"残飯の花嫁" 第1話
姉の霞が結婚すると決まった、私たち族は自分のことのようにんだ。両親をくにくした姉が、ようやく自分の庭を持ち、穏やかな幸せをに入れられるのだとっていたからだ。
私の名は川桃子、24歳。学学をに祖父母のをて、現は内のマンションで1暮らしをしている。
両親が交通事故でくなったのは、私が10歳、霞が15歳のだった。突然帰る所を失い、しみのでち尽くしていた私たち姉妹を引き取ってくれたのが、父方の祖父母だった。
祖父の郎は5兄弟の男で、若い頃に運送会社を興しただった。会社はすでに叔父へ譲っていたが、親戚のでは今も祖父の言葉にを傾けない者はいない。
厳格だからではなかった。
困っている親族がいれば、誰より先に駆けつける。親戚の子どもたちの学や就職にも気を配り、を貸すでさえ相の誇りを傷つけない方法を考えるだったからだ。
祖母の子も、私たちを実の娘のように育ててくれた。事やだけでなく、両親を失ったしみまでをかけて受け止めてくれた。
学へ学した私は、祖父が所していた2LDKのマンションで霞と暮らし始めた。5歳の霞は仕事をしながら事を引き受け、慣れないで戸惑う私を支えてくれた。
広告
そんな姉が、友の紹介でりった森本孝志との結婚を決めたのは、半のことだった。
孝志は方の品会社に勤める32歳で、初対面の印象は爽やかで礼儀正しい青だった。祖父母への挨拶も丁寧で、両親がいない私たち姉妹の事を聞くと、真剣な顔でをげた。
「霞さんの族も、これからは僕の切な族です。必ず幸せにします」
その言葉に、祖母は涙を拭い、祖父もしたように頷いた。両親の代わりに霞のを取って式を歩いた祖父は、嬉しさを隠しながらも、披宴の最まで何度も目を押さえていた。
結婚、霞は孝志の故郷へ移った。
私のマンションからで3ほどれた、部の町だった。最初のうちは写真やいメッセージが届いたが、1か、2かと経つにつれ、連絡はなくなっていった。
〈のことが忙しくて、なかなか連絡できなくてごめんね〉
最に届いたのは、そんない文章だった。
話をかけてもない。折り返しもなくなったが、私は婚活を邪魔してはいけないとい、それ以踏み込まなかった。
祖父母も同じだった。
「慣れないで頑張っているんだろう」
祖父はそう言いながら、霞から届いた賀状を居の棚へ切に飾っていた。
あの、もっとく異変に気づくべきだったのだ。
霞の文章が、を追うごとにくなっていたこと。
広告
話にても、背に誰かがいるような声でしか話さなかったこと。そして、必ず孝志の族を褒めてから話を切っていたこと。
けれど私たちは、霞が幸せであると信じたかった。
そのい込みが、助けを求めるさな図を見えなくしていた。
転が訪れたのは、のる曜の夜だった。
刻は22を過ぎていた。入浴を終えた私は、温かい麦茶をみながら、1暮らしには広すぎる部を見渡していた。
霞が使っていた部は、結婚のまま残してあった。けれど、いつまでも空にしておくより、もっとさな部へ移った方がいいかもしれない。
そう考えていた、インターホンが鳴った。
こんなに来客の予定はない。宅配便にしては遅すぎる。
応答せずにいると、今度は玄関の扉が激しく叩かれた。い音ではあったが、乱暴というより、残された力を振り絞って助けを求めているような響きだった。
「誰ですか?」
返事はない。
私は警戒しながらドアスコープを覗き、その向こうにつ物を見た瞬、息を呑んだ。
「お姉ちゃん?」
慌てて鍵をける。
廊には、半ぶりに会う霞がっていた。しかし私の記憶にある姉とは、あまりにも姿が違っていた。
髪は濡れ、頬は痩せこけている。いカーディガンにはと黒い染みがつき、片方の靴は踵が壊れていた。
霞は何か言おうと唇をかした。
けれど声になるに涙が溢れ、そのへ崩れ落ちた。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
凍える孫と消えた家
年末、麻子が息子夫婦の家を訪ねると、十四歳の孫・音実が靴も履かず、凍える庭に置き去りにされていた。父親たちは義姉を連れて海外旅行へ出たという。ところが空港から逃げ帰った義姉・杏奈の告白により、二人の少女が受けていた仕打ちと、音実に掛けられた一億五千万円の生命保険が明らかになる。 これは単なる育児放棄ではなかった。実の娘の命まで金に換えようとした息子に対し、土地も家も握る麻子は静かに反撃を開始する。三週間後、旅行から戻った夫婦を待っていたのは、豪邸が跡形もなく消えた更地と、彼らの人生を根底から崩すさらに大きな罠だった――。祖父母と孫|絶縁|親子関係|修羅場2.5万字5 872 -
完結第17話
しおれた野菜と30万円
正月準備のため妻・綾野に三十万円を預けた修平が帰宅すると、冷蔵庫は空になり、綾野はしおれた野菜を抱えて震えていた。防犯カメラには、合鍵で侵入した母・久美子と妹・ゆりが、食材と現金を奪い、「妻が使い込んだことにする」と脅す一部始終が残されていた。 修平は援助や契約を停止し、父の遺品を調べる。その結果、母は前夫の家から二百万円を持ち逃げし、血のつながらない修平を守ろうとした父に返済を肩代わりさせていたことが判明する。完済後も母は架空の利息をでっち上げ、修平の出生を暴露すると父を脅して、長年金を奪い続けていた。人生逆転|嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場2.5万字5 2654 -
完結第15話
妊娠中の娘が逃げ帰った夜、大富豪の母が動いた
妊娠8か月の娘・はるかが、顔に傷を負い、母エリコの家へ逃げ帰ってきた。病院では新しい肋骨の骨折に加え、以前の骨折痕も見つかる。夫・匠による暴力は、一度きりではなかった。 匠は巨大企業グループの創業家の一員。だがエリコはその地位にひるまず、娘の安全を確保し、診断書を残す。同時に信頼する会計士へ調査を頼むと、匠一家が関わる財団に巨額の不正な資金移動の疑いが浮かび上がった。 報道を受けても疑惑を否定し続けた匠は、緊急会見の最中、はるかへの傷害容疑で逮捕される。さらにグループの資金問題にも捜査が及び、権力を盾にしてきた一族は追い詰められていく。 母の行動が事態を動かす一方、すべての始まりにあったのは、はるかが自分とお腹の子を守るため、あの家から逃げ出した決断だった。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.3万字5 1703 -
完結第10話
「飯抜き」と言われたので、夫との生活を全部やめました
「俺の命令に従わないなら、今日からお前は飯抜きだ!」 会社を勝手に辞め、半年間も妻の収入で暮らしていた夫・裕介は、義両親の前でそう宣言した。 しかも彼が求めたのは、妻・綾野が仕事を辞め、元気な義父の“介護”を始めること。 食卓に並ぶ料理も、家賃も、夫の税金さえ払っているのは綾野だった。 それでも義両親は「夫に従えない嫁に飯を食う資格はない」と言い放つ。 その夜、綾野は一人で家を出た。 そして生活費の送金を止め、夫の家族カードを凍結し、すべての支払いから自分の名義を外していった。 一か月後、電気も水道も止まった部屋から、裕介の怒鳴り声が届く。 『無職の俺を見捨てる気か! 今すぐ金を振り込め!』 だが綾野は、すでに一冊の調査報告書を手にしていた。 夫が彼女を退職させ、義実家へ閉じ込めようとしたのは、親の介護のためではなかった。 報告書の最初のページに記されていたのは、裕介がどうしても妻に知られたくなかった、ある「金」と「女」の存在だった――。人生逆転|嫁姑|夫婦|介護1.5万字5 816 -
完結第12話
凶悪犯と殺処分寸前の猫
最高警備刑務所で十四年を過ごす凶悪犯アンソニーは、虐待と暗所監禁によって人間を恐れる保護猫オレオを担当する。自分と同じ傷を持つ猫に過去を重ねた彼は、引っかかれても殴り返さず、ただ静かに世話を続けた。 やがてオレオは初めてアンソニーの手を受け入れ、喉を鳴らして胸に身を預ける。その信頼によって彼の凍りついた心も解け始め、猫たちを守ろうとする気持ちは他の受刑者にも広がっていく。罵声や暴力、麻薬が支配していた刑務所では規律違反が激減し、アンソニーには出所後に保護施設で働き、オレオと暮らす未来も示された。 しかし、受刑者を獣と決めつける副所長ミラーは、この変化を認めようとしなかった。猫の導入で麻薬密売の利益を失った囚人スローンと結託し、プログラムを潰すための罠を仕掛ける。消灯後、看守が監視の死角を作る中、アンソニーの独房へ殺鼠剤を染み込ませた毒餌が投げ込まれ、匂いに誘われたオレオが静かに近づいていった。人生逆転|裡の顔|真相1.8万字5 212 -
完結第11話
棺の中で眠る娘と、吠え続けた秋田犬
秋田の豪雪地帯で、七歳の少女・雪の葬儀が営まれていた。ところが愛犬ハチだけは棺に向かって激しく吠え、畳を掻き続ける。周囲が狂犬扱いする中、前妻であり元救命看護師の静子は、棺の内側から聞こえる微かな音と、雪の指先の動きを見逃さなかった。 静子が葬儀を止めて棺を開けると、雪には脈と呼吸が残っていた。静子は的確な応急処置を行い、雪はついに「お母さん」と声を発する。無力だと見下していた静子に娘を救われ、後妻エミリーと父・健一は言葉を失う。 しかし、奇跡の生還で物語は終わらない。救急搬送される娘に付き添いながら、静子は「なぜ雪が猛吹雪の夜、裏山へ出たのか」という疑念を抱く。人生逆転|真実|真相|親子関係1.6万字5 982 -
完結第15話
炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男
正木電気の新人・潮見知夏は、猛暑の中で草むしりを強要され、総務部長・黒岩から執拗な嫌がらせを受けていた。五年ぶりに本社へ戻った滝川武は彼女を救い、腐敗した職場の実態を静かに探り始める。 知夏は書類整理中、解約済みの植栽会社へ毎月五十万円が送金され続けている事実を発見。その直後、地下倉庫へ追放され、ついには炎天下で倒れてしまう。滝川と堀田課長は、黒岩と八谷常務による総額二億三千万円の横領証拠を揃え、臨時役員会を招集する。 そこで滝川が専務執行役員であることが明かされ、帰国した正木社長も黒岩を追及する。職場逆転|因果応報|人生逆転|修羅場2.3万字5 1259 -
完結第13話
黒い着物の誓い
「お前んち、ヤクザだっけ?w なら今すぐ呼んでみろよ」 同窓会の席で、私は昔のいじめ加害者に笑われました。 祖母の形見の黒い着物を見て、 「極道の真似事かよ」 そう言った男は、私の胸元に酒を浴びせたのです。 周囲は笑っていました。 10年前、教室で机に落書きをされた時と同じように。 私は怒りを抑え、ただ1本の電話をかけました。 「5分で来てください」 すると―― ホテルの前に現れたのは、30台の黒塗り高級車。 そして、誰もが知るはずのない私の本当の立場を前に、笑っていた同級生たちは凍りつきました。 しかし、そこで終わりではありませんでした。 床に這いつくばって謝罪する男の背後には、 母親が隠していた「400万円の借金」と、10年前の雨の日に繋がる秘密があったのです。 なぜ私は、私を傷つけた相手を救うことになったのか。 そして、あの日の1万円が、10年後に大きな運命の変化を起こすことになるとは――人生逆転|怒り|真実|修羅場1.9万字5 970 -
完結第15話
300億円の恩返し
結婚式当日、白いタキシードを着て新婦を待っていた琢磨に告げられたのは、「結婚は最初からドッキリだった」という言葉。銀行の創業家である新婦の家族は、彼を笑い者にし、その様子まで動画に撮っていた。 駆けつけた妹の未令は、兄を見下す銀行一家の前で財務担当者に電話をかける。彼女は世界各地で事業を営む企業グループの創業者で、その銀行には約300億円を預けていた。無名だった未令の夢を信じ、借入れの保証人になったのも琢磨だった。人生逆転|兄弟姉妹|真相|修羅場2.2万字5 1132 -
完結第12話
夜勤明け、鍵を替えられた私の静かな反撃
30時間の夜勤を終えて帰宅した看護師・南を待っていたのは、義母によって交換された玄関の鍵だった。「反省したら土下座しに来なさい」という連絡に、南は「そうですか。では、さようなら」とだけ返信する。 だが、義母と無職の夫は知らなかった。その高級マンションは、南の勤務先が契約する借り上げ社宅であり、家賃も生活費もすべて南の収入で支えられていたのだ。 南は騒がず、締め出しを自白したSNS投稿を保存。社宅の退去手続き、電気・水道・ガスの解約、弁護士への離婚依頼を淡々と進める。月曜日の午後5時、部屋の明かりが消え、管理会社と警察が玄関に現れた。 自分を家政婦のように扱った家族との関係を断ち切り、誇りある仕事と人生を取り戻す女性の、静かで痛快な逆転物語。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係1.9万字5 5994