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"墓前の偽息子" 第6話

「だって……」

「自分が騙そうとした相を、今度はボケたことにして逃げようとした」

子は唇を噛んだ。

文子は誠の横顔を見ていた。

これは妻へのりだけではない。

自分が信じようとしてきた結婚そのものが壊れていく痛みだった。

その、廊の奥で再び物音がした。

誠がそちらを向いた。

「誰かいるのか」

子は答えなかった。

誠が廊へ向かって歩きすと、子が慌てて腕を掴んだ。

かないで!」

それで分だった。

誠は妻のを振りほどき、奥の部の扉をけた。

そこにの男がっていた。

男は40代半ばほどで、いシャツに黒いジャケットを羽織っていた。文子には見覚えがなかったが、誠は男の顔を見るなり目を細めた。子が以「学代の友」と紹介した写真のに、同じ顔を見たことがあった。

「俊介……だよな」

男は答えなかった。

その沈黙だけで、誠には分だった。

「さっき母さんに話したの、おだろ」

らない」

俊介はく答えた。

「俺の携帯から?」

「何の話だよ」

「だったら警察呼んで、発信履歴を確認してもらおう」

誠がそう言うと、俊介の表が変わった。

文子はここまでのやり取りを聞きながら、バッグのにある自分の携帯をそっと確認した。着信履歴には確かに「誠」の番号が残っている。完全な録音はしていなかったが、なくとも発信に使われた端末がこのにあることと、文子と誠のが会話を聞いていることはきかった。

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子が突然、俊介のた。

「このは関係ないの」

子」

「私が頼んだだけ。私が全部悪いの」

俊介が驚いた顔で子を見た。

「何言ってんだよ」

その瞬にあった関係が文子にも見えた。

互いを守ろうとしているのではない。

自分だけは助かりたい。

そのいが、それぞれの表ていた。

「俊介が考えたのよ」

子が続けた。

「お義母さんが庫にを持ってるって話をしたら、しくらい借りても分からないって……」

「おい!」

俊介が声を荒らげた。

「おが借あるって言ったからだろ!」

誠の顔が固まった。

「借?」

子は目を伏せた。

問い詰めると、子には誠がらない複数の借があることが分かった。カードのリボ払い、消費者融、俊介との旅代、ブランド品の購入費などをね、返済はすでに自分の収入だけでは追いつかなくなっていた。俊介自にも事業の失敗で借があり、は「文子の庫にある貴志の遺産」を使うことを考え始めたという。

最初は子が鍵の所を探すつもりだった。しかし庫は暗証番号式で、無理にければすぐに分かる。そこで、誠が数を空けると聞いたは、彼の携帯を利用して文子から番号を聞きす計画をてた。

「私のおじゃないわ」

文子が静かに言った。

が文子を見た。

「あなたたちは、庫のがあるとったみたいだけど、現なんてたいして入っていないの。

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くなった夫の計や類、族のをしまってあるだけよ」

子の顔に、信じられないという表が浮かんだ。

「そんな……」

文子はその言に、かえってしくなった。

姑を騙し、夫になりすまし、犯罪になる危険まで冒したのに、子のにあったのは最まで「いくら入っているか」だったのだ。

誠は妻を見つめていた。

「俺と別れて、この男と暮らすつもりだったのか?」

子は答えなかった。

俊介も目を逸らした。

沈黙が答えだった。

誠は度だけ目を閉じ、く息を吸った。

「警察に連絡する」

子の顔が張った。

「待って!」

「もう待たない」

「誠、お願い。夫婦でしょう?」

「夫婦だから待ってきたんだよ」

誠の声が初めて震えた。

「でも、おは俺の母親を騙してを盗ろうとした。それも俺の名を使って」

子は何も言えなかった。

誠が文子の携帯を借りようとを伸ばした子の様子が変わった。先ほどまで泣きそうな顔をしていたのに、突然がり、テーブルの端にあった湯呑みをへ叩きつけた。陶器が割れる乾いた音が響き、俊介まで驚いてろへがった。

「全部あんたたちのせいよ!」

子は叫んだ。

「お義父さんがきてた頃から、ずっと私を馬鹿にしてたでしょう! 贅沢する女は駄目、節約しろ、の丈にった暮らしをしろって、会うたびに説教ばっかり!」

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