みかん小説
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"35万円の空冷蔵庫" 第12話

それは、弓が20かけてようやくにした絶縁の言葉だった。

母はしばらく呆然としていた。

やがて、突然顔を歪めた。

「この恩らず!」

さっきまで座していたとはえない声だった。

男の嫁のくせに親を見捨てるの!?」

弓は何も言い返さなかった。

私はた。

「もう終わりだ」

母を見ろす。

ていってくれ」

浩司もから顔をげる。

「兄貴、今だけ泊めてくれよ。俺のが来るかもしれないんだ」

「断る」

「殺されるかもしれないんだぞ!」

「なら警察へけ」

「兄貴!」

「自分が作った問題だ」

私は浩司の腕を掴んでたせた。

「自分で責任を取れ」

母も泣きながら玄関へ向かった。

「健、絶対悔するわよ」

私は首を振った。

悔しているよ」

母が振り返る。

「もっとくこうしなかったことをな」

2した。

扉を閉める。

鍵をかける。

から母の叫び声と浩司の泣き声がしばらく聞こえた。

やがての音がざかった。

に静寂が戻った。

弓がきく息を吐いた。

「健さん……」

そのままから力が抜けたように倒れかけたため、私は抱き止めた。

丈夫か」

弓は私の胸に額を当てた。

「私……やっと息ができた気がする」

涙が流れた。

だが昨の涙とは違った。

絶望ではなく、い緊張から解放された涙だった。

叔父が私の肩を叩いた。

「よくやった」

私は首を振った。

「遅すぎました」

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「そうかもしれんな」

叔父は弓を見た。

「でも今終わらせた。それでいい」

計は午7を過ぎていた。

机には何もない。

叔母が笑った。

「ところで、お腹空いたわね」

弓がはっとした。

「すみません! すぐうどんを……」

叔父が笑いした。

「そうだ。今はそのうどんをべに来たんだ」

親戚たちも笑った。

「私も伝うわ」

「20分ならみんなでやった方がい」

ものがキッチンへがった。

弓は慌てた。

「でも、お客様に伝っていただくなんて」

叔母が優しく笑った。

「弓さん。今はもう『男の嫁』じゃないんでしょう?」

弓が目を丸くした。

族なら緒にやればいいのよ」

弓の目にまた涙が浮かんだ。

「はい」

その返事は、これまで私が聞いた番軽やかだった。

キッチンで鍋の蓋をけると、黄汁から柔らかな湯気がった。

昆布と鰹節のりが部いっぱいに広がる。私はてっきり、麺とネギだけを入れるのだとっていた。

ところが弓は戸棚の奥からさな箱を取りした。

「それ何だ?」

「お義父さんのお仏壇にお供えしようとって、別に取っておいたもの」

箱のには量の参、つ葉、柚子、さな切り餅が入っていた。

母たちは蔵庫の派材だけを見て、戸棚の奥にあったさな箱には気づかなかったらしい。

弓は参を梅のの形に切った。

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餅をさく焼く。

つ葉を添え、最に柚子の皮を細く刻んだ。

箱のうどん。

しの野菜。

さな餅。

それだけなのに、20杯の丼が並ぶと、見事な正料理に見えた。

「弓」

私はわず言った。

「すごいな」

「本当?」

「最だよ」

弓はし照れた。

「お義父さんなら、こういうの好きだったかなとって」

父が好きだったのは、豪華なものではない。

静かな事。

温かい汁物。

季節のり。

私は父の顔をした。

「絶対ぶよ」

親戚たちのへ丼を運ぶ。

誰かが言った。

「きれいねえ」

「柚子のいいりだ」

「うどんだけなんて言うから、どんなものかとったよ」

弓は皆のげた。

「豪華なものは何もありませんが、温かいうちに召しがってください」

叔父が箸を取った。

「いただきます」

すすった。

続けて汁をむ。

しばらく何も言わなかった。

「叔父さん?」

私が尋ねると、叔父の目から筋涙が流れた。

「うまい」

声がし震えていた。

「体に染みるな」

叔母もにする。

「本当に美しい」

別の親戚が笑った。

「カニなんていらなかったね」

「松阪牛よりこっちだ」

「弓さん、ごちそうさま」

誰もが笑顔になった。

35万円かけて用した材はつも残っていない。

だが、その卓は私がこれまで見たどの正より温かかった。

叔父が湯呑みを持ちげた。

「健、弓ちゃん」

私たちが顔をげる。

「今から、このは本当ので2だ」

叔父は微笑んだ。

「正雄兄さんもしているだろう」

親戚たちも湯呑みを持った。

「2しいに」

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