"近道看板の逆襲" 第4話
朝、畑へくと、板が面へ倒れていた。
しかも自然に倒れたのではない。
固定していた部分をされ、脇へ放り投げられていた。
その横には、しいタイヤ痕が残っている。
「またか……」
俺は拳を握った。
昨よりさらにくのトウモロコシが倒れていた。
のが通った跡は、はっきりしている。
「違いないな」
父もため息をついた。
さらに驚いたことに、しれた所に、またしい案内表示がっていた。
今度はきではない。
パソコンで作った文字を印刷し、ラミネート加してある。
国への。
矢印までついている。
「わざわざ作り直したのかよ」
呆れるしかなかった。
普通なら、入禁止の板を見た点で諦める。
それを倒した、自分専用の案内板まで設置する。
どれほど自分勝なのか。
俺はその案内板を撤した。
しかし翌。
また畑が荒らされていた。
案内板も再び設置されている。
今度は黒ではなく、カラー印刷だった。
ラミネートもくなっている。
俺がてた入禁止の板より、わざときく作られていた。
「そこまでして通りたいのか……」
も畑へ来て、倒れたトウモロコシを見つめた。
「浩さん、このタイヤ跡……昨までと違わない?」
言われて見てみると、確かに幅の違うタイヤ痕が混じっていた。
俺はしゃがみ込み、を確認した。
広告
「本当だ」
のだけではない。
別のも通っている。
理由はすぐに分かった。
入に置かれたしい板には、こうかれていた。
ご自由に通ください。
国への。
「ふざけるなよ……」
りで声が震えた。
は自分が通るだけでは飽きらず、のまで誘導し始めたのだ。
「あんな板があったら、らないはだとっちゃうよ」
が困った顔をする。
「そうだよ。これじゃ畑が完全に扱いだ」
「どうする?」
俺は答えられなかった。
板をてても倒される。
カラーコーンを置いてもどけられる。
注しても聞くを持たない。
警察へ相談することも考えた。
だが、この段階ではタイヤ跡と板くらいしか証拠がない。
誰がいつ通ったのかを、俺たちは毎回確認しているわけではなかった。
しかも相はの息子だ。
それが本来どういうも持たないことは分かっている。
だがこので、がそれを権力のように振り回しているのも事実だった。
俺は、せめて作物を守ろうと倒された株を起こしていった。
根元のを寄せ、まだきているものは支柱で固定する。
も隣で伝った。
「腰、痛めないでね」
「ああ」
俺たちは黙々と畑を直した。
収穫できるものがどれだけ残るか分からない。
それでも諦めたくなかった。
夕方くになった頃だった。
「パパ、ママ、ただいま!」
広告
くからキララの声が聞こえた。
娘は自転に乗り、畑のの農をゆっくりんできた。
「お帰り」
がを振った。
そのだった。
くからのエンジン音が響いた。
俺は顔をげた。
嫌なほど聞き覚えのある音だった。
のだ。
しかも速度が速い。
内からの声まで聞こえてきた。
「ちくしょう、にわねえ! あの使えばいな!」
「まさか……」
俺がりしたには、はすでに畑へ入っていた。
「キララ!」
娘の自転がむ先へ、がびしてくる。
が鳴をげた。
「危ない!」
キララも驚いてハンドルを切った。
体と自転が接触し、キララの体が横へ倒れた。
「キララ!」
俺は全力で駆け寄った。
娘は面に座り込み、膝を押さえて泣いていた。
「痛い……」
「丈夫か? キララ、どこが痛い?」
「お膝……」
見ると膝が擦りむけ、血が滲んでいた。
自転の輪もきく歪んでいる。
俺は娘の肩や腕を確認した。
「に痛いところは?」
キララは泣きながら首を振った。
しかし転倒したにどこかをく打っている能性もある。
「、病院へ連れてってくれる?」
「分かった」
「俺はここに残る。警察を呼ぶ」
は娘を抱きげた。
その、はからりてきた。
謝るのかとった。
だが最初にた言葉は、信じられないものだった。
「危ねえじゃねえか! ガキにどんな教育してんだよ!」
俺ので何かが切れた。
「危ないのはそっちでしょう!」
俺はへ向き直った。
「うちの娘に怪をさせて、体どうしてくれるんですか!」
「はあ?」
はまるで自分が被害者のような顔をした。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
退職届を出した夫が、最後の会議で暴いた妻社長の嘘
3年前。 妻・美穂が経営する会社で働いていた健二は、突然退職届を提出した。 理由は、妻の秘書・田中から告げられた一言だった。 「空気を読んで、自分から辞めてください」 愛する妻の会社で、自分だけが邪魔な存在になっていた。 しかし美穂は、田中との関係を否定し続ける。 「彼とは同僚としての関係しかない」 健二が信じていた3年間の結婚生活は、少しずつ崩れていた。 だが退職の日、健二はさらに恐ろしい事実を知る。 自分を追い出すために仕組まれた偽のセクハラ告発。 消された顧客情報。 そして、妻と秘書が隠していた本当の目的。 追い詰められた健二は、最後に残された証拠を手に取る。 音声記録。 社内システムの履歴。 競合会社との裏取引。 すべてを明らかにする場所は――妻の昇進をかけた役員会議だった。 そこで暴かれる、愛していた妻の裏切り。 10年間支えてきた会社も、信じ続けた夫婦の絆も、一瞬で崩れ去る。 そして健二は、何も奪わず、ただ一言だけ告げる。 「もう、昔の俺には戻れない」修羅場2.0萬字5 36 -
完結第13話
10年契約の果てに消えた夫
10年前。 事故で妻と娘を失ったタケシの前に、謎のシステムが現れた。 「別の世界で10年間、ユキとその娘に寄り添えば、失った家族を復活させる」 愛する家族を取り戻すため、タケシは契約を受け入れた。 そして彼は、ユキと幼いヒメのために、すべてを捧げる10年間を過ごした。 しかしユキが愛していたのは、タケシではなく、かつて自分たちを捨てた初恋の相手・シャオだった。 タケシは夫ではなく、都合のいい存在として扱われ続ける。 残り7日で任務が終わる日。 シャオが戻ってきたことで、タケシの最後の居場所は完全に奪われた。 そして彼は、10年間守り続けた家族からも、最後まで信じてもらえなかった。 やがて任務を終えたタケシは、すべてを捨てて元の世界へ帰る。 数年後、真実を知ったユキとヒメは、初めて彼がどれほど傷ついていたのかを理解する。 だが――。 もう彼の隣には、二度と離したくない本当の家族がいた。 10年間の犠牲は愛だったのか。 それとも、ただ失った家族を取り戻すための契約だったのか。修羅場1.9萬字5 18 -
完結第11話
一つの証拠が暴いた8年間の嘘
八年前、誰にも期待されず、孤独な海外勤務へ送られた男――朝倉洋一。 灼熱のインドで技術を磨き、ただひたすら努力を重ねた彼は、八年ぶりに日本へ帰還する。 しかし、待っていたのは栄光ではなく、同僚からの侮辱と冷たい視線だった。 そんな彼の前に現れたのは、かつて突然姿を消した初恋の女性・七瀬美咲。 「契約の鬼」と恐れられる彼女が、なぜ一介の技術者である朝倉だけを選んだのか――。 やがて社内で発生した機密情報流出事件。 犯人に仕立てられ、すべてを失いかけた朝倉を救ったのは、遠い異国で築いた一つの友情だった。 裏切り、嫉妬、そして八年越しの想い。 忘れられた男の本当の価値が、今、世界を変える。因果応報|人生逆転1.7萬字5 97 -
完結第16話
閉ざされた玄関の暗証番号
田園調布の豪邸で暮らす田中勇気と妻・桜。勇気は一人暮らしになった母・澄子を思い、妹の弓とともに同居を始める。しかし、その優しさは次第に家族の境界線を曖昧にしていった。 勇気が海外出張中、桜は高熱で倒れながらも義母の来客対応を強いられる。初めて「できません」と拒んだ彼女に、澄子は怒りを募らせ、桜本人の意思を無視して荷物をまとめ、家から追い出してしまう。 夫に心配をかけまいと黙って耐える桜。しかし異変を感じた勇気は急いで帰国し、隠されていた真実を知る。 妻を守れなかった自分の過ち、そして母が家族への感謝を「支配する権利」と勘違いしていたことに気づいた勇気は、家族の在り方を見直す決断をする。 本当の家族とは何か。愛情と依存の違いを描く、再生と絆の物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4萬字5 13 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 66 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 18 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 4 -
完結第12話
一万八千円の飯
自分の家族が経営する5つ星ホテルで、何気なく注文した一品の炊き込みご飯。 メニューでは1,800円に見えたはずなのに、会計明細には「18,000円」と記されていた。 帰国したばかりの後継者・小川優馬は、単なる表示ミスだと思い責任者を呼ぶ。だが、レストラン責任者は「社長が承認した価格です」と言い切った。 父が守ってきたホテルで、なぜ一杯のご飯が10倍の値段になっているのか。 優馬が調べ始めると、異常な価格変更、不可解な仕入れ、法人客への不自然な請求、そして継母・里見の影が浮かび上がっていく。 やがてその小さな違和感は、20年前に亡くなった実母・秋子の死、奪われた母方の財産、腹違いの弟の秘密、そして恋人だと思っていた女性の正体へとつながっていく。 始まりは、たった一杯の炊き込みご飯だった。 だが、その18,000円の明細は、運海ホテルに隠された20年越しの闇を開く鍵だった――。因果応報|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第12話
寿司屋で暴かれた嫁
68歳の田村節子は、息子の再婚相手である嫁・美咲を、ずっと“よくできた人”だと思っていた。 亡き夫を失い、1人暮らしになった節子の家へ通い、手料理を届け、病院の送り迎えまで申し出てくれる優しい嫁。近所の人たちからも羨ましがられ、節子自身も本当の娘のように感じ始めていた。 しかし、美咲は少しずつ、家の権利書や預金、保険の受取人について尋ねるようになる。 そんなある日、節子は美咲に誘われ、馴染みの寿司屋へ向かった。ところが店主は、美咲の顔を見た瞬間、血相を変えて叫ぶ。 「節子さん、その人から早く逃げてください」 店主の父を騙し、財産を奪った女と同じ顔――。 信じたい気持ちと、拭えない違和感。やがて節子は、嫁の荷物の中から決定的なものを見つけてしまう。 優しい嫁の正体は何者なのか。 そして節子は、息子と家を守るため、静かに反撃を始める。因果応報|相続|親子関係1.7萬字5 5