現れたのは、30台の黒塗り高級車。 そして、誰もが知るはずのない私の本当の立場を前に、笑っていた同級生たちは凍りつきました。 しかし、そこで終わりではありませんでした。 床に這いつくばって謝罪する男の背後には、 母親が隠していた「400万円の借金」と、10年前の雨の日に繋がる秘密があったのです。 なぜ私は、私を傷つけた相手を救うことになったのか。 そして、あの日の1万円が、10年後に大きな運命の変化を起こすことになるとは――人生逆転|怒り|真実|修羅場1.9万字5 500 -
完結第15話
300億円の恩返し
結婚式当日、白いタキシードを着て新婦を待っていた琢磨に告げられたのは、「結婚は最初からドッキリだった」という言葉。銀行の創業家である新婦の家族は、彼を笑い者にし、その様子まで動画に撮っていた。 駆けつけた妹の未令は、兄を見下す銀行一家の前で財務担当者に電話をかける。彼女は世界各地で事業を営む企業グループの創業者で、その銀行には約300億円を預けていた。無名だった未令の夢を信じ、借入れの保証人になったのも琢磨だった。人生逆転|兄弟姉妹|真相|修羅場2.2万字5 765