"消えた託児代7万円" 第9話
達夫も以のようには協力せず、「自分の子なんだから自分で見ろ」と言うようになった。
私はその話を聞いて、しだけ複雑な気持ちになった。
達夫が気づいた。
遅すぎた。
それでも。
気づかないよりは。
ましだったのかもしれない。
奈と拓也の夫婦関係は、そこから急速に婚へ向かった。拓也は自分にも育児を奈へ任せすぎていた責任があると認めたで、今は勤務形態を調し、父方の両親にも正式に協力を頼んだ。
「クレアを誰かに丸投げする形にはしたくない」
彼はそう言った。
その言葉を聞いた、私は初めてした。
なくとも。
クレアには。
自分の活を。
本気で考えようとしている。
がいた。
私と達夫の婚協議が本格にみ始めた頃、彼から度だけ直接会って話したいと連絡が来た。必な類の確認もあったため、私は休の昼に駅くのファミリーレストランで会うことにした。目のある所を選んだのは喧嘩を避けるためでもあったし、もう以のように夫婦だけの空でい話をする必もないとっていたからだ。
達夫は席につくと、しばらく注文したコーヒーを見つめていた。以よりし痩せ、目のの隈もまだ残っている。私は急かさず、彼が自分の言葉で何を話すのか待った。
「ゆい、本当に悪かった」
広告
最初にた言葉は、これまで私が何度もので待っていたものだった。
「何が悪かったとってる?」
私は責めるためではなく、確認するために尋ねた。
達夫はし考えた、「クレアの世話を、ゆいがやるのが当たりだとってたこと」と答えた。私が仕事で疲れていることも、夜泣きで眠れないまま勤していることも、自分は見ようとしなかったと認めた。
「俺も実際に何週かやって、初めて分かった。仕事から帰って飯わせて、呂入れて、寝かせて、夜に起きて、それで翌朝普通に働くのって、きついんだな」
私はその言葉を聞きながら、以の自分なら泣いていたかもしれないとった。理解してほしかったことを、ようやく夫がにしている。それなのに今の私は、議なくらい静かだった。
「子育ての練習になるって言ったのも、本当にひどかった」
達夫は続けた。
「自分がやらないことだから簡単に言えたんだとう。ゆいは保育士だから、でも子どもの面倒を見るのが苦じゃないって勝に決めてた」
私はゆっくり頷いた。
「私が番つらかったのは、クレアちゃんのことが嫌だったからじゃないよ。あの子は悪くないし、懐いてくれたのは嬉しかった。でも私が疲れたって言っても、誰もそれを問題だとってくれなかったことがつらかった」
広告
達夫は黙って聞いていた。
「奈さんが困っているから私がやる。お義母さんがだから私がやる。達夫は仕事があるから私がやる。それが全部なって、私だけが何かを諦めれば丸く収まる形になってた」
「……うん」
「それなのに断ったら、ケチくさいって言われた」
達夫はくをげた。
「本当にごめん」
私は初めて、その謝罪をそのまま受け取った。
許すことと、やり直すことは同じではない。
「分かってくれたなら、それでいい。でも婚はするよ」
達夫はゆっくり顔をげた。そこには驚きより、予していた答えを聞いたの寂しさがあった。
「もう無理か」
「うん」
私は即答した。
「達夫が悪いだから婚するわけじゃないよ。でも、私がをるまで何も変わらなかった。それに今、謝ってくれても、私はあのに戻ってまた族をやりたいとはえない」
達夫はしばらくテーブルの目を見つめていた。
「俺、族って言葉を便利に使ってたんだな」
私はその言葉に目をげた。
「母さんがだから同居してくれ。奈は妹だから助けて。クレアは姪だから見て。全部、族だからってゆいに頼んで、それで俺は何もしてなかった」
以の達夫なら、こんなふうに自分の問題を言葉にすることはなかっただろう。
し遅かった。
でも。
だからこそ。
私はもう。
憎み続けなくてもいいと。
えた。
婚条件については双方の代理を通してめることになった。共財産や引っ越し費用などを理し、私が同居に受けた負担についても定の補償を含めて話しう形になった。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
風呂を禁じた義母と、家を出た嫁の反撃
由香は出版社で働きながら、無職になった夫・正斗を支え、家計も家庭も一人で背負っていた。 しかし、義母・松恵が突然同居を始めると状況は一変する。家事や生活費を押し付けられ、深夜帰宅した由香に対して「文句があるなら稼いでから言え」と言い放つ義母。 限界を迎えた由香は、静かに決断する。 「では今後は、すべて夫に払わせますね」 その一言を境に、崩れかけていた家族の関係が動き始める。 さらに、義母が持ち込んだ大量の段ボールの中から発見された怪しい情報商材。そして隠されていた家族の秘密。 由香が離れたことで、夫は初めて自分が逃げ続けていた現実と向き合うことになる。 奪われた時間、壊された信頼、そして明らかになる義母の本当の目的――。 一人で耐え続けた妻が、自分の人生を取り戻すために選んだ静かな反撃が始まる。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場2.2万字5 349 -
完結第17話
夫と実母に裏切られたので、静かに二人との縁を切りました
夫の不倫を知った香織に、実母・静が突きつけたのは慰めではなく、「あなたが離婚すれば丸く収まる」という残酷な言葉だった。母は、自分が暮らすマンションの家賃を今後も払うという夫の約束と引き換えに、娘を切り捨てたのだ。 十七年間信じた夫と、長年支えてきた母。二人の密約を知った香織は、その場で離婚届に判を押し、母とも絶縁する。そして自分名義だった母の部屋を解約し、家族を支えてきた金と信用を静かに引き揚げていく。 ところが七日後、元夫の代理人弁護士から一本の電話が入る。夫は香織の同意を偽り、離婚後も彼女に契約責任を背負わせようとしていたばかりか、亡き父から相続した預金にまで手を伸ばしていたという。 消えた三百万円、不倫相手と設立された会社、そして母がどうしても香織名義の部屋を手放せなかった理由。裏切った二人が守ろうとしていた秘密を調べるうち、香織は、夫と母さえ互いの本当の目的を知らないまま手を組んでいたことに気づく。 娘を犠牲にすれば、すべて丸く収まるはずだった――。しかし香織が契約と通帳を一つずつ整理し始めた瞬間、その歪んだ同盟は内側から崩れ始める。嫁姑|夫婦2.6万字5 1004 -
完結第12話
兄の結婚式に、実の妹の席だけありませんでした
理沙は、兄・幸介の結婚式に呼ばれなかった。 母から告げられた理由は「本当に親しい人だけの小さな式」。しかし式当日、偶然届いた親戚からの連絡で、実際には七十人規模の披露宴が開かれ、自分だけが意図的に外されていたことを知る。 家族のために青春を捧げ、兄を支えてきた過去。だが、母と兄は理沙の離婚歴や仕事を理由に「相手の家に見せられない存在」として扱っていた。 傷つきながらも北海道で一人過ごした理沙は、帰宅後、兄から真実を聞かされる。しかし兄の説明は、母の言葉を繰り返すだけの言い訳だった。 なぜ自分だけが家族から消されたのか。 そんな中、兄の妻となったゆかから突然連絡が届く。 「どうしても直接お話ししたいことがあります」 そこで明かされるのは、母と兄が隠していた、結婚式欠席の裏にあるもう一つの真実だった。兄弟姉妹|親子関係|修羅場1.8万字5 650 -
完結第16話
貧乏嫁と見下されていた私、義姉の結婚式で本当の名前を呼ばれました
義姉の結婚式に出席した千鶴は、義母と義妹から「貧乏な内職嫁は一族の恥」と親族写真から外され、式場を追い出されそうになる。六年間、服の縫製で小遣いを稼ぐだけの女だと見下されてきた千鶴は、反論せず静かに控室を去ろうとした。 だが、純白のドレスをまとった花嫁が彼女を呼び止め、その正体を明かした瞬間、義家族の顔色が一変する。千鶴は世界的ブランドの創業者であり、経営難に陥った義父の縫製工場が命運を託す、一億円超の契約を審査する人物だった。初めて彼女の名前を呼んだ義父に、千鶴が下した判断とは――。兄弟姉妹|嫁姑|修羅場2.4万字5 394 -
完結第13話
妹に夫を譲れと言われた結婚式の翌朝
同窓会で再会した幼馴染の秋と結婚したありさ。だが、昔から姉を敵視する妹・百合は「秋は本当は私と両思いだった」と言い張り、父まで巻き込んで二人の結婚を妨害し始める。 そして結婚式の翌朝、百合は突然「秋の子を妊娠した」と告白。父はありさに離婚して夫を妹へ譲れと迫る。ところが妊娠時期を聞いた瞬間、ありさと秋は揃って大爆笑した。その二か月前、秋には百合の主張を根底から覆す、決定的な医療記録が残っていたのだ――。兄弟姉妹|夫婦|真相2.0万字5 1240 -
完結第11話
両親を亡くした私が旅行から帰ると、実家が消えていた
両親を相次いで亡くした美穂に、夫・雅也が突然、一週間の温泉旅行を贈った。初めて見せた思いやりを信じて家を空けた美穂だったが、帰宅すると、思い出の詰まった実家は跡形もなく解体されていた。 雅也は土地を売り、その金で義実家を二世帯住宅にするつもりだった。しかし美穂が遺産を相続したというのは、三人の勝手な思い込みだった。名義変更前の家を無断で壊し、所有者の承諾書まで偽造した疑いが浮上する中、美穂は両親の思い出を奪った夫と義両親への反撃を始める。因果応報|嫁姑|夫婦|金銭問題1.7万字5 771 -
完結第12話
浄水器の異物から、夫の秘密が暴かれた
八か月前から原因不明の頭痛と吐き気に悩まされている美央。病院を巡っても異常は見つからず、夫・公平と義母・悦子は、仕事を辞めて療養するよう優しく勧めていた。父から相続した自宅と賃貸ビルの管理も夫に任せればいい――二人の気遣いを信じ、美央は自分の心が弱いせいだと思い始めていた。 ところがある日、交換したばかりの浄水器が異常を知らせる。点検に訪れた作業員が内部を開けると、正規のカートリッジは別物とすり替えられ、飲料用ではない物質が詰め込まれていた。さらに玄関の開錠記録と防犯映像から、美央の出張中に工具袋を持った義母が二時間近く家へ入っていたことが判明する。 安全な場所へ避難した途端、八か月続いた症状は急速に消えていった。分析で検出されたのは、長期間摂取すれば臓器に障害を残す危険のある特殊な工業薬品。その入手記録には、妻を心配し続けていたはずの公平の署名が残されていた。 多額の借金を抱えた公平は、美央の判断力を奪い、父の遺したビルを処分するための委任状まで準備していた。しかし押収された端末を調べると、計画は財産だけでは終わっていなかった。生命保険の受取人変更まで相談していた相手は、美央が体調不良について最も信頼し、何度も助けを求めていた人物だった。夫婦|真実|真相|修羅場1.8万字5 356 -
完結第10話
「飯抜き」と言われたので、夫との生活を全部やめました
「俺の命令に従わないなら、今日からお前は飯抜きだ!」 会社を勝手に辞め、半年間も妻の収入で暮らしていた夫・裕介は、義両親の前でそう宣言した。 しかも彼が求めたのは、妻・綾野が仕事を辞め、元気な義父の“介護”を始めること。 食卓に並ぶ料理も、家賃も、夫の税金さえ払っているのは綾野だった。 それでも義両親は「夫に従えない嫁に飯を食う資格はない」と言い放つ。 その夜、綾野は一人で家を出た。 そして生活費の送金を止め、夫の家族カードを凍結し、すべての支払いから自分の名義を外していった。 一か月後、電気も水道も止まった部屋から、裕介の怒鳴り声が届く。 『無職の俺を見捨てる気か! 今すぐ金を振り込め!』 だが綾野は、すでに一冊の調査報告書を手にしていた。 夫が彼女を退職させ、義実家へ閉じ込めようとしたのは、親の介護のためではなかった。 報告書の最初のページに記されていたのは、裕介がどうしても妻に知られたくなかった、ある「金」と「女」の存在だった――。人生逆転|嫁姑|夫婦|介護1.5万字5 681 -
完結第16話
大晦日、義実家の60億円計画を知った
大晦日の夜、義実家の二階から母とビデオ通話をしていると、突然その表情が凍りついた。 「南、声を出さないで。お父さんが裏口まで迎えに行くから」 直後、私は義父の書斎から漏れる夫の声を聞いた。二人は私の実印を盗み、私が代表を務める資産管理会社の権限を書き換え、約六十億円の預金を破綻寸前のリゾート事業へ流そうとしていた。 私は結婚指輪も荷物も置いたまま裏口から脱出し、その夜のうちに全口座を凍結。二十三億円の普通預金と三十五億円の定期預金を、夫の手が届かない別銀行へ移す手続きを終えた。 これで資産は守れたはずだった。 ところが銀行担当者は、夫が持参すると告げていた書類の中に、父の署名入り《債務保証承諾書》があったと明かす。その印鑑証明書は偽物ではなく、三か月前に正規発行された本物だった。 夫はいつ、父の印鑑証明を手に入れたのか。そして十三年間の結婚生活の裏で、どこまで周到に黒川家を破滅させる準備を進めていたのか。嫁姑|夫婦|真相|修羅場2.4万字5 562