みかん小説
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"終電の風呂敷" 第7話

1145分。

くに。

の灯りが見え始めた。

その

駅のから。

るような音が聞こえた。

トキだった。

いつもの着物ではなく。

古い套を羽織り。

息を切らしている。

呂敷を胸に抱え。

額には汗が滲んでいた。

いましたか」

います。でも、どうしたんですか」

「炊飯釜のがうまくつかなくてね」

それだけ言うと。

トキは切符を買った。

わず。

呂敷へ目を向けた。

いつも通り。

数個分の膨らみがある。

「そんなくらい、休んでもよかったんじゃないですか」

が言うと。

トキはし驚いた顔をした。

そして。

静かに答えた。

「待っている子がいるに休むと、待っている子は自分が忘れられたとうでしょう」

ベルが鳴った。

は。

それ以

何も言えなかった。

づいた頃、原町駅にトキ宛ての封筒が届いた。駅の所しからない誰かが、「毎晩く佐々トキ様」といて送ってきたもので、郵便配達員も困った末に駅へ持ってきたらしい。差所は潟県になっていた。

その夜、が封筒を渡すと、トキの顔が変わった。裏面にかれた名を何度も見直し、それから子に座った。娘からのだという。

州にいるんじゃなかったんですか」

「お正に、向こうの族で潟へ帰ったんでしょうね」

トキはそう言いながら封を切った。

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便箋には、娘がに子供を産む予定であること、自分も母親になるのだということがかれていた。

まで読んだところで。

トキの指が止まった。

娘は。

京で病気になった

自分を病してくれた女性について。

もうつ。

したことをいていた。

がった夜。

その女性は。

さな握り飯を作ってくれた。

梅干しが入っていた。

娘は欲がなく。

半分しかべられなかった。

すると女性は。

残りをの皮に包み。

枕元へ置いたという。

「夜にお腹がすいたらべなさい」

その言葉を。

娘は。

母親になることが決まって。

突然した。

の最には。

こうかれていた。

「お母さん、あのに、私はちゃんとありがとうと言ったのかな」

トキはしばらく。

便箋を見つめていた。

には。

その文字は見えなかった。

ただ。

トキの頬を。

涙が筋流れた。

「覚えていたんですね」

トキが呟いた。

4

も分からず。

見つけられず。

自分だけが恩を忘れられずにいるのだとっていた。

しかし。

娘のにも。

あの夜の握り飯が残っていた。

から受け取った優しさは。

その瞬に返されなくても。

消えるわけではない。

が経ち。

別の所で。

別のへ。

渡っていく。

トキが女子寮へ握り飯を運んでいることを。

娘はらない。

トキ自も。

わざわざらせるつもりはなかった。

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「娘さんに教えないんですか」

が尋ねると。

トキはを丁寧に畳んだ。

「何をです?」

「毎晩、あの子たちに握り飯を届けていることです」

トキはし笑った。

「そんなの、言うほどのことじゃありません」

「でも、娘さんが助けてもらったから始めたんでしょう」

「そうだけど」

トキは封筒を呂敷の隙へ入れた。

「恩返しって、したことを相らせたら、し違う気がするんですよ」

には。

その覚が。

まだ完全には分からなかった。

20歳の彼にとって。

良いことをしたなら。

誰かがっていてもいいとえた。

会社から褒められたり。

聞に載ったり。

が残ったり。

それは。

悪いことではない。

しかしトキは。

を残したいわけではない。

娘を助けた女性も。

を残さなかった。

だから。

自分も。

同じようにする。

それだけだった。

が到着した。

トキはを入れた呂敷を抱え。

いつもの両へ乗った。

はホームから見送った。

その夜。

呂敷のには。

握り飯と緒に。

潟から届いた通のが入っていた。

37の3の女子寮では何かの女が寮をることになった。を辞めて故郷へ戻る者、別の職へ移る者、結婚が決まった者もいた。には、1だけ働くつもりが計の事でそのまま京に残る女もいた。

幸子も寮をだった。

青森の実から。

父親が倒れたというが来た。

母親だけでは田畑と弟たちの面倒を見切れない。

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