"欠陥品と呼ばれた歌姫" 第5話
「桃さん」
振り返ると、也が壁にをつきながらっていた。「寝てなきゃ駄目でしょう」と言う私に、彼はし迷ってから尋ねた。
「いつまで、俺たちのこと助けてくれるつもりですか」
私は答えられなかった。
その問いをきっかけに、私は初めて、自分がこのを「伝いに来る所」ではなく、「帰りたい所」だとい始めていることに気づいた。
也に恋を持っていると認めるまでには、さらにがかかった。妹の元夫だからという抵抗もあったし、私が良の母親の座を奪おうとしているのではないかという罪悪もあった。何より、良にとって私は「桃ちゃん」であり、その定した関係を私の都で壊すことが怖かった。
そんな私の気持ちを番先に見抜いたのは、当8歳になっていた良だった。ある夕方、算数の宿題を見ていると、良は突然「桃ちゃん、パパのこと好き?」と聞いてきた。私は持っていた赤鉛を落としかけ、「どうしてそんなこと聞くの」と慌てて返した。
「だって、パパ、桃ちゃん来るは髪ちゃんとするから」
「いつもはしないの?」
「しないよ。あと桃ちゃんも、パパいるはつける」
子どもは、がっている以によく見ている。私は何も言い返せず、「そういうことより宿題しなさい」と話をそらしたが、良は楽しそうに笑っていた。
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也の仕事は、その頃さらに増えていた。ネットでは「TAKA」という名義を使い、画投稿者や若シンガーへの楽曲提供でしずつ名をられるようになっていた。派にテレビへるようなではなかったが、雇いの仕事を完全にやめても親子で活できる程度には収入が定していた。
ある曜、也から「今は俺が夕飯作ります」と連絡が来た。ってみると普段より部がきれいに片づけられ、テーブルにはカレーとサラダ、その横には所のケーキの箱が置かれていた。誕でも記でもないので議にっていると、也は蔵庫の横からさな封筒を取りした。
「ずっと言いたかったことがあって」
封筒のには、枚の便箋が入っていた。字をくのが苦な也らしいし格好な文字で、い文だけがかれていた。
「僕と良と、族になってください」
読み終えるに涙がた。私は泣きながら笑い、「これ、プロポーズ?」と聞くと、也はまで赤くしながら頷いた。
「俺、昔は本当に何も考えてなかったんです。音楽で売れれば全部何とかなるとってたし、父親になる覚悟だって、恵が妊娠してから慌てて作ったようなものでした」
也は度息を吸い、私をまっすぐ見た。「でも良とになって、桃さんに助けてもらって、族って何なのか初めて分かった気がする」
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と続けた。その言葉に嘘はないとえた。
それでも私は、つだけ確認した。
「私、子どもできないかもしれないよ」
「ってます」
「良のお母さんになれる自信もない」
「もうなってるじゃん」
声がしたのは隣の部だった。振り返ると、良が半分だけ扉をけ、いつから聞いていたのか分からない顔でこちらを見ていた。
「良には、本当のお母さんがいるでしょう」
私が言うと、良はし考えた。「いるけど、いないじゃん」と答え、それから照れたように笑った。
「私、桃ちゃんがいい」
その言で、25歳の頃から自分のに残っていた「子どもを産めない女」という言葉が、しくへれていった気がした。
翌、私たちは正式に籍を入れた。恵が残した婚届は失踪に受理されており、也との婚姻関係はすでに解消されていた。良についても本の気持ちを確認しながら必な続きをめ、私は法にも彼女の母親になった。
父へ報告すると、第声は「恵の元旦と?」だった。「世体が悪いぞ」とも言われたが、私は「世と結婚するわけじゃない」と答えた。それ以、理解してもらおうとはわなかった。
結婚式は挙げなかった。代わりに所の写真館で、だけの族写真を撮った。
いワンピースを着た良は、私と也のにっていた。撮、し緊張している私のを握り、何でもないことのように言った。
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