みかん小説
本棚

"7階に戻るな" 第8話

私は朝から台所へった。鯛の塩焼き、筑煮、茶碗蒸し、ほうれんの胡麻えと、健太が子どもの頃から好きだった料理を並べた。料理を作りながら、幼い息子が子へ座って「お母さん、まだ?」と何度も台所を覗いた景がされ、胸が痛んだ。

7ちょうどにインターホンが鳴った。健太はらかに疲れており、目のい隈ができていたが、織はいつも通り完璧になりをえていた。彼女は笑顔で「お義母さん、すごいご馳ですね」と言ったものの、私を見る目だけは警戒しているようにじられた。

事が始まると、健太は昔話をしながら無理にるく振るった。織も折笑い、私もそれにわせたが、にはい氷のを歩いているような緊張があった。誰もが何かを隠しながら、普通の族を演じているようだった。

デザートの果物をしたところで、私は箸を置いた。「そういえば、あなたたちに見てもらいたいものがあるの」と言って、リビングの棚からタブレット端末を取りした。健太は「昔の写真?」と笑ったが、織の表はわずかにくなった。

最初に再したのは、事件2の管理を映した記録だった。正式な防犯カメラとは別に、管理会社が器メンテナンス用に残していた内記録で、若林が席をした織が管理端末へUSBメモリを差し込み、設定画面を確認している姿が映っている。

広告

健太は画面を見たまま、「これ、どういうことだ」とい声をした。

「偽物よ」

織はすぐ否定した。「誰かが私を陥れるために編集したんでしょう」と言ったが、私は次の映像へ切り替えた。夜2、私の部鍵で入り、寝の宝箱からダミーのUSBメモリを盗みす姿だった。

健太の顔気に変わった。「その鍵、俺が母さんから預かってたやつだろ」と言うと、織はしばらく黙り込んだ。やがて「全部あなたを守るためだったのよ」と声を荒げたが、その言葉が何をするのか、健太自にも分かっていないようだった。

私は最に、優郎が残した調査報告のコピーをテーブルへ置いた。織の会社の横領、偽装取引、栄キャピタル関係者との接点、健太の署名を利用した資が、ページごとに理されている。健太は震える指で資料をめくり、やがて「父さん、全部ってたのか」と呟いた。

「優郎さんはあなたを守ろうとしてた。さんもそうよ」

私が言うと、健太はを抱えた。対して織は子からがり、「違う、全部あの男たちが勝に調べたのよ」と叫んだ。

「じゃあさんを殺したの?」

私が尋ねると、織は瞬黙った。目だけが健太へき、その表を見た瞬、私は次に何が来るのか分からないのに、恐ろしい予がした。

「私は殺してない」

広告

織は、ゆっくり健太を指さした。

「あの、エレベーターでを突きばしたのは、そこにいるあなたの息子よ」

健太は否定しなかった。顔を覆うことも、鳴ることもせず、ただ血の気を失った顔で私を見た。その目を見た瞬織の言葉が全くの嘘ではないことだけは分かってしまった。

私は震えるで警察へ話した。その夜、織は事聴取のため警察へ連れてかれ、健太も任を求められた。がいなくなった部にはつかずの料理とめた茶碗蒸しだけが残り、つい数まで族だった卓が、突然らない所のように見えた。

私は子へ座った。織を追い詰めれば真実が見えるとっていたのに、その真実の所には、自分が最も疑いたくなかった息子がっていた。

織の弁護士を通じて面会を求められた。会社資の横領や証拠隠滅、法侵入について捜査がんでいる方、さんのについて織は貫して「自分はしていない」と主張していた。私は会うことを何度も迷ったが、健太に関する真実を聞くため、最終に面会を受けることにした。

アクリル板越しに見た織は、数までの華やかな姿とは別のようだった。化粧はなく、髪も乱れ、顔には疲労が刻まれていたが、目だけは以と同じように鋭かった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: