"35万円の空冷蔵庫" 第13話
「乾杯」
声がなった。
弓は顔を赤くしながら、何度もをげた。
私はので父へ言った。
父さん。
遅くなった。
俺はずっと、男として母を守らなければならないとっていた。
でも違った。
俺が守るべきだったのは、毎隣にいてくれただった。
あれから半が過ぎた。
母と浩司を取り巻く状況は、きく変わった。
達也を通して、父の財産について正式な返還続きがめられた。母が隠していた約1000万円の座も調査対象となり、実についても父の遺言や相続関係を理したで売却がんだ。
母は最まで、
「族ののことなのに」
と訴えた。
だが私はもう聞かなかった。
親戚にも助けを求めたそうだ。
しかし、元の夜に全てを見ていたたちは誰も母の方にはならなかった。
母はやがて実をた。
今はさな賃貸宅で暮らしをしていると聞く。
以のように親族のにつこともなければ、「本の姑」と呼ばれることもない。
私は連絡を取っていない。
弓にも連絡させていない。
浩司の活も崩れた。
美穂は子供たちを連れて実へ戻り、婚の話をめた。
浩司は事業を畳み、借理について弁護士へ相談することになった。私の名を勝に使用した件も含め、本が自分の責任で処理している。
以のようなもない。
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ブランド物を見せびらかす活もない。
母と浩司は、互いに連絡を取らなくなったらしい。
「あんたのせいで老がめちゃくちゃになった」
「母さんがもっとをしてくれてたらこうならなかった」
最まで、互いに責任を押しつけっていたと聞いた。
あるの。
私と弓は父の墓参りへった。
墓の周りを掃除し、を供える。
弓はをわせた。
「お義父さん。こんにちは」
のが髪を揺らした。
弓のを見る。
以は仕事で赤切れだらけだった指が、しずつ元の柔らかさを取り戻していた。
母のへ呼びつけられることはもうない。
正も盆も、誰かの顔を見ながら台所へつ必はない。
「父さん」
私もをわせた。
「ずいぶん遅くなったけど、約束は守るよ」
父の帳にかれていた言葉。
『健は弓さんを守ること』
あれを読むまで、私は自分が守っているつもりで、何つ守れていなかった。
墓参りを終えて坂をりる途、私は弓のを握った。
弓がし驚いたように私を見る。
「弓」
「はい?」
「20、本当に悪かった」
弓は首を横に振った。
「健さん」
「俺がもっとく母さんを止めていれば、おはあんなに苦しまなくて済んだ」
「もういいの」
「よくない」
私はち止まった。
「自分がすれば族が丸く収まるって、おにばかりさせてた」
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弓はしばらく私を見つめた。
そして微笑んだ。
「じゃあ、これから取り返しましょう」
「何を?」
「20分」
その言葉に私は笑った。
「ずいぶんいな」
「いですよ」
「何から取り返す?」
弓はし考えた。
「旅」
「旅?」
「私たち、婚旅以来ちゃんと2で旅してないでしょう?」
確かにそうだった。
盆は実。
正も実。
ゴールデンウィークも親戚の用事。
母の顔を見ているうちに、夫婦2だけのをほとんど持たずに20が過ぎていた。
私はいついた。
「にくか」
「?」
「ああ」
弓が目を丸くする。
「なんで急に?」
「カニ」
私は笑った。
「あの、おが35万円かけて買ったタラバガニ、俺たちもべてないだろ」
弓も笑った。
「そういえばそうね」
「今度はで番うまいのを、2で腹いっぱいべよう」
「いですよ?」
「35万円は使わない」
弓が声をげて笑った。
私はその笑い声を聞きながら、胸の奥が軽くなるのをじた。
「誰にも邪魔されない旅だ」
「はい」
弓の目がし潤んだ。
「私、きたいです」
「決まりだな」
「カニだけじゃなくて、鮮丼もべたい」
「いいよ」
「温泉も」
「こう」
「の窓側座っていい?」
「どうぞ」
弓が私の腕へ体を寄せた。
「楽しみ」
その言を聞いた、私は初めて気づいた。
これまで弓はいつも、
「みんながんでくれれば」
と言っていた。
母がぶ。
親戚がぶ。
浩司がぶ。
夫である私が困らない。
いつものことばかりだった。
そんな妻が、
「私はきたい」
と言った。
それが何より嬉しかった。
族とは、血がつながっているだけで成するものではない。
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