"捨てられた妻の逆転相続" 第9話
だが、恵子の本当の役目は、誰かの具としてきることではなく、自分自の志でをし、の痛みを分かちい、しい希望の所を築くことだったのだ。
が吹き抜け、青い陽のびらが優しく揺れる。
加納恵子はを真っ直ぐに見つめ、澄み切ったのへ、確かな歩を踏みしていった。
エピローグ 受け継がれる灯――それぞれの誓い
初のよいが通り過ぎたの夕暮れ、「静メモリアルケアセンター」の敷内には、茜の柔らかなが満ちていた。
の業務を終えた介護スタッフたちが、笑顔で申し送りを交わしながらエントランスをにしていく。デイサービスを利用していた隣の齢者たちを乗せた送迎が、静かに坂をっていった。
施設の理事で、恵子はデスクのに広げられた翌の活計画に万をらせていた。
域の学を対象にした福祉体験学習の受け入れプログラム、独居齢者のための配ボランティアネットワークの拡充、そして、かつて自分と同じように族の介護で孤し、をすり減らしている宅介護者たちのための無料個別相談会。
どれも、かつて暗ので、義母のベッドの傍らで息を潜めていた恵子自が「あの、こんな所があればどれほど救われただろう」
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と切望していた支援の形そのものだった。
コンコン、と控えめなノックの音が響き、扉がいた。
入ってきたのは、かつて静の主治医を務め、現は当センターの嘱託医として医療面を統括しているベテランの医師・本だった。
「加納代表、本もお疲れ様でした。しよろしいですか」
「本先、どうぞお掛けになってください。お茶をお淹れしますね」
恵子がちがろうとすると、本は穏やかにを振ってそれを制した。
「いえ、お構いなく。先ほど、宅ケア相談の記録に目を通していたのですがね……今だけで、相談件数が先の倍くに達しています。特に、義理の親の介護をで抱え込み、族から理解されずに追い詰められている女性たちからのSOSが非常にい。恵子さんがちげた『族介護者のレスパイト(休息)支援病』が、まさに彼女たちの命綱になっていますよ」
本は窓のの庭園に線を向け、どこか懐かしむように目を細めた。
「静さんが倒れられた、この敷の空気は本当に張り詰めていました。失礼ながら、ご主の俊さんは母の病状よりも世体と会社の体面ばかりを気にされ、医療処置の相談をしても『嫁に任せてあるから』の点張りでしたからね。だが、恵子さんだけは違った。毎、夜に及ぶ点滴の管理からずれの予防まで、度も音を吐かず、静さんの瞳を真っ直ぐに見つめて病を続けておられた」
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本は振り返り、恵子に向かって々とをげた。
「静さんは、自分の命が尽きるその瞬まで、恵子さんにから謝しておられましたよ。『あの子のを、私の介護の犠牲だけで終わらせてはならない。いつかあの子が自分ので、自分のを輝かせるための力を遺してあげたい』と、私にも何度も仰っていた。静さんが遺言に込めた本当の願いが、今、こうして見事な形となって域を救っている。主治医として、これほど胸がくなることはありません」
「先……ありがとうございます」
恵子の胸の奥に、温かいがじんわりと広がっていった。
、夫から「無の政婦」と罵られ、息子から「無能な居候」と嘲笑され続けた々。自分は誰にも認められず、ただ消費されるだけのなのだろうかと、夜に義母の寝息を聞きながらで涙を流した夜は数え切れなかった。
だが、見ていてくれたは確かにいたのだ。
義母の静は、寝たきりの体の奥底から、恵子の流す汗と涙のすべてを受け止め、その誠実さに自らのの全財産を賭けて応えてくれた。
本医師が退した、恵子は部のかりを落とし、静かに敷の庭へとた。
夜の帳がり始め、庭園のに設置されたフットライトが、元を優しく照らししている。
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