"消された妻の逆転乾杯" 第5話
「族同伴の会だといてあるけれど」
「形式はな。俺の隣にはリナを座らせる」
私は鏡越しに夫の顔を見た。冗談ではないことは、その調ですぐに分かったので、川リナが単なる部ではないことをっていると告げた。ホテルの領収も旅写真も見たと言うと、孝志は驚くどころか、むしろ話がいと肩をすくめた。
「リナとは2から付きっている。役員になったら、おとは婚するつもりだ」
「35緒に暮らして、そのうち17はあなたの仕事まで支えてきた私を?」
「昔の話をするな。今の俺に必なのは、取引先のへしても恥ずかしくない妻だ」
「リナさんを妻として紹介するつもりなの?」
「そうだ。籍なんてからどうにでもなる」
6の夕暮れが、窓越しにリビングを赤く染めていた。以なら鳴っていたかもしれないし、泣いて理由を聞いたかもしれない。けれど、そのの私の胸に広がったのはりではなく、絡まっていた糸が突然ほどけたような静けさだった。
私は17、夫の成功を自分たち族の成功だとおうとしてきた。自分の名が消されても、夫婦だから同じだとし、嘘をつかれても庭を守る方を選んだ。それなのに孝志自が、私を妻ですらない所へ追いそうとしている。
「もし私が会で本当のことを話したら、どうするの?」
広告
「おに何が話せるんだ。会社のことなんて何もらない専業主婦だろ」
私はわずさく笑った。
「そうね。あなたはずっと、そう説してきたものね」
「当は黙って笑って、乾杯だけしていろ。それが最の妻の役目だ」
「分かりました。乾杯します」
孝志は私が折れたとったらしく、満そうに寝へ向かった。
その背を見送りながら、私は翌朝に話をかける相を決めていた。
祝賀会の2週、私は都内のホテルにある静かなラウンジで黒川会と向かいっていた。黒川は70代半ばを過ぎていたが、技術畑を歩いてきたらしく目だけは鋭く、私が持参した古い設計ノートを枚ずつ慎に確認していた。話で事を簡単に説したには半信半疑だったようだが、資料を見始めてから表が変わった。
「このノートは、あなたがいたものですね」
「はい。付も修正履歴も当のままです。夫が会社へ提した資料より3週い期から検討内容が残っています」
黒川は古い記憶媒体のファイル報も確認した。作成者欄には、私が退職に使用していた識別名が残っており、複数の原案が孝志の社内提より先に作成されていた。さらに私が保していたメール記録と照すると、夫が私からファイルを受け取ったまで確だった。
広告
「佐君からは、彼自が基本理論を考案し、庭で奥さんに文章をえてもらった程度だと聞いていました」
「最初は私も、それでいいとおうとしていました。でも、これを見つけました」
私は技術顧問契約と辞退のコピーをテーブルへ置いた。黒川は契約を見るなり眉を寄せ、当自分が直接指示して送ったものだと認めた。ライフサインの理論に、以籍していた私の研究との共通点をじ、部顧問として復帰してもらえないかと考えたのだという。
「この辞退は、あなたがしたものではない?」
「私は契約自体を17りませんでした。署名も私の字ではありません」
黒川は老鏡をし、しばらく黙って私を見つめた。その、なぜ今まで何も言わなかったのかと尋ねたので、私は夫婦の柄なら同じだとっていたこと、自分さえすれば庭が壊れないとっていたことを正直に話した。
「でも、支えることと、そのものを消されることは違うと、やっと分かりました」
黒川はく息を吐き、会社のサーバーや過のバックアップを調査すると約束した。古いデータでも、作成履歴や送信記録が残っていれば、社内提資料が誰の原案から作られたのか確認できる能性があるという。私はさらに、孝志の正経費に関する記録も鞄から取りした。
ホテル宿泊費、温泉旅館、宝での購入履歴。孝志はその部を取引先との会費や贈答品として会社へ申請していたが、実際には川リナとの旅や彼女への贈り物に使われていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
姉の身代わりで嫁いだら、冷酷当主の本命でした
家族に冷遇され、姉の身代わりとして“冷酷な当主”のもとへ嫁がされた澄乃。しかし初対面で、偽りの花嫁だと見抜かれてしまう。 追い返される覚悟をした澄乃に、静は「お前で構わない」と告げる。さらに帳簿を読む彼女の才能と、恐れながらも嘘をつかなかった誠実さを認めていく。歴史|昭和|ミステリー|夫婦|第二の人生2.0万字5 12 -
完結第13話
三年前に署名させた離婚届
「息子は金髪美女と再婚するのよ」――玄関先で勝ち誇る義母が突きつけてきたのは、一方的な離婚届だった。大手商社勤務の夫に裏切られ、三ヶ月の海外出張中にも不貞の影に苦しめられていた妻のナナ。だが、見下され続けた妻は取り乱すどころか、冷ややかに微笑んだ。義母も夫も知らなかったのだ。三年前に署名させた一枚の用紙と、水面下で集められた決定的な証拠の存在を。鳴り止まない何十件もの着信を前に、彼女は静かに告げる。「離婚届なら、とっくに提出済みですよ」嫁姑|夫婦2.0万字5 144 -
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 351 -
完結第20話
愛人と帰国した夫、30分の猶予
「この後彼女が来るから早く出て行けよ」 南の島から愛人と帰国した夫と義母は、日焼けした顔で私に吐き捨てた。十六年間、生活費を一銭も入れず寄生してきた挙句、亡き両親が遺した百坪の豪邸を乗っ取り、私を追い出す算段だ。届いた内容証明郵便を「慰謝料の小切手」と勘違いし、ハイタッチで完全勝利を確信する二人。 だが、愚かな親子はまだ知らない。十六歳の息子が密かに仕掛けたボイスレコーダーと、十五年前のベビーモニターが捉えた戦慄の記録を。そして、迎えに来た黒塗りの高級車の正体を。 「あと三十分後に消えます、ご安心を」 私が冷たく微笑んだその時、玄関のインターホンが鳴り響いた――。嫁姑|夫婦3.0万字5 313 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 1081 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 166 -
完結第20話
月30万円の親孝行は、誰の財布から?
夫から突然告げられた、義母への「毎月三十万円」の仕送り。妻・美奈子は反対せず、静かに「いいよ」と答えた。 三日後、銀行で残高四万円を知らされた夫は激怒する。だが美奈子は、二十二年間で家計へ補填した一千二百万円超の記録を並べ、「その三十万円、誰の収入から出すつもりだったの?」と問い返す。嫁姑|夫婦|介護|金銭問題2.8万字5 759 -
完結第20話
路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算
娘の顔合わせに路線バスで訪れた庄三は、相手の両親から「車も持てない乞食」と嘲笑される。婚約者まで黙って見ていたため、庄三はわずか五分で破談を告げた。 しかし庄三の正体は、県下一の交通グループを一台の中古バスから築いた創業者。翌日、社運を懸けた大型工事のコンペ会場で、相手親子は上座に座る庄三と再会する。職場逆転|人生逆転|第二の人生|金銭問題2.6万字5 1426