"飛騨の農家に消えた嫁" 第7話
涼子はすでに老いていた。
警察から突然話を受け、
「岐阜で見つかった遺骨について確認したい」
と言われた、すぐに何をするか理解したという。
血液が採取され、DNA鑑定がわれた。
結果は母系の血縁関係を示した。
牛舎裏の堆肥のに埋められていた女性は、ゆき子だった。
8。
涼子が毎警察へ話をかけているも。
健が再婚したも。
蔵が品評会で表彰されたも。
が庭に集まり酒をんだも。
ゆき子は、最初から農のにいた。
渡辺自が涼子へ結果を伝えた。
話で、
「ゆき子さんで違いありません」
と告げた。
返事はなかった。
渡辺は受話器をに当てたまま待った。
1分。
2分。
い沈黙だった。
5分く経った頃、涼子の声が聞こえた。
「うちのゆき子……」
声は震えていた。
「そこで、ずっと寒かったでしょうね」
渡辺は答えられなかった。
受話器の向こうで、涼子が静かに泣いていた。
話を切った、渡辺は捜査本部の机のに1枚の写真を置いた。
1995。
の庭。
柿のので赤いゴム袋を持ち、恥ずかしそうに笑う27歳のゆき子。
その写真をに、1995127のを再構成していった。
午5、ゆき子が起。
午10頃、伊藤が牛舎へ向かう姿を目撃。
午1040分頃、健は農協の倉庫にいた。
午11頃、蔵は老仲のへかけたとされていた。
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正午過ぎ、本浩が農付で「ドン」という鈍い音を聞いた。
午2頃、蔵帰宅。
午4頃、健帰宅。
その、ゆき子の目撃報はない。
渡辺が気にしたのは、蔵のだった。
もし午11に老仲のへったのなら、正午頃に牛舎で音がしたこととは関係がない。
しかし、そのを正確に確認できる物はいるのか。
8の記録には、そこまで調べた形跡がなかった。
再捜査のらせがへ広まると、全体の空気が変わった。
20036末。
渡辺は3にわたり、14へ個別に事を聞いた。
最初は、誰も何も話そうとしなかった。
「昔のことですから」
「覚えていません」
「のの事は分かりません」
同じ言葉が繰り返された。
く同じで暮らしてきた者同士だった。
隣のことを警察へ話すという為そのものに抵抗があった。
しかも相は蔵だった。
、の顔として振るってきた男である。
その沈黙を最初に破ったのは、ゆき子の最の姿を目撃していた伊藤の老女だった。
渡辺が聞き取りを終え、
「ありがとうございました」
と席をちかけただった。
「ちょっと待ってください」
伊藤が呼び止めた。
渡辺は座り直した。
伊藤はしばらく両を膝ので握っていた。
「私ね……あの、もう1回見たんです」
「何をですか」
「蔵さんを」
渡辺の表が変わった。
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伊藤は声を落とした。
「昼頃だったとう。塀越しに、牛舎の裏で何か引きずっていた」
「何を引きずっていたんですか」
「分からない。最初は牛の飼料袋か何かだとった。でも……」
老女のが震え始めた。
「今になってうと、あれは違ったんじゃないかって」
「なぜ8に話さなかったんですか」
伊藤は目を伏せた。
「見違いだったといたかったんです」
それからさく続けた。
「あののことを、悪く言いたくなかった」
その証言が、8閉ざされていたのをしずついていった。
伊藤の証言から2。
本浩が自分から警察署へやってきた。
1995127の正午過ぎ、農のくで「ドン」という鈍い音を聞いた男だった。
応接へ通されると、本は子を両で握ったまま言った。
「音のことだけじゃないんです」
渡辺は帳をいた。
「ほかに何か見ましたか」
本は頷いた。
「あの、農のを通った、がいていたんです」
音を聞いた、何気なく農のへ線を向けた。
その、牛舎付に蔵の姿があった。
本に気づいた蔵は、瞬きを止めた。
そしてすぐに農のを閉めたという。
「どんな様子でしたか」
本はしばらく考えた。
「っていたわけじゃない。びっくりした顔でもない」
「では?」
「見られたくないものを見られたみたいな顔です」
その表だけが、8忘れられなかった。
当警察が聞きに来ていれば話したかもしれない。
しかし誰も来なかった。
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