"近道看板の逆襲" 第5話
「俺は何もしてねえよ。あのガキが勝に転んだだけだろ」
「自転に当たったでしょう!」
「らねえよ。むしろ俺のに傷が入ったじゃねえか」
その言葉を聞き、も顔を変えた。
だが今はキララを病院へ連れてく方が先だ。
「浩さん」
「ああ。お願い」
は娘と緒にそのをれた。
俺はスマートフォンを取りした。
「とにかく警察を呼びます。逃げないでください」
「はいはい」
は余裕の表だった。
しばらくしてパトカーが到着した。
警察官はをりるなりを見て、し驚いたような顔をした。
「ああ、これはさんじゃないですか」
その声に、俺は妙な違を覚えた。
りいなのだろう。
それ自体は田舎のなら珍しくない。
しかし警察官は、に対して必以にが良かった。
「何かあったんですか?」
俺が先に説しようとすると、が割り込んだ。
「こいつの子供が勝にびしてきて、俺のにぶつかったんだよ」
「違います」
俺はすぐ否定した。
「さんがうちの畑を勝ににしていて、今もで入ってきたんです。それで娘の自転に接触しました」
警察官は俺とを交互に見た。
「さん、本当ですか?」
「そんなわけねえだろ。ガキが勝に転んだだけだよ」
「私はこの目で見ていました。そのは妻もいました」
俺は娘の自転を指差した。
広告
「見てください。ホイールが曲がってるでしょう」
警察官は自転を応確認した。
だが、すぐに首を傾げた。
「ただ、これがさんのとの接触で曲がったという証拠はありますか?」
「今そこで起きた事故ですよ」
「そう言われましてもね」
信じられない返答だった。
「じゃあ、の傷と自転を調べれば分かるじゃないですか」
「うーん」
警察官は面倒そうにを掻いた。
「そういうのは、当事者同士で話しってもらえますか」
「当事者同士?」
「民事の部分もありますので」
「でも娘が怪してるんですよ」
「怪についても、まず病院で診てもらってください」
「今、妻が連れてっています」
俺は必に静さを保った。
「そもそもさんが私へ入ってきたこと自体、問題でしょう。何度もやめるよう言っています」
警察官は畑を眺めた。
「それについても、所者同士で……」
「所者は私です。さんじゃありません」
「いや、まあ……」
歯切れが悪い。
方のは、横でにやにやしていた。
「聞いたか? 警察だっておの方じゃねえんだよ」
俺は拳を握った。
はさらに自分のの傷を指差した。
「ちなみに修理代、で請求するからな」
「あなたが勝に畑へ入った結果でしょう」
「俺に逆らうとこうなるんだよ。覚えとけ」
はそう言い残し、へ戻った。
警察官も積極に止めようとはしなかった。
広告
俺はち尽くした。
悔しかった。
娘が目ので怪をした。
畑も何度も荒らされている。
それなのに「証拠がない」の言で終わらされる。
しばらくして病院からの連絡が来た。
幸いキララは膝の擦り傷がで、きな怪はなかった。
それを聞いて、俺はようやく息を吐いた。
しかしと同にりがこみげた。
もし接触の仕方がし違っていたら。
もし娘がのへ倒れていたら。
考えるだけで背筋がたくなる。
族を危険にさらされて、それでも黙っているわけにはいかなかった。
警察が証拠を求めるなら、証拠を残すしかない。
そのの夜、俺は父へ相談した。
虎之助は黙って話を聞いていたが、最にい声で言った。
「に連絡しよう」
「でも、入院だろ」
「だから今まで慮してたんだ。だが、もうそんなことを言ってるじゃない」
父はと同級だ。
個な連絡先もっている。
「息子のことだからこそ、本にらせた方がいい」
俺も頷いた。
翌、父を通してへ事を伝えた。
何度も畑へ侵入されていること。
入禁止の板を撤されたこと。
のまで誘導する板を置かれたこと。
そしてキララが怪をしたこと。
話の向こうで、はい沈黙していたという。
「本当にがそんなことを?」
最初は信じられない様子だった。
だが俺は、1つ提案した。
「証拠を集めさせてください」
は、きっと今も畑へ入ってくる。
そこで畑の入りが分かる所へ防犯カメラを設置する。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
退職届を出した夫が、最後の会議で暴いた妻社長の嘘
3年前。 妻・美穂が経営する会社で働いていた健二は、突然退職届を提出した。 理由は、妻の秘書・田中から告げられた一言だった。 「空気を読んで、自分から辞めてください」 愛する妻の会社で、自分だけが邪魔な存在になっていた。 しかし美穂は、田中との関係を否定し続ける。 「彼とは同僚としての関係しかない」 健二が信じていた3年間の結婚生活は、少しずつ崩れていた。 だが退職の日、健二はさらに恐ろしい事実を知る。 自分を追い出すために仕組まれた偽のセクハラ告発。 消された顧客情報。 そして、妻と秘書が隠していた本当の目的。 追い詰められた健二は、最後に残された証拠を手に取る。 音声記録。 社内システムの履歴。 競合会社との裏取引。 すべてを明らかにする場所は――妻の昇進をかけた役員会議だった。 そこで暴かれる、愛していた妻の裏切り。 10年間支えてきた会社も、信じ続けた夫婦の絆も、一瞬で崩れ去る。 そして健二は、何も奪わず、ただ一言だけ告げる。 「もう、昔の俺には戻れない」修羅場2.0萬字5 36 -
完結第13話
10年契約の果てに消えた夫
10年前。 事故で妻と娘を失ったタケシの前に、謎のシステムが現れた。 「別の世界で10年間、ユキとその娘に寄り添えば、失った家族を復活させる」 愛する家族を取り戻すため、タケシは契約を受け入れた。 そして彼は、ユキと幼いヒメのために、すべてを捧げる10年間を過ごした。 しかしユキが愛していたのは、タケシではなく、かつて自分たちを捨てた初恋の相手・シャオだった。 タケシは夫ではなく、都合のいい存在として扱われ続ける。 残り7日で任務が終わる日。 シャオが戻ってきたことで、タケシの最後の居場所は完全に奪われた。 そして彼は、10年間守り続けた家族からも、最後まで信じてもらえなかった。 やがて任務を終えたタケシは、すべてを捨てて元の世界へ帰る。 数年後、真実を知ったユキとヒメは、初めて彼がどれほど傷ついていたのかを理解する。 だが――。 もう彼の隣には、二度と離したくない本当の家族がいた。 10年間の犠牲は愛だったのか。 それとも、ただ失った家族を取り戻すための契約だったのか。修羅場1.9萬字5 16 -
完結第11話
一つの証拠が暴いた8年間の嘘
八年前、誰にも期待されず、孤独な海外勤務へ送られた男――朝倉洋一。 灼熱のインドで技術を磨き、ただひたすら努力を重ねた彼は、八年ぶりに日本へ帰還する。 しかし、待っていたのは栄光ではなく、同僚からの侮辱と冷たい視線だった。 そんな彼の前に現れたのは、かつて突然姿を消した初恋の女性・七瀬美咲。 「契約の鬼」と恐れられる彼女が、なぜ一介の技術者である朝倉だけを選んだのか――。 やがて社内で発生した機密情報流出事件。 犯人に仕立てられ、すべてを失いかけた朝倉を救ったのは、遠い異国で築いた一つの友情だった。 裏切り、嫉妬、そして八年越しの想い。 忘れられた男の本当の価値が、今、世界を変える。因果応報|人生逆転1.7萬字5 95 -
完結第16話
閉ざされた玄関の暗証番号
田園調布の豪邸で暮らす田中勇気と妻・桜。勇気は一人暮らしになった母・澄子を思い、妹の弓とともに同居を始める。しかし、その優しさは次第に家族の境界線を曖昧にしていった。 勇気が海外出張中、桜は高熱で倒れながらも義母の来客対応を強いられる。初めて「できません」と拒んだ彼女に、澄子は怒りを募らせ、桜本人の意思を無視して荷物をまとめ、家から追い出してしまう。 夫に心配をかけまいと黙って耐える桜。しかし異変を感じた勇気は急いで帰国し、隠されていた真実を知る。 妻を守れなかった自分の過ち、そして母が家族への感謝を「支配する権利」と勘違いしていたことに気づいた勇気は、家族の在り方を見直す決断をする。 本当の家族とは何か。愛情と依存の違いを描く、再生と絆の物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4萬字5 13 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 66 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 18 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 4 -
完結第12話
一万八千円の飯
自分の家族が経営する5つ星ホテルで、何気なく注文した一品の炊き込みご飯。 メニューでは1,800円に見えたはずなのに、会計明細には「18,000円」と記されていた。 帰国したばかりの後継者・小川優馬は、単なる表示ミスだと思い責任者を呼ぶ。だが、レストラン責任者は「社長が承認した価格です」と言い切った。 父が守ってきたホテルで、なぜ一杯のご飯が10倍の値段になっているのか。 優馬が調べ始めると、異常な価格変更、不可解な仕入れ、法人客への不自然な請求、そして継母・里見の影が浮かび上がっていく。 やがてその小さな違和感は、20年前に亡くなった実母・秋子の死、奪われた母方の財産、腹違いの弟の秘密、そして恋人だと思っていた女性の正体へとつながっていく。 始まりは、たった一杯の炊き込みご飯だった。 だが、その18,000円の明細は、運海ホテルに隠された20年越しの闇を開く鍵だった――。因果応報|修羅場1.7萬字5 0 -
完結第12話
寿司屋で暴かれた嫁
68歳の田村節子は、息子の再婚相手である嫁・美咲を、ずっと“よくできた人”だと思っていた。 亡き夫を失い、1人暮らしになった節子の家へ通い、手料理を届け、病院の送り迎えまで申し出てくれる優しい嫁。近所の人たちからも羨ましがられ、節子自身も本当の娘のように感じ始めていた。 しかし、美咲は少しずつ、家の権利書や預金、保険の受取人について尋ねるようになる。 そんなある日、節子は美咲に誘われ、馴染みの寿司屋へ向かった。ところが店主は、美咲の顔を見た瞬間、血相を変えて叫ぶ。 「節子さん、その人から早く逃げてください」 店主の父を騙し、財産を奪った女と同じ顔――。 信じたい気持ちと、拭えない違和感。やがて節子は、嫁の荷物の中から決定的なものを見つけてしまう。 優しい嫁の正体は何者なのか。 そして節子は、息子と家を守るため、静かに反撃を始める。因果応報|相続|親子関係1.7萬字5 5