"捨てられた妻の逆転相続" 第4話
「父さん……お、そんなことやってたのかよ……!? 会社のを横領して女に貢いでただと……!?」
「翔太、違う! あれは会社のための交際費で……!」
「ふざけるなよ! 俺のはどうなるんだ! 会社で『将来の優良資産の継者』として振るってきたのに、横領犯の息子なんて噂がったら、俺は会社にいられなくなるじゃないか!」
昨まで母を酷に見捨て、結束していたはずの父と息子は、と保のに醜く罵りいを始めた。
条弁護士はその様子を瞥し、侮蔑のの混じったため息をさく漏らした。
「加納俊様。この敷の所権は、遺贈によりすでに加納恵子様へ移転登記の続きが完しております。恵子様からのご向により、本より週以内に私物をすべてまとめて退していただきますよう通告いたします。期限を過ぎたは、法占拠として渡し断の続きを取ります」
条弁護士は踵を返し、敷をっていった。
静まり返った広な敷ので、俊と翔太はただ呆然とち尽くしていた。
週。
俊は着の着のまま、数個の段ボール箱とともに本の敷を追いされた。
臨株主総会において、株主となった恵子の議決権使により、俊は代表取締役を即座に解任された。役員報酬を断たれただけでなく、億千万円の横領の返還を求められ、俊が所していた個資産や会員権はすべて差し押さえの対象となった。
広告
再婚を約束していたはずの若い女性も、俊が文無しになり額の負債を抱えたとるや否や、話番号を変えて姿を消した。
俊は現、郊の暗いワンルームアパートで、震えながら暮らしている。
朝起きても、誰もご飯を作ってくれない。
、母が寝ていた部のシーツを替え、体を拭き、事を作り続けていた恵子のが、どれほどのみとを持っていたか。
『もう君の役目は終わった』
自分が言い放った傲な言葉が、毎夜、呪いのように元でリフレインする。
役目を終えて捨てられたのは、妻ではなく、母の信頼を裏切り、族を具としか見なさなかった自分自だったのだ。
方、息子の翔太もまた、痛い代償を支払うことになった。
加納の資産をあてにした無謀な投資計画を社内で公言していたことが仇となり、がに入らないと判した途端、社内での信用を完全に失墜。さらに父親の横領スキャンダルが業界内にれ渡り、居所を失って方の営業所へと遷された。
「母さんさえ……母さんに優しくしてさえいれば……」
翔太は荒れ果てたアパートで酒をあおりながら涙を流したが、恵子に通じる連絡先は弁護士によって完全に遮断されていた。
初の清々しいが、美しく入れされた本庭園の々を揺らしていた。
広告
加納の敷の縁側に、恵子は穏やかな面持ちで腰掛けていた。
喪を脱ぎ、きやすい質なブラウスにを包んだ彼女の表には、の介護の疲れは微もなく、澄み切った青空のような爽やかさが広がっていた。
「恵子さん、お茶が入りましたよ」
声をかけてきたのは、加納所の古参の経理部だった。俊の正に耐えかねて辞職を考えていたが、恵子がオーナーに就任したことで会社に留まり、現は恵子を全面にサポートしている。
「ありがとうございます、部」
恵子は湯呑みを受け取り、入れのき届いた庭園を見つめた。
恵子は敷を売却することはしなかった。
静の遺志を継ぎ、広な敷と敷の部を改装して、域のための「宅介護支援センターおよび齢者コミュニティ施設」として放することを決めたのだ。、自らが現で苦しみ、学び、培ってきた介護の識と経験を、今度は同じように苦しんでいる域の々のために役てるを選んだ。
恵子の胸の奥には、俊や翔太に対するみは片も残っていなかった。
静が最に遺してくれたのは、莫な財産という名の「正義」と、尽くし続けた恵子への「絶対の信頼」だった。
恵子は空を見げ、ので静かに呟いた。
「お母さん、私、このと会社を本当に切にしてくれるたちのために使っていきますね」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
風呂を禁じた義母と、家を出た嫁の反撃
由香は出版社で働きながら、無職になった夫・正斗を支え、家計も家庭も一人で背負っていた。 しかし、義母・松恵が突然同居を始めると状況は一変する。家事や生活費を押し付けられ、深夜帰宅した由香に対して「文句があるなら稼いでから言え」と言い放つ義母。 限界を迎えた由香は、静かに決断する。 「では今後は、すべて夫に払わせますね」 その一言を境に、崩れかけていた家族の関係が動き始める。 さらに、義母が持ち込んだ大量の段ボールの中から発見された怪しい情報商材。そして隠されていた家族の秘密。 由香が離れたことで、夫は初めて自分が逃げ続けていた現実と向き合うことになる。 奪われた時間、壊された信頼、そして明らかになる義母の本当の目的――。 一人で耐え続けた妻が、自分の人生を取り戻すために選んだ静かな反撃が始まる。怒り|嫁姑|夫婦|修羅場2.2万字5 614 -
完結第12話
寝室のベッドの下に隠されていたもの
寝室のベッドの汚れが気になり、清掃業者を呼んだ高島怜奈。 ところが、六年間動かしていなかったベッドの裏から見つかったのは、枕元へ向けられた小型カメラとマイク、そして謎の装置だった。 さらに奥には、叔母から相続した一億八千万円の財産資料と、怜奈の日常を細かく記した〈生活能力観察記録〉が隠されていた。 頭痛、物忘れ、薬を飲んだ時間、夜中に起きた回数――。 半年間、自分でも「最近おかしい」と感じていた症状まで、なぜかすべて記録されている。 そして最後に残されていたのは、夫の筆跡による一文だった。 〈本人が自己管理不能と認めた段階で、委任状へ署名させる〉 十二年間信じてきた夫の優しさは、本当に愛情だったのか。 ベッドの下から始まった小さな違和感は、やがて怜奈の財産、仕事、そして「自分の記憶」さえ奪おうとする長年の計画へとつながっていく。夫婦|裡の顔2.2万字5 156 -
完結第20話
50歳の再婚、披露宴で知った夫の嘘
「玲子さん、仕事は辞めて、明日から私の介護をよろしくね。息子がそう約束してくれたの」 五十歳で迎えた再婚披露宴。 姑が満面の笑みでそう告げると、親族から拍手が起きた。 隣の夫は否定せず、青ざめた顔で目をそらした。 私は何も問い詰めず、マイクを握り、夫から届いたメッセージを読み上げた。 《仕事は絶対に辞めなくていい。母との同居も介護の押しつけもしない》 その夜、私は新居へ行かず、自分のマンションへ戻った。 翌朝、勤務先から連絡が入る。 夫の会社が、私の退職証明と「親族介護専従手当」を勝手に申請していたのだ。 さらに区役所で確認すると、私の住民票は偽造委任状によって新居へ移され、書類上、私はすでに“無職の被扶養者”にされていた。 その直後、姑から電話がかかってきた。 『玲子さん、助けて……正人が、私の五百万円を全部持っていったの』嫁姑|夫婦|介護2.1万字5 353 -
完結第18話
夫は私を最低な妻として配信していた
夜勤明け、同僚から見せられた動画には、家族へ暴言を吐く“私”が映っていた。 《看護師の妻、夜勤後に家族へ八つ当たり》 再生回数は百二十万回。投稿者は夫だった。 私の言葉は前後を切り取られ、十四歳の娘まで台本を読まされていた。 帰宅して問い詰めると、夫は悪びれずに言った。 「動画を公開されたくなければ、娘の親権を争わないと約束してくれ」 家を調べると、台所や廊下から四台の隠しカメラが見つかった。 さらに夫は、虐げられた父親を演じ、広告や寄付で一年に一千三百万円以上を得ていた。 そして次回予告には、私が娘へ暴力を振るった“決定的証拠”を公開すると書かれていた。 しかし、削除されたメモリーカードを復元すると、映っていたのは泣く娘へ台本を渡す夫の姿だった。 「もう一度。今度は『お母さんに叩かれた』と言って」夫婦|裡の顔2.4万字5 336 -
完結第18話
ただの経理パート
「君の仕事は誰にでもできる。今日で辞めてもらう」 結婚二十八年。夫は社員全員の前で、私を“週三日の経理パート”として解雇した。 代わりに経理責任者となったのは、夫が連れてきた三十四歳の女性顧問。 私は退職届に署名せず、会社の鍵だけを置いて帰った。 ところが翌朝、売上の六割を占める主力取引先三社が、一斉に新規発注を停止した。 夫は私の報復だと騒いだが、通知に書かれていた理由は―― 《安全監査資料の重大な欠落》 新しい顧問が、都合の悪い事故記録を削除していたのだ。 さらに調べると、私は会社案内だけでなく創業者名簿からも消され、二千万円を出資した記録まで書き換えられていた。 役員を外す書類に残された私の署名。 その作成日、私は手術を受け、病院から一歩も出ていなかった。職場逆転|夫婦1.8万字5 397 -
完結第13話
妊娠八か月の私に姑は四十人分のおせちを作らせた
「妊娠は病気じゃないでしょう。座るなら、四十人分のおせちを作り終えてからにして」 妊娠八か月の私は、姑に母子手帳とスマートフォンを取り上げられ、夜明け前から台所に立たされていた。 腹の痛みに耐え切れず床へ崩れた時、店の裏口から両親が入ってきた。 父は椅子のない台所と、姑が握る金庫の鍵を見て静かに尋ねた。 「娘の母子手帳を、なぜあなたが持っているんですか」 この店も住居も、夫の実家の物ではない。経営危機を救うため、私の父の会社が買い取り、相場の三分の一以下で貸していた建物だった。 入院後に調べると、私は知らないうちに店の取締役にされ、毎月二十八万円の報酬を受け取ったことになっていた。 けれど私が渡されていたのは、生活費の五万円だけ。 さらに辞めた板前から届いた花には、一枚のカードが添えられていた。 《金庫の中に、あなた名義の通帳が三冊あります》嫁姑|裡の顔1.1万字5 347 -
完結第12話
娘の就職祝いで夫は私を泥棒と呼んだ
「会社から二千万円を移しました。見つかる前に、帳簿も処分します」 娘の入社祝いの席で、夫は“私の声”が入った録音を再生した。 義母にはワインを浴びせられ、夫からは離婚届を突きつけられた。 「今日署名すれば、警察には届けない」 録音日時は三月十四日、午後八時十二分。 けれどその時、私は病院の手術室で全身麻酔を受けていた。 さらに翌朝、娘の携帯には、私のアカウントから送られた覚えのないメッセージが残っていた。 調べると、消えた二千万円の送金先には義母名義の会社があり、入社したばかりの娘まで五千万円の補助事業の責任者にされていた。 そしてある夜、娘が突然姿を消す。 会社の経理室に残されていたのは、娘の実印が押された一通の自白書だった。 《二千万円の送金は、すべて母の指示で行いました》夫婦|金銭問題1.3万字5 316