"10年目のゲームボーイ" 第3話
もなく、覆面が到着した。
そこから髪交じりの50代の男がりてくる。
森田刑事だった。
直の事件を担当してきた刑事で、恵美も何度も顔をわせている。
「篠原さん」
森田は恵美へ駆け寄った。
「何があったんです?」
「あのが……直のゲームボーイを持ってるんです」
森田の表が引き締まった。
「青いゲームボーイで、シールが3枚。直が方になった、緒になくなった物です」
森田はすぐへ戻り、古い事件ファイルを持ってきた。
何度もかれ、角の擦れた分いファイルだった。
から1枚の写真をす。
そこには幼い直がゲームボーイを持って写っていた。
「権田さん」
森田が静かに言った。
「篠原直君は失踪8歳。現きていれば18歳です。私たちは当なくなった私物についても記録しています」
写真を見せる。
「これと、あなたがお持ちの物を比較させてください」
権田はしばらく黙っていた。
やがて舌打ちするような仕をして、ポケットからゲームボーイを取りした。
森田は袋を着け、慎に受け取る。
写真。
本体。
3枚のシール。
位置までよく似ていた。
「どこでに入れました?」
「昔、どこかのフリーマーケットで買った」
「いつですか?」
「覚えていない」
「誰から?」
「らん」
答えが曖昧だった。
恵美はちがりかけた。
「嘘よ」
里子が腕を掴む。
「恵美」
広告
「だって、そんな偶然ある?」
森田は恵美を制し、権田へ線を戻した。
「と今持ち込んだ荷物を確認させてください」
権田は満そうだったが、
「勝にしろ」
と答えた。
警官たちは箱をつずつ確認した。
古い玩具。
器。
類。
雑誌。
しかし直の事件につながる物は見つからなかった。
「自宅も確認したいのですが」
森田が言うと、権田は眉を寄せた。
「構わん。ただし、あの女はに入れるな」
恵美を指して言った。
は権田の自宅へ移した。
驚くほどかった。
フリーマーケット会からわずか1ブロックほどの所に、い壁の古い2階建て宅があった。
警察官だけがに入った。
恵美と里子は森田ので待たされた。
30分。
45分。
1。
恵美は窓越しに、部をき来する警官の姿を見続けた。
「何か見つかるわ」
里子がを握る。
「きっと」
だが、森田が戻ってきた、その顔にびはなかった。
「篠原さん」
「……はい」
「直君がこのにいたと考えられる証拠は見つかりませんでした」
胸ので何かが落ちた。
「何も?」
「ありません」
「でもゲームボーイが……」
「同じ種、同じようなシールだけでは、直君の物だと法に証するにはいんです」
「DNAは?」
「今の段階では効なものは確認できていません」
権田は玄関先にっていた。
まるで当な疑いをかけられた被害者のような顔で、腕を組んでいる。
広告
森田は彼へづいた。
「ゲームボーイは証拠品として預からせてください」
「好きにしろ」
権田は吐き捨てるように言った。
「どうせ今売るつもりだった」
そして恵美へ線を向けた。
「最初からあんな騒ぎ方をしなければ、あんたに売ってやったものを」
「買い戻す?」
恵美の声がくなる。
「あれは元々、私たちの物です」
森田がへ入った。
「権田さん、最に確認します。誰のために買ったんです?」
権田の目が揺れた。
「私の……」
ほんの瞬だった。
「息――」
言いかけて止まる。
「私のためだ」
恵美は聞き逃さなかった。
森田も同じだったらしい。
の線が瞬だけう。
「篠原さん」
森田が言った。
「署で正式に事を聞かせてください」
恵美は頷いた。
ゲームボーイが何をするのか、まだ誰にも分からない。
それでも。
権田が何かを隠している。
その覚だけは、へ向かう途も消えることがなかった。
警察署は何も域で使われてきた古い煉瓦造りの建物だった。
恵美にとっては、決して懐かしくない所だった。
直が消えた直、何度ここへ来ただろう。
目撃報の確認。
事聴取。
似た子供が見つかったという連絡。
しかし、そのどれも直ではなかった。
さな取調で、恵美はフリーマーケットで起きたことを最初から説した。担当警官がキーボードを叩き、ときどきや会話の内容を確認する。
最に何枚かの類へ署名した。
「ゲームボーイを、もう度見せてもらえませんか?」
恵美が言った。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
壁の中の13年
平成3年、埼玉の小さな町で、妊娠8か月の美智子が突然姿を消した。 財布も出産準備の品も家に残されたまま。昼にはスーパーで買い物をし、公衆電話から誰かへ電話をかけ、その後、背の高い男と歩く姿を目撃されたのを最後に、彼女の行方は分からなくなる。 夫の誠、東京にいたはずの兄・茂、そして美智子を追い詰めていた山田家の沈黙。 警察は夫を疑い、町は噂に揺れたが、決定的な証拠は見つからないまま、事件は13年の時に埋もれていく。 しかし平成16年、再開発で古い家が解体された時、寝室の壁の内側から、長年隠されていたものが見つかった。 あの日、美智子は誰に電話をかけたのか。 そして、壁の中に封じられていたのは、彼女の行方だけではなかった――。ミステリー|真相1.8萬字5 131 -
完結第13話
消えた23人の観光団
2025年9月29日、福岡に約2700人の団体観光客が一斉に降り立った。 その日を境に、日本各地で不可解な失踪が相次ぎ始める。タクシー運転手、配達員、宿泊施設の関係者――いずれも夜、一人で行動することの多い男性たちだった。 やがて糸島の海岸で発見された身体の一部が、事件の扉を開く。 捜査を進める刑事・鈴木健二は、失踪した観光客、黒いワゴン車、古い倉庫、医療機器販売会社、そして横浜港へ向かう冷凍コンテナという、ばらばらに見えた点を追い始める。 これは単なる失踪事件ではない。 観光の人波に紛れ、日本の空き倉庫や港を利用して動いていた国際犯罪組織。その裏には、人間を“商品”のように扱う恐ろしい取引が隠されていた。 救える命はまだ残っているのか。 そして、海へ消えた男と「王」と呼ばれる人物の正体とは――。 福岡から始まった小さな違和感は、やがて日本全体を揺るがす闇へとつながっていく。ミステリー|真相2.0萬字5 131 -
完結第12話
床下の小さな指輪
1991年、群馬県山川町の古い油屋で、嫁の佐藤美優が幼い息子を残して姿を消した。 家族は「男と駆け落ちした」と証言し、町にもその噂は広まった。働き者で、息子を誰より大切にしていたはずの美優は、いつしか“子供を捨てた母親”として語られるようになる。 それから6年後。 借金で差し押さえられた油屋の離れを壊した時、床下のセメントの奥から、人骨と小さな金の指輪が見つかった。 美優は本当に家を出たのか。 なぜ姑は、離れを壊すことだけを必死に止めたのか。 そして彼女が最後まで握りしめていた指輪は、誰のためのものだったのか――。ミステリー|真相1.8萬字5 129 -
完結第11話
11年目のコロッケ
14歳の秋、黒田み咲の母・裕子は「夕飯のおかずを買ってくるね」と言って家を出たまま、二度と戻らなかった。 父は、母が家の金を盗み、近所の男と駆け落ちしたのだと親族に告げた。置き手紙も見つかり、周囲の大人たちは皆それを信じた。残されたみ咲は、“泥棒の娘”として11年間、父と継母、そして親族たちから辱められ続けることになる。 しかしある法要の日、裏山の古い井戸から、母が消えた日に買ったコロッケのレシートと、泥にまみれたカーディガンが見つかる。 母は本当に男と逃げたのか。 なぜ、継母の失くしたはずのイヤリングが井戸の底にあったのか。 そして、11年間沈黙していた“目撃者”が現れた時、黒田家が守り続けてきた嘘は音を立てて崩れ始める。 母に捨てられた娘だと思い込まされてきたみ咲が、封印された真実へたどり着くまでの、愛と復讐の物語。ミステリー|行方不明1.6萬字5 1318 -
完結第15話
灯油札の密告
2005年11月、長野県の山あいにある静かな村で、工藤家の住宅が深夜に炎に包まれた。 家の中には、父と母、そして7歳の息子。近所の人々が助け出そうと駆けつけるが、玄関には外側から鎖と南京錠が掛けられ、勝手口も角材で封じられていた。 これは事故ではない。 誰かが一家を逃げられないように閉じ込め、火を放ったのだ。 村人たちは涙ながらに犯人探しを願い、特に隣人の男は誰よりも深く悲しんでいるように見えた。だが刑事・星野は、焼け跡に残された不自然な痕跡と、その男の身体にあった小さな傷に違和感を覚える。 そして事件から数日後、町の貴金属店に持ち込まれた大量の一万円札が、捜査を大きく動かす。 その紙幣には、かすかな灯油の匂いが残っていた。 炎で消されたはずの夜に、いったい何があったのか。 そして、最後まで燃え残った“匂い”は、誰の罪を指し示していたのか――。ミステリー|遺體発見2.3萬字5 251 -
完結第10話
雪下の赤いマフラー
1998年11月12日、雪の降る旭川で、赤いマフラーを巻いた3人の女子高校生が忽然と姿を消した。 双子の美咲と南、そして親友の彩。3人は放課後の演劇部の練習を終え、いつものように学校を出たはずだった。だが、その日を境に、家族のもとへ帰ることはなかった。 捜索は続いたが、足跡も持ち物も見つからない。吹雪がすべてを消してしまったかのように、事件は未解決のまま17年の歳月が流れていく。 そして2015年。元郵便配達員の古い鞄から、17年間届けられなかった1通の手紙が見つかる。 そこには、こう書かれていた。 「私は、美咲、南、そして彩に何が起きたのか知っています」 手紙をきっかけに再び動き出す捜査。座布団の中に隠された日記、古いカセットテープ、稚内へつながる謎の手紙、そして雪深い小屋の床下に眠っていた赤いマフラー。 3人はなぜ消えたのか。 教師・田中浩は何を隠していたのか。 17年間閉ざされていた雪の中の真実が、今、静かに姿を現す。ミステリー|行方不明1.5萬字5 1136 -
完結第12話
ETCに残らない白バイ
2003年春、千葉県の高速道路を巡回していた女性白バイ隊員・水島舞が、サービスエリアで忽然と姿を消した。 監視カメラには、彼女が白バイを降りて建物へ入る姿が残されていた。だが、その18分後、白バイに乗って走り去ったのは舞ではなく、ヘルメットで顔を隠した見知らぬ男だった。 舞本人も、白バイも見つからない。料金所の記録にも、ETCログにも、その後のはっきりした足取りは残っていなかった。 結婚を控えていた婚約者、娘の帰りを待ち続ける両親、そして答えを出せないまま止まった捜査。 10年後、古い監視映像を最新技術で解析した時、画面の隅に映っていた“あるもの”が、事件を再び動かし始める。 白いバイクは、どこへ消えたのか。 そして水島舞が最後に見た人物とは――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 6454 -
完結第11話
雪峠の五発
2006年11月15日、長野県北部。 その年最初の雪が降り始めた高木峠へ、1人の巡査が向かった。展望台に不審な車があるという匿名通報を受け、霧谷慎也は「確認だけ」のつもりでパトカーを走らせる。 だが午後6時15分、現場到着を知らせる無線を最後に、慎也からの連絡は途絶えた。 雪の展望台に残されていたのは、鍵のかかったパトカーと、車内に置かれた制帽と手袋。慎也本人だけが、吹雪の峠から忽然と姿を消していた。 事故なのか、事件なのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、自ら山へ入ったのか。 妻と幼い娘は、答えのないまま13年を過ごすことになる。 そして2019年春。雪解けの斜面から、慎也が持っていた古い懐中電灯が見つかった。 13年間沈黙していた峠が、初めて返した小さな手がかり。 その光の先に隠されていたのは、匿名通報の本当の意味と、雪の下に封じられていた一夜の真実だった。ミステリー|行方不明1.7萬字5 1568 -
完結第13話
5枚で消された妻
1994年4月、長野県の山あいにある古いビジネスホテルで、31歳の女性・高橋美幸が冷たくなって発見された。 部屋には睡眠薬の空箱と酒の瓶。夫との離婚調停を控えていたこともあり、警察は早々に「事件性なし」と判断する。記録はわずか5枚だけ。母のよし子がどれだけ訴えても、娘の死が再び調べられることはなかった。 それから12年。 美幸の夫だった男は別の町で再婚し、真面目な父親として穏やかに暮らしていた。一方、よし子は痛む膝を抱えながら、毎年娘の墓へ通い続ける。 「娘は、自分から死を選ぶような子ではない」 誰にも届かなかったその言葉が、ある夜、古い薬物帳簿に残された一つの名前によって動き出す。 12年前のホテルで、本当は何が起きたのか。 そして、たった5枚の記録が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 719 -
完結第13話
床下の学級日誌
1995年、福岡の小さな離島・相島に、一人の若い女教師が赴任してきた。 藤野理子、26歳。全校児童わずか11人の分校で、子どもたち一人ひとりに寄り添い、島の人々にも少しずつ受け入れられていく。だが彼女は、ある少女の腕に残る不自然な痣に気づいてしまう。 「このまま見過ごすことはできない」 そう決意した夕暮れ、理子は本土へ渡ろうとしていた。しかし、その日を境に彼女は島から姿を消す。 残された荷物、桟橋で見つかったスカーフ、そして口を閉ざした11人の子どもたち。 警察はやがて、理子が自ら島を出た可能性が高いと判断する。けれど、子どもたちは知っていた。 あの日、桟橋で本当に何が起きたのかを。 それから10年後、取り壊される分校の床下から、理子の学級日誌と万年筆が見つかる。封じられていた記憶が、静かに動き出した――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 390