"「子なし」離婚の大誤算" 第3話
緊張がほどける瞬。
そういう「本当の顔」を撮る。
それが私の写真だった。
数には雑誌や広告の仕事も増えた。
アシスタントを雇い、写真館を広げた。
陸が6歳になる頃、私たちは神田の根裏部をた。
しいまいは、京部のマンションだった。
昔の私なら賃を聞くだけで息をんだような所だったが、その頃には無理なく支払えるようになっていた。
陸は京でも評判の私国際学に格した。
入学通を見た、私は何度も読み返した。
「ママ、受かった?」
そうに聞く陸を抱きしめた。
「受かったよ。陸、すごい」
陸は嬉しそうに笑った。
私はその笑顔を見ながら、これまでのをった。
同じ頃、渡辺健は融業界で急速に名をげていた。
吹投資。
彼の会社は拡を続け、健は経済誌やニュースに頻繁に登する物になっていた。
桜井美咲とのには娘もまれたと聞いた。
私は記事を目にしても、すぐに閉じた。
彼は彼の世界。
私は私の世界。
2本の平線のように、度と交わることはない。
そうっていた。
婚から10。
陸の学卒業式の招待状が届くまでは。
招待状には、陸が優秀徒代表に選ばれたとかれていた。
私は何度もその文字を見た。
陸。
6歳で入学したさな男の子が、卒業代表として台につ。
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卒業式の夜、私は陸の礼をえた。
いシャツにネクタイ。
鏡のにたせ、何度も襟を直した。
「ママ、そんなに緊張しなくても丈夫だよ」
陸が笑った。
10歳になった顔は、幼い頃より輪郭がはっきりしていた。
そして齢をねるほど、健に似てきた。
同じ眉の形。
同じ筋。
特に真剣に何かを考えているの目元は、驚くほど似ていた。
私はシャツにしない皺を伸ばしながら言った。
「はあなたにとっても、ママにとっても事なだから」
「僕の写真、いっぱい撮る?」
「もちろん」
私は陸の髪を軽く撫でた。
「ママが番かっこいい姿を全部残してあげる」
その夜、陸が眠った、私はいけていなかった箱を取りした。
には健との結婚写真が入っていた。
写真の私は、本当に幸せそうに笑っていた。
隣にいる健も微笑んでいる。
けれど今の私が見ると、その笑顔にはどこか距があった。
そのには、10の婚協議もあった。
健の乱暴な署名。
「婚姻の子なし」
私はそれを見つめ、ゆっくり箱を閉じた。
翌。
卒業式の会は、朝から華やかな雰囲気に包まれていた。
京でも名な私だけあり、集まった保護者には企業の経営者や著名もなくなかった。
私は保護者席ではなく、学から依頼された撮担当として台脇の撮エリアにいた。
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首から「招待写真」の名札をげ、望レンズを台へ向ける。
の挨拶が始まった。
私は撮しながら、折客席を確認した。
そのだった。
会方の扉がき、空気が変した。
黒いスーツ姿の警護担当者らしい男たちがを作った。
そのを、1の男が入ってきた。
渡辺健。
10ぶりだった。
以より体格がよくなり、髪型も落ち着いている。
級スーツを着こなし、々へ笑顔で頷きながら歩く姿には、企業を率いる男の自信があった。
方に座っていた何かの保護者がすぐにちがった。
も健の到着を確認すると、挨拶をめにまとめた。
「本の名誉理事でもあり、教育活をご支援くださっております吹投資代表、渡辺健様をご紹介いたします」
きな拍が起きた。
健は最列に座った。
私の位置からは、横顔までよく見えた。
彼はこちらに気づいていない。
私は静かにシャッターを切った。
やがてが、さらにきな発表をした。
「このたび渡辺代表より、本の図館および研究設備拡充のため、5億円のご寄付をいただくこととなりました」
会が気に沸いた。
健は台へがり、マイクを握った。
未来への投資。
若い世代への責任。
教育こそ社会を変える。
そんな言葉を堂々と語った。
私はファインダー越しに見ていた。
10、私にカードを投げつけた男が、今は々から称賛されている。
けれど議とりはなかった。
ただ、というものの奇妙さをじていた。
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