"20億追放妻の封筒逆転" 第10話
と言った。
そのたびに助産師が。
「もうしよ」
と励ましてくれた。
何経ったか分からなくなった頃。
突然。
さな泣き声が聞こえた。
その瞬。
全ての音がくなった。
「男の子ですよ」
胸のに乗せられたさな体。
赤くて。
しわくちゃで。
目を閉じたまま泣いている。
私は指先で頬に触れた。
「こんにちは」
声にならなかった。
涙だけがた。
5。
子どもができない自分を責めた。
夫に裏切られ。
から追いされ。
20億円と引き換えに過を切った。
でも。
その全ての先に。
このさな命がいた。
私は息子を「湊」と名づけた。
誰かのを継ぐためではない。
どこへっても。
戻る所を自分で見つけられるになってほしかったから。
産報告は。
希と野寺弁護士。
そして健也へ送った。
《今、男の子がまれました。母子ともに無事です》
写真は送らなかった。
30分。
健也から返信が来た。
《会いにってもいい?》
私はしばらく考えた。
そして。
《今すぐは無理。しをください》
と返した。
翌。
野寺から話があった。
「に伴って、信託管理側へ通が必です」
「分かりました」
「それから」
彼女の声がし変わった。
「健也さん側から、父子関係について異議はないとの面がています」
私は驚いた。
「認めたんですか?」
「はい。治療記録も確認したようです」
「そうですか」
議な気分だった。
広告
嬉しいわけではない。
ただ。
しだけした。
湊のを否定されることはない。
週。
健也がメルボルンへ来た。
病院ではなく、退院のアパート。
彼は玄関ので。
「入っていい?」
と尋ねた。
以なら。
自分のだった所へ当然のように入ってきた男が。
今は私の許を待っている。
「どうぞ」
湊はベビーベッドで眠っていた。
健也はづいた。
顔を見た瞬。
けなくなった。
「……さいな」
「まれたばかりだから」
「抱いていい?」
私はし迷ったあと。
頷いた。
健也は驚くほどぎこちないつきで湊を抱いた。
腕ので息子がしくと。
彼の目から涙が落ちた。
「ごめん」
またその言葉。
でも今度は。
私にではなく。
湊へ言っているように聞こえた。
「この子に謝るなら」
私は言った。
「これからので見せて」
健也は頷いた。
「分かってる」
「美奈さんとの式、来でしょう」
腕が止まった。
「うん」
「結婚するの?」
「……たぶん」
私は苦笑した。
「たぶんって何」
「結菜」
健也は湊をベッドへ戻したあと。
私を見た。
「検査結果、本当にまだけてない」
「まだ?」
「けるつもりだった。でも」
「怖いんでしょう」
「うん」
私はらなかった。
もう彼を変えようとはっていない。
「それもあなたの選択」
「もし」
健也が言った。
「もし、双子が僕の子じゃなかったら」
私は静かに聞いた。
「何?」
「君と湊のところへ」
「来ないで」
健也が固まった。
私は続けた。
広告
「美奈さんとの子が違ったからって、私たちがやり直せるわけじゃない」
「でも」
「あなたが私を裏切ったことも、黙って私だけを妊の原因にしたことも、全部消えない」
健也は俯いた。
「私は今、あなたを憎んでない」
そう言うと。
彼が顔をげた。
「でも、してもいない」
それが。
私の本当の答えだった。
健也と美奈の結婚式当。
京はつないだった。
都内の級ホテルには朝から黒塗りのが次々と到着し、斎藤グループの取引先や財界関係者がロビーへ集まっていた。式の様子は部メディアにも公される予定で、ホテル側は専用の警備まで用していた。
美奈は双子を産してからヶ余り。
産とはえないほど華やかなウェディングドレスを着ていた。
控では義母が満そうにその姿を見ていた。
「本当に綺麗よ、美奈さん」
美奈は鏡のの自分へ微笑んだ。
「ありがとうございます、お母様」
その呼び方に。
義母も笑った。
方。
別にいた健也は。
ほとんど笑っていなかった。
数から眠れていなかった。
机の引きしには。
まだ封していないDNA検査結果の封筒が入っている。
自分で申し込んだ検査。
自分の腔粘膜。
双子の検体。
結果はすでに届いている。
でも。
けられなかった。
けなくても。
今を迎えれば。
何もなかったことにできる気がしていた。
そんな健也の元へ。
田がやってきた。
「坊ちゃま」
「何?」
「こちらを」
きない封筒。
差は。
斎藤族信託法律事務所。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
一杯の鍋が変えた人生
柏優太は、職場でのパワハラが原因で心を壊し、半年間ほとんど誰とも話さず部屋に閉じこもっていた。 そんなある日、隣に引っ越してきた母子3人の姿を見かける。 「何も買えなくてごめんね」と泣く母親と、空腹を我慢する子供たち。 過去に大切な友人を救えなかった後悔を抱えていた優太は、思わず声をかける。 「よかったら……うちで鍋しませんか」 一杯の鍋をきっかけに、孤独だった男と傷ついた母子の人生が少しずつ変わり始める。 しかし、温かな時間の裏には、母親が隠していた過去と、子供たちを取り戻そうとする元夫の存在があった。 誰かを救おうとした優太が、実は自分自身も救われていた――。 小さな優しさから始まった、再生と家族の物語。人生逆転|第二の人生|親子関係2.2萬字5 149 -
完結第11話
一つの証拠が暴いた8年間の嘘
八年前、誰にも期待されず、孤独な海外勤務へ送られた男――朝倉洋一。 灼熱のインドで技術を磨き、ただひたすら努力を重ねた彼は、八年ぶりに日本へ帰還する。 しかし、待っていたのは栄光ではなく、同僚からの侮辱と冷たい視線だった。 そんな彼の前に現れたのは、かつて突然姿を消した初恋の女性・七瀬美咲。 「契約の鬼」と恐れられる彼女が、なぜ一介の技術者である朝倉だけを選んだのか――。 やがて社内で発生した機密情報流出事件。 犯人に仕立てられ、すべてを失いかけた朝倉を救ったのは、遠い異国で築いた一つの友情だった。 裏切り、嫉妬、そして八年越しの想い。 忘れられた男の本当の価値が、今、世界を変える。因果応報|人生逆転1.7萬字5 123 -
完結第13話
余命半年からの再出発
余命を告げられた日、夫は離婚届を置き、息子も「必要なことがあったら連絡して」と距離を置いた。 58歳の桐谷佳代子は、病気だけでなく、33年間築いてきた家族まで同時に失った。 誰もいない台所で一人分の味噌汁を作りながら、絶望の中にいた佳代子だったが、病院で出会った人々との縁をきっかけに、少しずつ自分の人生を取り戻していく。 治療、離婚、家を失う危機。 それでも彼女は、針と糸を手に取り、病気と向き合う人のための帽子作りを始める。 家族に必要とされることでしか自分の価値を感じられなかった女性が、人生のどん底から見つけた本当の生き方とは――。人生逆転|夫婦|第二の人生2.0萬字5 254 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 69 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 24 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 5 -
完結第12話
一万八千円の飯
自分の家族が経営する5つ星ホテルで、何気なく注文した一品の炊き込みご飯。 メニューでは1,800円に見えたはずなのに、会計明細には「18,000円」と記されていた。 帰国したばかりの後継者・小川優馬は、単なる表示ミスだと思い責任者を呼ぶ。だが、レストラン責任者は「社長が承認した価格です」と言い切った。 父が守ってきたホテルで、なぜ一杯のご飯が10倍の値段になっているのか。 優馬が調べ始めると、異常な価格変更、不可解な仕入れ、法人客への不自然な請求、そして継母・里見の影が浮かび上がっていく。 やがてその小さな違和感は、20年前に亡くなった実母・秋子の死、奪われた母方の財産、腹違いの弟の秘密、そして恋人だと思っていた女性の正体へとつながっていく。 始まりは、たった一杯の炊き込みご飯だった。 だが、その18,000円の明細は、運海ホテルに隠された20年越しの闇を開く鍵だった――。因果応報|修羅場1.7萬字5 11