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"墓前の偽息子" 第8話

にあるのは、子たちが像したようなではない。貴志が最まで使っていた腕計、の権利関係の類、夫婦で初めて旅したの古い写真、誠がの頃に父親へいた「おとうさんありがとう」というまで残されていた。

文子はそのに取り、しばらく眺めた。

あの庫の価値は、額では測れない。

だからこそ余計に、貴志の命にその所を狙われたことがしかった。

、誠がで文子のへ来た。

婚する」

玄関へがるなり、誠はそう言った。

文子は驚かなかった。

子さんとは話したの?」

「ああ。弁護士を通して話すことにした。もうだけでは無理だ」

誠は座卓のに座り、俯いていた。

「俺にも悪いところはあったとう。仕事ばかりだったし、子が満を言ってても、どうせまた始まったって聞き流したこともある」

文子はを挟まなかった。

「でも、それと今回のことは別だって、やっと分かった」

誠は顔をげた。

「俺が夫として完璧じゃなかったからって、母さんを騙していい理由にはならない。浮気していい理由にもならないし、を盗ろうとしていい理由にもならない」

「そうね」

だったら、俺がもっとすれば何とかなるって考えてたとう」

誠は自嘲するように笑った。

「親父の言葉、俺には全然についてなかったな」

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文子は首を振った。

「そんなことないわよ」

「どこが」

「今回、ちゃんと自分の目で確かめたでしょう」

誠は黙った。

「あの話を聞いただけで鳴り込んでいたら、子さんは『母さんの聞き違い』で通したかもしれない。でもあなたは最まで見た。そので、自分で決めた。それでいいのよ」

誠の目に涙が浮かんだ。

「母さん、俺……何であんなにく気づかなかったんだろう」

文子は息子の肩へを置いた。

「信じていたからでしょう」

騙されたは、愚かだから騙されたわけではない。

信じたかったから。

族を壊したくなかったから。

その気持ちまで否定する必はない。

「でもね、信じることと、目を閉じることは違うのよ」

文子が言うと、誠はゆっくり頷いた。

そのの夕方。

誠が帰った、文子は仏壇のに座った。

「あなた」

へ向かって笑った。

「また助けてもらっちゃったわね」

写真のの貴志は、相変わらず器用な笑顔を浮かべていた。

それから1が過ぎた。

再び貴志の命がやってきた。

はすでに葉桜になっていた墓の桜が、今し遅れて満を迎えていた。淡いびらがに乗って畳へ落ち、掃除を終えたばかりの墓にも枚だけ張りついた。

文子はそれを指でそっと払い、墓をかけた。

隣では誠がてのを替えている。

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婚までの続きは決して簡単ではなかった。警察の事聴取や弁護士との打ちわせも続き、誠はしばらく眠れないが続いたという。子との活を理するたび、自分が積みげてきたそのものを否定されたような気持ちになり、仕事に突然が止まることもあった。

それでも、季節がつずつ過ぎるにつれて、誠はしずつ元の表を取り戻していった。

無理に忘れたわけではない。

許したわけでもない。

ただ、自分の子のしたことで止める必はないと考えられるようになったのだろう。

「母さん」

を拭きながら誠が言った。

「今連れてきてる」

文子は振り返った。

れた桜のに、の女性がっていた。派さのない紺のワンピースにいカーディガンを羽織り、こちらへ来ていいものか迷うように両ねている。

「誰?」

った域の写真教で」

誠は照れくさそうにを掻いた。

「付きってるって言うほどでもないんだけど、親父の墓参りにくって言ったら、おを供えたいって」

文子は息子の顔を見た。

ここにっていたには、妻に嘘をつかなければ父親の墓へ来ることさえできなかった。その誠が今は、誰にも隠さず、自分のでここへ来ている。

それだけで分だった。

「呼んできなさいよ」

誠が女性へを振った。

女性はし緊張した様子でづき、文子へげた。

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