"近道看板の逆襲" 第1話
俺の名は平浩。両親と妻、そして娘の5で、のいさなに暮らしている。
平は先祖代々、農業を業にしてきただった。子供の頃の俺にとって、畑も農具もの匂いも、あまりにすぎるで、若い頃はむしろ都会への憧れの方がかった。
を卒業すると元をれ、そのまま都会で就職した。農を継ぐつもりなど、当はほとんどなかった。
そんな俺がへ戻ることになったのは、10のことだ。
父の虎之助が病気で倒れた。
幸い命に関わる状態ではなかったが、しばらく農作業を続けられなくなった。の畑をどうするかという話になった、俺は仕事を辞め、妻と緒に故郷へ戻る決をした。
都会でりった妻のは、同じ職で働いていた女性だった。
交際して結婚したばかりの頃、俺はずっと都会で暮らすものだとっていた。それなのに突然、「実へ戻って農業を継ぎたい」と言いしたのだから、には相当な戸惑いがあったはずだ。
それでもは反対しなかった。
「浩さんが本当にやりたいなら、私も緒にくよ」
その言葉に、どれほど救われたか分からない。
へ戻ってからの活は、決して楽なものではなかった。朝はく、候に仕事をされ、収穫期になれば休む暇もほとんどない。
それでもは度も「こんなはずじゃなかった」
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と言わなかった。
畑仕事を覚え、両親を助け、今では俺より作物のさな変化に気づくことさえある。
そのの、俺たちは族総でみかんの収穫をしていた。
枝いっぱいについた実を眺めながら、が嬉しそうに声をげた。
「浩さん。今のみかん、よりかなりいいね」
「そうだな。今は候に恵まれたのもあるけど、がいっぱい育ててくれたおかげだよ」
「またそんなこと言って」
は笑いながら、傷のない実を丁寧に籠へ入れた。
俺は作業のを止め、しだけ真面目な声をした。
「にも言ったけどさ。結婚してすぐ業を継ぐことになったのに、文句も言わず俺についてきてくれて、本当にありがとう」
は瞬驚いたような顔をしたが、すぐに穏やかに笑った。
「畑仕事は確かに変だけど、浩さんとまた緒に働けるの、私は結構好きだよ」
そう言ってから、ののみかんを眺める。
「それにしても、お世辞抜きでうちのみかんっておいしいよね。やっぱり農業のおかげかな」
「それはかなりきいとう」
この域では、昔からを利用した独特の栽培方法が受け継がれている。
汲みげたを適切に利用しながら作物を育てる方法で、いをかけてや作物にわせて改良されてきた。こののみかん農のくも、その技術を取り入れていた。
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「昔からずっとやってたの?」
が尋ねる。
「今みたいな形になったのは50くらいだったかな。先代のだった杉野さんが広めたって父さんから聞いたことがある」
「さんって、今のさんのお父さん?」
「ああ」
当、このは候順がなり、みかんの来も良くなかったらしい。収穫量は定せず、農の暮らしは今よりずっと厳しかった。
そこでさんがを利用した栽培方法の研究に力を入れた。
い試錯誤の末、作物の品質がしずつ良くなり、収穫量も増えていった。やがてこの域のみかんは、や見た目の良さが評価され、全国から注文が入る産へ成した。
「昔は貧しいだったなんて、今じゃ考えられないね」
は周囲の々を見ながら言った。
確かに今のには派なも増え、農業で成功してきなに乗るも珍しくない。
「先代のには、本当に謝してもしきれないよ。今のものためにいろいろ頑張ってくれてるし、俺もしでも役にてればとってる」
「でもさん、倒れたんでしょう?」
「ああ。命に別状はなかったみたいだけど、まだ入院してるって聞いてる」
現のは杉野の息子で、父の虎之助とは同級だった。
虎之助は々見いにもっているらしい。
「今度、具を聞いてみるよ」
俺がそう言っただった。
「パパー!」
畑の向こうから、さな声がんできた。
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