"23回拒まれた元部長" 第3話
会社員代、部が自分の指示を理解して頷いたと同じ、相が自分の言葉によってくだった。女性にとっては単なる礼だったが、承認に飢えていた加藤は、その言を自分が「まだ必とされている証拠」として受け取った。
それ以、加藤は講座で積極にの画面を覗くようになった。困っていそうながいればすぐに子を寄せ、説を始める。実際に助かるもいたため、加藤のでは「自分には教える才能がある」という確信が急速に育っていった。
やがて、公民館だけでは物りなくなった。退職でしいゴルフクラブ式を購入し、以から趣程度に続けていたゴルフを本格に再すると、練習で周囲の打席が気になるようになった。自分の球筋より、隣で失敗しているを見つける方が楽しくなっていた。
「あのは軸が悪い」「あの握り方ではばない」「あれなら腰を痛める」。加藤ののでは、誰にも求められていない指導案が次々に組みてられていった。プロから本格なレッスンを受けた経験はほとんどなく、自の平均スコアも決して優秀ではなかったが、インターネットで集めた識と管理職代の成功体験が混ざりい、自分だけにはの問題点が見えるのだと本気でい始めていた。
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表に「初者指導のポイント」といたノートまで作り、グリップ、姿勢、体移、メンタル管理などの項目をき込んだ。誰かが迷惑そうな顔をすれば「緊張している」、断れば「慮している」、く拒めば「プライドがい」と解釈した。そうすることで、加藤のでは度も自分が拒絶されたことにはならなかった。
必とされなくなった寂しさを認める代わりに、加藤は「必としているのに気づいていない」を探し始めたのである。
佐藤が加藤を避けようとしていた頃、民パソコンサークルでも似たような問題が起きていた。毎週曜の午、公民館の会議には10から15ほどが集まり、写真の理や賀状作り、町内会の資料作成など、それぞれ好きな作業を自分のペースでめていた。講師がいる教ではなく、分からないだけ互いに相談する気楽さが気の集まりだった。
その、53歳の由美は、域の祭りに使うポスターを作っていた。自営業の夫を伝う傍らパソコンを覚え始めたばかりで、文字と写真の配置をしずつ変えながら、納得できる形を探す作業そのものを楽しんでいた。ところが背から「ああ、それじゃダメですよ」という声がってきた瞬、の肩がわずかに固くなった。
加藤だった。彼はの返事を待たずに机へを伸ばし、マウスを握ると画面の写真を移させた。
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が「あの、ちょっと」と言うにも、文字サイズを変え、余を詰め、自分の考える「正しい配置」に直していく。
「元管理職の僕から言わせてもらえば、資料は目で伝わらないとがありません。こういうのは余が事で、素ほど全部入れたがるんですよ。見本を作りますから、し見ていてください」
はく息を吸い、マウスを握る加藤の元を見た。せっかく30分かけて試していた配置が、ものの数秒で別の形になっていく。に仕げてもらうためにサークルへ来たわけではなく、自分で考え、自分で失敗しながら覚えたいから来ているのに、その最も事な部分が奪われていた。
「加藤さん、丈夫です。がかかっても、自分で試しながら作りたいので」
は丁寧に言った。声を荒らげれば周囲まで気まずくなるため、できるだけ普通の調子を保ったつもりだった。ところが加藤は「そういう考え方だからがかかるんですよ」と笑い、さらに画面を操作した。
「試錯誤なんて、基本が分かっているがやるものです。最初に正解を教わってから自分で夫すればいいんです。僕なら5分で終わりますから、見ていてください」
は子からちがると、加藤のからマウスを取り戻した。今度は目をそらさず、「をさないでください。
自分でやります」と確に言った。くにいた参加者たちが会話を止め、誰もがの様子を気にしているのが分かった。
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