みかん小説
本棚

"余ったパンの嘘" 第6話

昼になった。

当番がい割烹着を着て、パンを配り始めた。

教卓にもコッペパンが1本置かれた。

3は何も言わず、それを見た。

はいつものように牛乳をみ、おかずへ箸をつけた。

そしてが半分ほどんだ頃、パンへを伸ばした。

3には、このどうするか分かっていた。

に包む。

革鞄へ入れる。

放課、川敷へ持っていく。

昨までなら、そのの理由をりたいとっていた。

今は違った。

ってしまったからこそ、何も言えなかった。

がを広げた。

そのだった。

昨をつけた男子の1が、自分のコッペパンを両で持った。

し迷ってから、真んで半分に割った。

そして何でもないような顔で言った。

「先、俺、今ちょっと腹いっぱい」

のが止まった。

男子は自分が何を言っているのか分かっていた。

昨、先が使ったのと同じ言葉だった。

「腹いっぱい」

本当は腹いっぱいではない。

育ち盛りの5だった。

のパンを1本べても、放課にはまた腹が減るような頃だった。

それでも男子は、半分に割ったパンを机の端へ置いた。

はしばらくそのパンを見た。

「べられないのか?」

「うん。今は半分でいい」

男子はできるだけ普通の顔をした。

すると、昨緒にをつけたもう1も、自分のパンへを伸ばした。

し迷った。

広告

それから半分に割った。

「僕も今、ちょっとい」

3目も周囲の様子を見た、をいた。

「俺も」

教の何かが議そうに3を見た。

昨のことをらない子には、突然3が揃って欲をなくしたようにしか見えなかった。

「おらどうしたんだ?」

くの席の子が笑った。

「朝飯いすぎたんじゃない?」

3は笑ってごまかした。

だけは笑わなかった。

3の顔を順番に見た。

それから自分の元にあるコッペパンを見た。

教のが、ほんの数秒だけ止まったようだった。

3は何も説しなかった。

昨、先のをつけました。

川敷まできました。

健のを見ました。

先がパンを渡すところを見ました。

そんなことは言も言わなかった。

も聞かなかった。

「昨、見ていたのか」

そう問い詰めることもしなかった。

ただしだけ目を伏せた。

そしてく言った。

「そうか」

それだけだった。

は3が残したパンをすぐ集めようとはしなかった。

本当にべられないのか確認するように、しばらく様子を見ていた。

が終わる頃になっても机のに残っているのを見ると、初めてそれをに取った。

丁寧にへ包む。

自分のパンと緒にした。

革鞄の蓋をく。

そのへ静かに入れた。

昨まで1本だったパンが、今はし増えた。

3は何も言わなかった。

広告

も礼を言わなかった。

もし「健のためにありがとう」とにすれば、教に理由が伝わってしまう。

だから何も言わなかった。

その無言のやり取りだけで分だった。

午の授業はいつも通りんだ。

は黒板に算数の問題をいた。

3の男子はノートをいた。

誰も昨の川敷の話をしなかった。

放課。

はいつもの革鞄を自転の荷台へ載せた。

3は、もうをつけなかった。

どこへくか分かっていたからだ。

舎の窓から自転がざかっていくのを見送りながら、1がさく言った。

「今、妹もえるかな」

別の子が頷いた。

それ以、話はしなかった。

次のになると、3は普通にパンを全部べた。

も何も言わなかった。

その次のは、1だけし残った。

さらに別のには、誰も残さなかった。

「毎持っていこう」

そんな相談をしたわけではなかった。

自分のべるものをし続ければ、かえって先が困るような気もした。

ただ本当にべきれない。

しなら残してもいいとえる。

そんなだけ、パンが1つ、あるいは半分ほど教卓のくへ残るようになった。

教に、さな変化が起き始めていた。

最初は3だけだった。

けれど同じ教で毎過ごしていれば、周囲の子もしずつ気づく。

「最、先の鞄に入るパン増えてない?」

ある子が言った。

3は顔を見わせた。

「そう?」

「お、この残してたじゃん」

「腹いっぱいだっただけ」

そこで話を終わらせた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: