"冷えた雑煮の逆転正月" 第4話
「弓さん、あなた駅まで迎えにってたの? のこともやらずに」
弓は靴を揃え、何も答えなかった。
母が目を丸くする。
いつもなら真っ先に、
「すみません」
と言う弓が、自分の嫌を無したのだ。
俺は何も言わず居へ入った。
直はこたつに寝転び、スマホでゲームをしている。
「兄貴、お帰り」
線すらげない。
俺は着を脱ぎかけたところで、テレビ台の端に置かれた封筒へ目を止めた。
元の産会社。
封済み。
から類が半分ほどている。
そこに印刷された言葉を見た瞬、背がたくなった。
――売却査定。
「母さん」
俺は封筒を指した。
「これは何?」
母の笑顔が固まった。
慌てて封筒を掴み、背へ隠す。
「違うのよ。最ポストに入ってたの。無料での価値を調べますっていう、ただのチラシ」
「チラシに母さんの名が印字されるんだ」
「それは……」
「しかも査定額までいてあったように見えたけど」
母の額に汗が浮いた。
直が面倒そうに舌打ちした。
「帰って々、尋問かよ」
「尋問じゃない」
俺は直を見る。
「親父のだから聞いてるだけだ」
「売ったっていいじゃん。古いし」
その言に、母が直を睨んだ。
余計なことを言うな、という顔だった。
「まあまあ、お正なんだから」
母は無理やり笑った。
そして逃げるように弓へ声をばす。
「弓さん、突っってないで健にお茶を」
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「いらない」
俺は遮った。
「それよりパスポートを片づけたい。庫をけてくれ」
母の顔から血の気が引いた。
「庫?」
「親父の通帳も確認しておきたいし」
「今は駄目よ」
母はのへ回り込んだ。
「どうして?」
「壊れてるの。ダイヤルが変になっちゃって、業者を呼ばないと」
あまりにも分かりやすい嘘だった。
目が泳いでいる。
「そうか」
俺はあっさり引いた。
「壊れてるなら仕方ないな」
母はらかに堵した。
その瞬、俺は確信した。
庫のには、母が絶対に見られたくないものがある。
2階の寝へ入ると、弓がドアを閉めた。
「お義母さん、すごく揺してた」
「ああ」
俺は取引履歴のコピーを見せた。
「ここ数かだけで1000万円くいてる」
「1000万円……」
弓が息をむ。
「直のだけじゃない。母さん自もい着物や宝を買ってるらしい」
「お義父さんが治療費まで節約して残したおなのに……」
弓はしそうに目を伏せた。
俺はそのを取った。
「の朝、全部終わらせる」
その夜、母は俺の嫌を取ろうと級なすき焼きを用した。
ところが卓を見ると、子は3つしかない。
弓の器もない。
弓は当然のように台所へ向かおうとした。
俺は箸を置いた。
「弓。こっちへ来て」
母の眉ががる。
「何言ってるの? 弓さんは台所の方が気楽なんだから」
「俺は弓に言ってる」
俺はちがり、弓のを引いた。
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自分の隣へ座らせる。
「夫婦で緒にべる。それが普通だろ」
母の顔が真っ赤になった。
直も箸を投げる。
「飯がまずくなるな」
「ならうな」
俺が言うと、直は絶句した。
弓は緊張したまま座っていた。
俺は鍋から温かい肉を取り、弓の器へ入れた。
15。
たったこれだけのことすら、俺はしてこなかった。
事の、呂からると、洗面所の隅で弓が待っていた。
「健さん」
声を落とす。
「さっき、お義母さんと直さんが話してるのを聞いた」
「何を?」
「の朝番でへくって。残りの預を全部かすつもりみたい」
俺はタオルで髪を拭きながら、さく息を吐いた。
「やっぱりな」
俺が庫と産会社の封筒に気づいたことで、母たちは焦った。
全部自分たちの元へ移すつもりなのだ。
「ちょうどいい」
「え?」
「、で見届けよう」
俺はすでにへ連絡していた。
父の預座は、俺の本確認なしではきな額をかせない状態にしてある。
あとは母自が何をしようとするのか。
見届ければいい。
翌朝9過ぎ。
正休みけのは、まだ客もなかった。
俺と弓は入くから母の様子を見ていた。
窓のにつ母は、級な毛皮のついたコートを着ている。指には真珠の指輪。
たいでを荒らした弓とは、あまりにも対照だった。
「直の座に今すぐ振り込んでちょうだい!」
母の甲い声がロビーに響く。
窓の女性員は何度もをげていた。
「申し訳ございません、かず子様。昨もお話でお伝えした通り、ご名義である健様の確認がない限り、これ以の額な振り込みはできません」
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