"消えた託児代7万円" 第1話
午5半、まだ空が夜のを残しているに玄関のチャイムが鳴った。私は布団ので目をけ、枕元の計を確認してから、胸の奥に嫌な予が広がるのをじた。こんなに義実を訪ねてくるなど、ここ数かの経験からしかい当たらなかった。
廊へると、同居している義母の部はまだ暗く、夫の達夫も眠ったままだった。私はカーディガンを羽織って玄関へ向かい、できるだけ音をてないように鍵をけた。扉の向こうにっていたのは、予通り達夫の妹・奈だった。
奈は1歳になったばかりの娘、クレアを両腕で抱えていた。普段なら私を見るだけでを伸ばしてくるクレアが、その朝は母親の胸に頬をつけ、目を閉じたままぐったりしている。さな額にはうっすら汗がにじみ、呼吸もいつもよりし速いように見えた。
「ゆいさん、お願い。今だけクレアを見てもらえない?」
奈は申し訳なさそうに眉をげていたが、その表を見た瞬、私は胸の内側にたいものをじた。お願いをしているの顔ではなく、すでに預かってもらえることを提にして、そのための形式な言をにしているだけに見えたからだ。
私はクレアの頬へを当て、「は何度あるんですか」と尋ねた。奈はし目を逸らしてから、「夜からがってて、さっき測ったら39度くらい。
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でも分は取れてるし、たぶん邪だとう」と答えた。39度のがある1歳児を、病院へ連れてくに私のところへ運んできたという事実だけで、ここ数かのすべてが気にいされた。
「今、どうしてもせない予定があるの。お母さんに聞いたら、ゆいさん今は朝ゆっくりだって言ってたから」
私は奈のろへ線を移した。ちょうどその、物音を聞きつけた義母の子が寝着姿で廊へてきて、「あら、クレアちゃんかわいそう。ゆいちゃん、今は見てあげられない?」と何のためらいもなく言った。
その言葉で、私の勤務予定が勝に奈へ伝えられていたことも分かった。私は遅番だから朝の勤がし遅いだけで、休ではない。それなのにのでは、朝にがあることと、仕事を休んで病児の世話をすることが同じになっていた。
「お断りします。いい加減にしてください」
自分でも驚くほど、声は静かだった。奈の顔が固まり、子も「えっ」とさく声を漏らした。私は鳴ったわけでも、玄関の扉を乱暴に閉めたわけでもないのに、それまで度も本気で拒絶したことがなかった私のからその言葉がたこと自体が、には信じられないようだった。
「ゆいさん、今だけだよ? 本当にどうしても無理なの」
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奈はすぐにいがったが、私は首を横に振った。「今だけという言葉を、もう何回聞いたか覚えていません。それにクレアちゃんは39度あるんですよ。最初にするべきことは、私へ預けに来ることではないといます」と答えると、奈の眉にさなしわが寄った。
そこへ寝起きの達夫まで現れた。事を聞いた彼は、まだ眠そうな顔のまま「ああ、今だけなら見てやればいいじゃん」と軽く言い、私が返事をしないでいると、「ゆい、保育士なんだから慣れてるだろ。そんなケチくさいこと言うなよ」と笑った。
その瞬、腹がつより先に、妙に気持ちが静かになった。達夫の何気ない言のに、この数か、私がどう扱われてきたのかが全部詰まっているようにじたからだ。保育士だから子どもを見るのは苦ではない、族だから無料でやって当然、私の仕事や眠や予定は、奈の都より回しで構わない。
私は達夫をまっすぐ見た。「だったら達夫が仕事を休んで見ればいいでしょう」と言うと、彼はすぐに「俺は急に休めないよ」と返した。私はその返事を聞きながら、自分も同じように仕事を持つだということが、彼のでは本当に見えていなかったのだと理解した。
けれど、この朝だけが原因ではなかった。ここへ至るまでに、私のではさなが何回、何百回と積みなっていた。
最初はむしろ、私は奈を格好いい女性だとっていたし、義母との同居だってうまくやれると信じていた。
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