"捨てられた妻の逆転相続" 第2話
「ふん、さっさとてったか。文句も言わずにるとは、の程を弁えている」
俊はを鳴らし、リビングのソファへ戻った。
自分は名加納の当主であり、広なと敷の正当な相続だ。煩わしい介護からも、で冴えない妻からも解放され、これからは自分のい通りの優雅な独活が始まる。すでに裏で付きいを始めていた若いクラブのママとの再婚話もめられる。
そうほくそ笑んでいた俊の線が、仏壇のの経机に留まった。
線ての横に、ずっしりとみのある「親展」と記された茶封筒が通、然と置かれていた。
「なんだ……? 財産分与の乗せでも懇願するか?」
俊は嘲笑を浮かべながら封筒をに取った。
封筒の表には、恵子の字ではなく、かつてを嗜んでいたき母・静の、力く美しい達な文字でこうかれていた。
『男・俊へ ――わがに封のこと 加納静』
「お母さんの……遺言?」
俊の眉がピクリといた。
静が倒れてからの、俊は「母さんは認能が落ちて寝たきりだから」と決めつけ、財産管理のすべてを自分が掌握しているつもりでいた。弁護士を通じて公正証遺言を作成させようとしたこともあったが、静の病状を理由に回しにしていたはずだった。
俊は胸に湧きがった嫌な予を振り払うように、乱暴に封筒の封を破いた。
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からてきたのは、何にも綴じられた類の束だった。
番にあったのは、公証役の確定付が押された正式な類――『自証遺言(保管制度利用済)』の謄本だった。
俊の目が、遺言の本文の目に吸い寄せられた。
そこには、俊のをハンマーで殴りつけるような文言が、然と並んでいた。
『、加納の本邸敷(京都港区本・約百坪)および、株式会社加納所の全株式(発済株式総数の百パーセント)を、男・俊ではなく、男の妻・加納恵子に遺贈する』
「は……? なんだ……これは……!?」
俊の喉から、の抜けた鳴が漏れた。
「嘘だ……! お母さんが正気でこんな遺言をくはずがない! 恵子の奴め、寝たきりの母さんを騙してかせたのか!?」
俊は激昂し、類をテーブルに叩きつけた。
しかし、そのに綴じられていた分い資料の数々が、俊の言葉を容赦なく打ち消した。
それは、、恵子がの欠落もなくき綴り、訪問医と担当護師が毎サインと捺印をして確認してきた『完全介護誌』の写しだった。
そこには、単なる排泄や投薬の記録だけではなく、静の精神状態、識の晰さ、々の会話内容が、医師の診断とともに克に記録されていた。
さらに、通の直のが添えられていた。静がくなる、まだ識がはっきりしていた期にかれたものだった。
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『俊へ。 おは私が倒れてからの、この母の部に何回入ってきたかい? 数えてみたら、に、回、正と盆に親族が来るだけ、世体のために顔をしただけだったね。 おが部に来るたびににするのは、「遺産のの境界線はどうなっている」「会社の権利関係の類はどこだ」というの話ばかり。 私がをして苦しんでいるも、おは「介護は嫁の義務だ」「をしているんだから文句を言うな」と恵子さんを鳴りつけていた。私はベッドので、そのすべてを聞いていました』
俊の背筋を、たい氷が滑り落ちていくような悪寒がった。
静は寝たきりだったが、もも、俊がっていた以に冴え渡っていたのだ。
はさらに続いていた。
『おが会社を継いでから、何をやっていたかもっています。 派な投資にをし、座で放蕩を尽くし、会社の資繰りを悪化させていたこと。 それを隠すために、私が寝たきりであるのをいいことに、私の個座から勝に数千万円単位のを「役員借入」として引きしていたこと。 すべて、恵子さんが税理士や弁護士と相談しながら、私の財産が散逸しないよう必に守ってくれていたのですよ』
「な……なんで、それを……!」
俊のがガタガタと震え、を取り落としそうになった。
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