"膨腹の老人ホーム" 第2話
普段の梅さんからは像できない力で、その指先は細かく震えていた。
「美咲さん……」
「どうしました?」
梅さんはすぐには答えなかった。廊の方を何度も気にしたあと、私の顔をくへ呼ぶようにして、かすかな声で言った。
「誰にも、言わないでね」
その目には、体の苦痛とは別の恐怖が浮かんでいた。
「夜になるとね、神崎さんが来るのよ。おを持って」
私は何も言わず続きを待った。梅さんの喉がさくき、震える息が漏れた。
「それで、さな包みをみなさいって言うの。嫌だって言ったら……孫のも名もってるからって」
瞬、言葉のが理解できなかった。
「包みって、薬ですか?」
梅さんは首を横に振った。
「薬じゃないとう。透なもので何にも包んであって、いの。最初はつだったのに、その次はつになって……み込めないって言っても、を何度もまされて」
私は反射に彼女の腹部を見た。
数から触れていた、あの規則なさ。
そして同じ症状を訴え始めた。
胸の奥に、たいものがゆっくりと広がっていった。
梅さんは涙を浮かべながら、さらにさな声で続けた。
「静さんも、子さんも同じなの。夜になると神崎さんが部へってる。でも誰かに言ったら、族が困るって……だからみんな黙ってるのよ」
その瞬、私はこの数の記録をのでたどった。
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だけに起きた異変。
夜の担当。
族面会の厳しい制限。
そして、病院へかせようとしない神崎。
偶然だとっていたものが、つの線になってつながり始めていた。
梅さんを落ち着かせたあと、私はすぐに静さんと子さんの様子も確認した。ただし正面から神崎の名をせば、がさらに怯える能性があるため、「夜のお薬で困っていることはありませんか」と回しに尋ねるしかなかった。するととも最初は曖昧に笑ったものの、私が「梅さんもし配しています」と伝えると、らかに表が変わった。
静さんは認能のが比較軽く、付やの名もしっかり覚えていた。彼女はしばらく毛布を握りしめたあと、「私が余計なことを言ったってられたら、娘に何かされるんじゃない?」と尋ねた。私が「ここで話した内容を勝に神崎主任へ伝えることはしません」と約束すると、ようやくをいた。
「夜にね、主任さんが来て、『栄養剤だからみなさい』って言うの。でも薬の袋じゃないのよ。さくていものを、つるつるした透なもので包んであるの」
静さんは度ほど吐きしたことがあるという。そのたび神崎は態度を変え、「次に吐いたら娘さんへ話して、施設で暴れているって伝える」と脅したらしい。
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娘との関係を何より切にしている静さんにとって、その言葉だけで分な威圧になっていた。
子さんの証言もほぼ同じだった。ただし彼女は嚥能がししており、度喉につかえて激しく咳き込んだことがあったという。普通ならその点で護師への報告が必なのに、介護記録には「夜異常なし」としか残されていなかった。
私はナースステーションへ戻り、過1か分の夜勤記録をいた。
予していた以に骨だった。
の夜巡回は、ほとんど神崎がでっていた。の職員が代わりに入ろうとしたには、「私が健康状態を個別管理しているから触らないで」と申し送り欄にかれており、それが主任命令として通っていた。の体調変化が始まった期と、神崎が夜巡回を独占するようになった期もほぼなっている。
私はさらに族面会の記録を確認した。
半、黒田が施設に就任した直から「染症対策」という名目で面会回数が幅に減らされていた。族が居へ入ることは禁止され、面会は階の専用スペースで回、のみ。梅さんたちの腹部がどれほど変化していても、の膝掛けをかけて座らせてしまえば族には見えにくい環境だった。
その夜、私はの居をもう度調べた。
もちろん私物を勝に捜索することはできない。
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