"35万円の空冷蔵庫" 第4話
貯はほとんど残ってないの」
私は驚いた。
「そんな話、聞いたことないぞ」
「あなたには配させたくなかったんでしょう。葬儀代を払ったら、もう本当にほとんどないの」
当の私は父をくしたしみのにいた。
母を疑うという発自体がなかった。
「分かった。活費は俺がすよ」
それから毎5万円、母へ仕送りを始めた。
計に余裕があるわけではなかった。
私の料だけでも活はできたが、宅ローンがあり、老の貯蓄も必だった。それでも弓は反対しなかった。
「お義母さんになったんだから、仕方ないよ」
むしろそう言って、自分のパート代から活費を補ってくれた。
ところが、その3か。
浩司が突然、のミニバンを現で購入した。
「ずいぶん景気いいな」
私が冗談半分に言うと、浩司は笑った。
「仕事がうまくいっててさ」
しかし、その目がわずかに泳いだ。
私は営業職をく続けている。
数字の嘘や、追い詰められたの表を見る会はなくなかった。
何かがおかしい。
そうじたのが始まりだった。
私は母へ仕送りを続けながら、表って問い詰めることはしなかった。
代わりに、静かに調べた。
会社の取引先。
古い。
登記報。
浩司の会社の決算状況。
最初は自分でも、考えすぎだとっていた。
だが調べれば調べるほど、自然な事実がてきた。
広告
浩司の会社は、から見ればさな建設関連会社を経営しているように見えた。
しかし実態は違った。
売は減。
取引先も次々とれていた。
3には事実、事業として成りたなくなっていた。
それなのに浩司はしいに乗り、美穂はブランドバッグを持ち、SNSには級レストランや旅の写真が並んでいた。
そのはどこからているのか。
私は学代からの友で、現は会社の顧問弁護士でもある鈴達也に相談した。
「健。本気で調べるなら、途でを入れるなよ」
「分かってる」
「族だからこそ、数字だけを見るんだ」
達也の紹介で調査会社にも依頼した。
5かけてしずつ集めた資料は、斎の鍵付きの引きしに保管した。
そして私はった。
父がくなった当、佐藤には約3000万円の融資産が残っていた。
母が言った「ほとんど何もない」は嘘だった。
さらに、その資産の半が父ののに母名義の座へ移され、そこから約2000万円が浩司へ渡っていた。
なぜか。
浩司の事業が傾いていたからだ。
母は昔から浩司を溺していた。
私は男で、成績も悪くなく、学でもきな問題を起こしたことがない。
対して浩司は領が悪く、何度も問題を起こした。
そのたびに母は言った。
「浩司は繊細なのよ。健は何でもでできるでしょう」
広告
私にはを求め、浩司にはを差し伸べる。
それが母の子育てだった。
になっても変わらなかった。
浩司の会社が傾けば2000万円を渡す。
その方で私には、
「私は文無しなのよ」
と言い、毎5万円を受け取る。
しかも調査によれば、その5万円は活費としてほとんど使われていなかった。
別座へそのまま貯蓄されていた。
私は何度も母を問い詰めようとった。
しかし、その度に弓が止めた。
「お義母さんにも事があるのかもしれないよ」
そして私も、
まだ決定な証拠がない。
父の遺産問題で親族まで巻き込むのは避けたい。
そんな理由をつけて先延ばしにした。
それが違いだった。
晦の夜。
斎の机に資料を広げながら、私はようやく認めた。
母と浩司は私を恐れていなかった。
どうせ健は最には折れる。
男だから母を見捨てられない。
弓は何をされてもする。
そう確信していた。
だから今回、35万円分もの材を堂々と奪った。
私は弓の準備ノートを机の横に置いた。
数字だけを追っていた5。
だが、今私の目のにあるのは数字ではない。
の女性が20積みねてきただった。
午11を過ぎた頃、浩司からLINEが届いた。
『兄貴、はお玉と援助、俺が昼頃取りにくからよろしく。あと母さんが来から活費8万円に増やしてほしいって。
男なんだから親の面倒見るの当たりだよな』
私はわず笑った。
りではない。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
30万円を止めた日
手術当日、夫から届いたのは見舞いの言葉ではなかった。 「病院へ行ったところで治るわけじゃないだろ」 その直後、私名義の家族カードで高級温泉旅館の二十一万円が決済された。夫は義母との旅行を楽しみ、SNSには《嫁が入院して自由になった》と投稿していた。 六十日間の入院中、夫も義母も一度も見舞いには来なかった。ところが夫は私の会社へ押しかけ、私名義のマンションを勝手に売却査定へ出していた。 さらに調べると、五年間送り続けた義母への月三十万円は、生活費ではなく投資用マンションの購入資金に流れていた。総額は二千百万円。 退院した朝、ようやく夫から電話が来た。 「母さんに毎月渡してた三十万円、なんで止めたんだ?」 私はその一言を聞き、夫婦として残っていた最後の線を静かに切ることにした。嫁姑|夫婦|介護|修羅場1.9万字5 543 -
完結第15話
離婚した元夫は、私の再婚相手を知らない
離婚が成立した直後、警察官の元夫は私を見下して笑った。 「四十の女医なんか、誰も拾わない。せいぜい他の男を探せばいい」 私はその言葉どおり、裁判所の外で待っていた黒塗りの車へ乗り込んだ。後部座席にいたのは、かつて私が十四時間の手術で命を救った男性――そして元夫が勤める県警の頂点に立つ警察本部長だった。 その翌日、元夫の若い恋人から届いた一枚の写真に、不自然な公費精算の印が写り込んでいた。さらに若手刑事が現れ、二千万円を超える捜査費横領と、県警内部の隠蔽を告発する。 ところが、その夜。緊急手術を要する重傷者が病院へ運び込まれた。 血まみれでストレッチャーに横たわっていたのは、つい数時間前まで私を嘲笑していた、元夫の恋人だった。夫婦|真実|裡の顔|修羅場|不倫2.2万字5 275 -
完結第10話
援助し続けた兄が隠していた二年間
事故で右脚が不自由になった兄・健司を助けるため、直人は二年半にわたり生活費や治療費を送り続けてきた。その総額は、二百十八万円。妻の美咲も家計を切り詰め、兄が立ち直る日を信じていた。 ところがある日、美咲から一本の動画が届く。そこには、杖を持たず、小走りで横断歩道を渡り、パチンコ店の階段を上る健司の姿が映っていた。 直人が収入と支出の確認を求めると、健司が送ってきたのは一年前の給与明細。さらに、すぐ削除された通帳写真には《給与268,430円》の文字があった。 足の回復も、転職も、本当の給料も隠していた兄。では、装具代、リハビリ費、通院費として渡した二百十八万円は、いったい何に消えたのか。 幼い頃、自分を守ってくれた兄への恩と、夫婦の生活を壊し始めた嘘。そのすべてを確かめるため、直人は初めて兄に通帳を開かせる。兄弟姉妹|夫婦|金銭問題1.4万字5 154 -
完結第17話
娘の席を愛人に譲った夫の末路
夫・敬吾が愛人を優先し、6歳の娘・陽菜を飛行機の後方席へ一人で追いやろうとした瞬間、さゆりは離婚を決意する。実は彼女こそ、敬吾の出世を陰で支えてきた一流の法務コンサルタントだった。 さゆりは娘とプライベートジェットで北海道へ向かいながら、夫の不正経費と愛人関係を会社へ告発。敬吾は部長職を失い、北陸の倉庫へ左遷され、慰謝料と養育費の支払いも背負う。 その後、さゆりは自分の名で事務所を開き、娘との生活を再建する。一年後、母娘はあえて普通席の35列目に並んで座り、誰にも奪われない二人だけの旅へ出発した。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 1546 -
完結第16話
大晦日、義実家の60億円計画を知った
大晦日の夜、義実家の二階から母とビデオ通話をしていると、突然その表情が凍りついた。 「南、声を出さないで。お父さんが裏口まで迎えに行くから」 直後、私は義父の書斎から漏れる夫の声を聞いた。二人は私の実印を盗み、私が代表を務める資産管理会社の権限を書き換え、約六十億円の預金を破綻寸前のリゾート事業へ流そうとしていた。 私は結婚指輪も荷物も置いたまま裏口から脱出し、その夜のうちに全口座を凍結。二十三億円の普通預金と三十五億円の定期預金を、夫の手が届かない別銀行へ移す手続きを終えた。 これで資産は守れたはずだった。 ところが銀行担当者は、夫が持参すると告げていた書類の中に、父の署名入り《債務保証承諾書》があったと明かす。その印鑑証明書は偽物ではなく、三か月前に正規発行された本物だった。 夫はいつ、父の印鑑証明を手に入れたのか。そして十三年間の結婚生活の裏で、どこまで周到に黒川家を破滅させる準備を進めていたのか。嫁姑|夫婦|真相|修羅場2.4万字5 328 -
完結第11話
100人宴会を潰した義妹に、店主の私が請求書を出した日
土曜日の午後六時半。海鮮料理店「魚心」の大広間には、百人分の御膳が並んでいた。けれど、開宴時刻を三十分過ぎても客は一人も現れない。 幹事を務める義妹へ電話すると、返ってきたのは笑い声だった。 「魚臭いから、焼肉屋に変更したの。身内なんだから許してよ」 しかも義妹は三日前に別会場を予約しながら、前日まで「百人分を用意して」と念を押していた。損害額は五十三万六千円。店主の菜緒が契約書に基づいて請求すると、夫まで「妹から金を取る気か」と彼女を責め始める。 ところが翌日、同窓会の会計担当者が店を訪れ、菜緒の前に二枚の領収書を並べた。参加者から集めた会費と、焼肉店へ実際に支払われた金額が、二十五万円も食い違っていたのだ。 さらに見つかったのは、「魚心」の印が押された五十万円の助成金申請書。 菜緒が一度も見たことのないその書類は、なぜ義妹の個人口座を振込先にしていたのか。そして店の印鑑を持ち出せた人物は、いったい誰だったのか。兄弟姉妹|裡の顔|真相|修羅場1.6万字5 725 -
完結第12話
廃屋を買った兄妹と、床下に眠る父の秘密
両親を亡くした二十歳の空は、八歳の弟・陽斗と全財産で海辺の廃屋を購入する。夜ごと床下から響く三回の音を追うと、監禁された父の同僚・村瀬を発見した。 家に残された鍵と録音には、父が勤め先の不正を調べ、叔父・健二と副社長・水城に命を狙われた証拠が隠されていた。空は弁護士や警察と連携し、両親の事故の真相を暴く。 健二と水城は逮捕され、不当な借金請求も止まった。価値のない廃屋と思われた家は、一人の命と父の記録を守り、姉弟が安心して帰れる本当の我が家となった。兄弟姉妹|相続|金銭問題1.7万字5 339 -
完結第16話
義弟嫁の「セレブ家族」に隠された十二年前の秘密
義弟嫁・真澄は、遥の手料理を「貧乏臭い」と罵り、熱々のおでんを床へ投げ捨てる。普段温厚な夫・幸介は激怒し、真澄の両親を呼び出した。 現れた両親の正体は、遥の叔父の会社から三千二百万円を横領し、海外逃亡していた指名手配犯だった。刑事に逮捕され、真澄の偽りのセレブ生活も暴かれる。 金目当ての結婚だったと知った義弟・高志は離婚を宣告。幸介も損害賠償と刑事告訴を突きつけ、真澄を絶縁する。すべてを失った彼女は、反省せず新たな金持ちを探して夜の街へ消えた。兄弟姉妹|夫婦|絶縁|修羅場2.4万字5 1419