"墓前の偽息子" 第5話
誰かがいた。
あるいは、まだのにいる。
文子は気づかないふりをして居へみ、子が勧めもしない座布団へ自分から腰をろした。
「さっきの話のことなんだけど」
子のきが止まった。
「話?」
「ええ。誠の番号から話があったのよ」
「誠から?」
「違うわ。誠の名を名乗ったらない男のから」
子の表が瞬だけくなった。しかしすぐに首を傾げ、いかにも議そうな顔を作った。
「何ですか、それ。詐欺じゃないですか?」
「そうかもしれないわね」
「だったら警察に相談した方がいいですよ。最、いらしいですから」
文子は子から目をさなかった。
「その話の途で、あなたもたでしょう?」
子の目が僅かに揺れた。
「私が?」
「ええ。庫の番号をく教えてほしいって言ったわ」
「らないですよ、そんな話」
子は呆れたように笑った。
「お義母さん、誰か別のと勘違いしてるんじゃないですか? 声なんて話だと似て聞こえることありますし」
「あなたの声を、私は何聞いているとうの?」
「だからって決めつけないでくださいよ」
子の調がしくなった。
「だいたい私、誠の携帯なんて触ってません。あの、今仕事でしょう? のにいるって言ってたじゃないですか」
文子は内で確信をめた。
子は、自分の夫が本当にへっていると信じている。
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そのため「誠が今どこにいるか」をわざわざにしたのだろう。それを聞いた隣の誠が、どんな気持ちになっているのかと考えると胸が痛んだ。
「でもね、子さん」
文子は声を荒らげず続けた。
「話をかけてきた男のは、うちの仏に庫があることをっていた。それだけじゃなく、番号を変えたことまでっていたのよ」
「そんなの、誠が誰かに話したんじゃないですか?」
「誠が?」
「仕事仲とか。男のって、余計なこと喋るでしょう」
子は苦し紛れに笑った。
その、廊の奥からさな物音がした。
子の顔が変わった。
文子は何も聞こえなかったふりをした。
のには、もういる。
「誰かいるの?」
文子が何気なく尋ねると、子はすぐに首を振った。
「いませんよ」
「でも今、物音がしたような」
「じゃないですか? 窓をしけてるから」
子はちがり、文子の線を遮るように廊側へ移した。その仕がかえって、奥に誰かを隠していることを示していた。
文子はそこで追及せず、テーブルのの湯呑みに目を落とした。
「子さん。番号をりたかったのは、あなたなの?」
「だからりませんって」
「じゃあ、どうして話にたの?」
「てません」
「私が聞き違えた?」
「そうです」
「誠も?」
子の顔が止まった。
ほんの瞬だった。
「……何?」
文子はそれ以言わなかった。
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子は眉を寄せた。
「今、誠って……」
そのだった。
隣の襖が静かにいた。
「俺も全部聞いたよ、子」
い声が居へ落ちた。
子はゆっくり振り返った。
誠がっていた。
数秒、子は声もせなかった。のトンネル事へ入り、何か連絡が取れないはずの夫が、何も言わず自宅のから現れたのである。その現実を理解した瞬、子の顔から血の気が引いていった。
「あなた……どうして……」
「墓参りにってた」
「仕事は?」
「嘘をついた。親父の命に母さんと墓へきたかったから」
誠は妻から目を逸らさなかった。
「俺が嘘をついたことは謝る。でも、そのおかげで聞いたよ。俺の携帯から母さんに話をかけて、俺のふりをした男の声も、そのにてきたおの声も全部」
子のが震えた。
「違うの。私は……」
「何が違う?」
「私も騙されたのよ」
「誰に?」
「らない。急に連絡が来て、誠が困ってるって言われて……」
「俺の携帯はこのに置いてあった」
誠の言で、子は黙った。
「らないがどうやって俺の携帯を使うんだ」
返事はなかった。
誠は鳴らなかった。むしろ声が静かだからこそ、つつの言葉がく響いた。
「さっきまでなら、まだ何か事があったんじゃないかといたかった。母さんに謝って、俺に全部話してくれれば、度は聞こうとってた」
子の目に涙が浮かんだ。
しかし誠は続けた。
「でも俺がいないとったら、母さんに『聞き違いだ』『歳のせいだ』って言ったよな」
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