"「子なし」離婚の大誤算" 第5話
「もう話すことはありません」
「待ってくれ」
健もちがった。
「子供をどこへ連れてくつもりだ」
「です」
「どこのだ? 必なら私の別荘を使えばいい。警備も――」
「渡辺代表」
私は遮った。
「私たちは婚して10です。私と息子がどこへもうと、あなたには関係ありません」
「私の息子でもある!」
健が叫んだ。
私は鞄から1枚のコピーを取りした。
婚協議。
「ご自分の署名ですよ」
「……」
私は指で「婚姻の子なし」という文字を示した。
健はい、その文字を見つめた。
「10、あなた自が何も確認せず、急いで終わらせた結婚です」
私は類を戻した。
「今、その結果をっただけです」
帰りのの。
陸はしばらく黙っていた。
やがて私の肩へを寄せ、さな声で聞いた。
「ママ。あのが僕のお父さんなの?」
私は覚悟していた質問だった。
「血のつながりで言えば、そうよ」
陸は黙った。
私は髪を撫でた。
「でも父親という言葉は、血だけで決まるものじゃないとママはってる」
「……うん」
「すること。守ること。責任を持つこと。それを10してこなかったを、今すぐお父さんと呼ぶ必はない」
陸はしばらく考えてから頷いた。
「僕にはママがいるから丈夫」
その言葉を聞き、胸が締めつけられた。
卒業式の翌から、健は私と陸について徹底に調べ始めた。
でったことだが、彼は自分のペントハウスオフィスへほとんど籠もり、秘に過10の資料を全て集めさせたらしい。
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最初に届いたのは、婚の産記録だった。
私が港区のマンションを、婚から1かもしないうちに売却していたこと。
次に写真館「」の事業記録。
神田のさなから始まり、徐々に規模を広げていった履歴。
そのには写真もあった。
根裏部で、まれたばかりの陸を抱く私。
片で画像を修正しながら、でベビーベッドを揺らしている姿。
陸の1歳の誕。
さなケーキを2で囲んでいる写真。
幼稚園の運会。
いカメラを持ってる私と、ゴールへび込む陸。
健はその写真をい見ていたという。
自分が美咲との婚活を送り、会社を拡し、成功者として名をげていた。
そのに陸はまれ、泣き、笑い、歩き、言葉を覚えていた。
全て自分のらない所で。
さらにに関する記録もあった。
父親欄には、健の名はなかった。
それを見た、彼は初めて、自分が本当に「しなかった」10を理解した。
同に、写真館「」の現の資料も調べた。
売はすでに数億円規模。
国内の企業や流ブランドと仕事をしていた。
私自も商業写真として受賞歴をねていた。
健が10、「を渡せば簡単に消える」と考えた女性は、彼のらない所で自分の王国を作っていた。
けれど健は、それを理解したも方法を違えた。
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悔より先に、支配欲がた。
「取り戻す」
そう考えたらしい。
私も。
陸も。
10失ったのなら、これからの数で取り返せばいい。
そのためならも権力も使う。
健は吹投資と取引のある企業へ圧力をかけ始めた。
卒業式から4。
私が写真館へ勤すると、チーフアシスタントの彩佳が青い顔でづいてきた。
「代表、変です」
その朝だけで、型案件が3件キャンセルされていた。
の商品撮。
雑誌の表。
半以準備していた企業広報。
全て突然だった。
「理由は?」
「どこも曖昧です。方針変更とか、別のチームが見つかったとか……」
私は窓のを見た。
健だ。
すぐに分かった。
スタッフたちの空気はかった。
私は皆を集めた。
「料も賞与も、1円も減らしません」
全員が私を見た。
「今まで通り仕事をしてください。私たちは10、もっと変な期も乗り越えてきたでしょう」
彩佳が配そうに聞いた。
「でも代表、このまま続いたら……」
「続かせない」
私は言った。
その直、らない番号から話が来た。
ると、健だった。
「私の挨拶は届いたようだな」
声には昔と同じ傲さが戻っていた。
「さゆ。これは始まりにすぎない」
私は黙って聞いた。
「条件は3つだ」
健は命令するように言った。
「1つ、陸を連れて私の別荘へ移る」
「2つ、今の仕事を辞める。活費は全て私が負担する」
「3つ、記者会見をき、陸が私の息子だと公表し、共同で育てると発表する」
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