"特大おにぎりの恩返し" 第3話
はそれで終わるはずだった。
だが数。
休みに俺が何気なく言った言で。
亜美の「忘れた」という言葉が、嘘だったことをった。
「亜美って、と忘れん坊なんだな」
休み、いつものように数で机を囲んでいただった。俺はのことをいし、いもなく笑った。
「弁当忘れるって、普通ないだろ」
健太も「確かに」と笑った。ところが亜美だけは笑わず、机の傷を指でなぞりながら黙っていた。
「何だよ」
俺が聞くと、亜美は周囲を度確認し、さな声で言った。
「忘れたんじゃないよ」
「え?」
「作ってもらえなかったの」
が分からなかった。
「寝坊したの?」
「違う」
亜美はし笑った。
「お母さん、朝いないこといから」
仕事で帰宅が遅いのだろうと、俺は勝に理解した。だが話を聞くうちに、それほど単純ではないことが分かってきた。
母親は数帰ってこないことがあった。蔵庫にべ物がないもく、亜美は菓子パンやスナック菓子で空腹をしのいでいた。ガスや気が止まることもあり、夜は布団へ入って眠るしかないもあったという。
「じゃあ晩飯は?」
「ないはべない」
「朝は?」
「べない」
「腹減るだろ」
「学来たらあるから」
亜美は笑った。
「だから私、おかわりいでしょ」
その瞬。
俺ので今までの景が全部変わった。
カレーのおかわりへっていた亜美。
広告
余ったパンを欲しがった亜美。
プリンを賭けて本気でじゃんけんをしていた亜美。
俺はずっと同じいしん坊だとっていた。
違った。
俺にとっては、でもべられるののだった。
亜美にとっては。
確実にべられる、ほとんど唯の事だった。
「じゃあ俺……」
急に怖くなった。
「おかわり、亜美より取ってたじゃん」
「勝負でしょ」
「でも」
「丈夫だよ」
亜美は笑った。
「雅君が本気でじゃんけんしてくれるから楽しかったもん。かわいそうって顔されるより、そっちのほうが好き」
に帰った俺は、そのの夕をにしても箸がまなかった。
焼き魚。
噌汁。
ほうれんの胡麻え。
炊きたてのご飯。
俺にとって当たりだった卓が、そのだけ異様に豪華に見えた。
「どうしたの、雅。でもある?」
母に聞かれ、俺はい切って話した。
「友達、うちで晩飯べちゃ駄目?」
父と祖父母が斉にこちらを見る。
「誰?」
「亜美。のいつも俺と勝負する子」
静の表が変わった。
「あのの子かい」
俺は頷き、っていることを全部話した。
母親が帰ってこない。
べ物がない。
朝も夜もべないことがある。
聞き終わると、卓がしばらく静かになった。
最初にをいたのは祖母だった。
「、連れておいで」
「いいの?」
「子供増えたくらいで米はなくならないよ」
広告
祖父も聞を畳んだ。
「魚なら俺が釣ってくる。野菜は畑に余るほどある」
母はし配そうだった。
「本当は学に相談したほうがいい話だけど……まず、ご飯はべさせてあげよう」
父も頷いた。
「雅。おが勝にかわいそう扱いするなよ。本が来たいって言ったら連れてこい」
翌。
俺は亜美に言った。
「今、うち来る?」
「なんで?」
「飯う」
「え?」
「ばあちゃんが来いって」
亜美は困ったように笑った。
「悪いよ」
「俺の、飯余ってるから」
本当は余っていなくても祖母なら作っただろう。けれど子供の俺には、それが番亜美を傷つけない言い方だとった。
最初の。
亜美は玄関で「お邪魔します」と何度もをげた。
卓には唐揚げ、ちらし寿司、焼き魚、噌汁。それに祖母の梅干しおにぎりまで並んでいた。
「好きなだけべなさい」
静が言う。
亜美は最初、慮して唐揚げを個だけ取った。
だがべると。
目のが変わった。
「おいしい……」
「まだあるよ」
母が皿をづける。
「本当に?」
「何個でも」
そのの亜美は。
唐揚げを6個べた。
ちらし寿司を2杯。
噌汁をおかわりし。
最に梅干しおにぎりまでべた。
祖父は「雅よりべるな」と笑いし、俺は本気で悔しかった。
それから亜美は週に何度か、うちへ来るようになった。
しずつ頬がふっくらし。
笑う回数も増えた。
ところががづいた頃。
俺たちは。
べ物より刻なことに気づいた。
11に入った頃から、教で亜美を避ける子が始めた。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
一杯の鍋が変えた人生
柏優太は、職場でのパワハラが原因で心を壊し、半年間ほとんど誰とも話さず部屋に閉じこもっていた。 そんなある日、隣に引っ越してきた母子3人の姿を見かける。 「何も買えなくてごめんね」と泣く母親と、空腹を我慢する子供たち。 過去に大切な友人を救えなかった後悔を抱えていた優太は、思わず声をかける。 「よかったら……うちで鍋しませんか」 一杯の鍋をきっかけに、孤独だった男と傷ついた母子の人生が少しずつ変わり始める。 しかし、温かな時間の裏には、母親が隠していた過去と、子供たちを取り戻そうとする元夫の存在があった。 誰かを救おうとした優太が、実は自分自身も救われていた――。 小さな優しさから始まった、再生と家族の物語。人生逆転|第二の人生|親子関係2.2萬字5 174 -
完結第11話
一つの証拠が暴いた8年間の嘘
八年前、誰にも期待されず、孤独な海外勤務へ送られた男――朝倉洋一。 灼熱のインドで技術を磨き、ただひたすら努力を重ねた彼は、八年ぶりに日本へ帰還する。 しかし、待っていたのは栄光ではなく、同僚からの侮辱と冷たい視線だった。 そんな彼の前に現れたのは、かつて突然姿を消した初恋の女性・七瀬美咲。 「契約の鬼」と恐れられる彼女が、なぜ一介の技術者である朝倉だけを選んだのか――。 やがて社内で発生した機密情報流出事件。 犯人に仕立てられ、すべてを失いかけた朝倉を救ったのは、遠い異国で築いた一つの友情だった。 裏切り、嫉妬、そして八年越しの想い。 忘れられた男の本当の価値が、今、世界を変える。因果応報|人生逆転1.7萬字5 136 -
完結第12話
DNA鑑定が暴いた元夫の大きな間違い
出産直後、山野リサは義母から「生まれた娘は本当に息子の子なのか」と身に覚えのない不貞を疑われ、さらに夫・ただしからも信頼を裏切る言葉を浴びせられる。DNA鑑定で親子関係が証明されても、二人は過ちを認めず、リサと幼い娘カナを家から追い出してしまう。 絶望の中、実家へ戻ったリサは両親の支えを受け、母として娘を守る決意を固める。努力を重ねてキャリアを築き、カナと共に幸せな人生を歩んでいた。 8年後、華やかな企業パーティーで再会したのは、落ちぶれた元夫と元義母だった。一方、成長したカナは優秀な少女へと成長し、リサには新たな人生を共に歩む大切な存在がいた。 かつて母娘を捨てた二人は後悔し、許しを求める。しかし、リサは過去に向き合い、毅然と決別する。 愛する娘を守り抜いた一人の母が、傷を乗り越え、本当の家族と幸せを手に入れる再生の物語。嫁姑|真相1.8萬字5 110 -
完結第13話
余命半年からの再出発
余命を告げられた日、夫は離婚届を置き、息子も「必要なことがあったら連絡して」と距離を置いた。 58歳の桐谷佳代子は、病気だけでなく、33年間築いてきた家族まで同時に失った。 誰もいない台所で一人分の味噌汁を作りながら、絶望の中にいた佳代子だったが、病院で出会った人々との縁をきっかけに、少しずつ自分の人生を取り戻していく。 治療、離婚、家を失う危機。 それでも彼女は、針と糸を手に取り、病気と向き合う人のための帽子作りを始める。 家族に必要とされることでしか自分の価値を感じられなかった女性が、人生のどん底から見つけた本当の生き方とは――。人生逆転|夫婦|第二の人生2.0萬字5 275 -
完結第14話
返されなかった合鍵
25年間、誰にも知られず借り続けられていた203号室。 夫の葬儀の日、見知らぬ女性から渡された一本の合鍵が、妻・千鶴の人生を大きく揺さぶる。 亡き夫はなぜ、家族に隠れて古い部屋を借りていたのか。 そこに残されていたのは、31本のカセットテープと、一人の少女の思い出だった。 最初は裏切りだと思った秘密。 しかし調べるほどに明らかになる、夫が25年前に背負った約束と、誰にも話せなかった苦悩。 守ることと、信じること。 家族を思う気持ちと、誰かを救おうとする気持ちは、時にすれ違ってしまう。 一つの合鍵から始まった真実の先で、千鶴が見つけたものとは――。人生逆転|相続|修羅場2.0萬字5 71 -
完結第12話
泥まみれの客と黒塗り5台
土砂降りの夜、タクシー運転手の佐藤美咲は、泥だらけで道端に立ち尽くす1人の老人を見つけた。 他のタクシーは、車が汚れることを嫌って次々と通り過ぎていく。中には、老人をあざ笑い、泥水まで浴びせて走り去る運転手もいた。 月末までにノルマを達成できなければクビ。幼い娘の手術を控え、仕事を失うわけにはいかない美咲も、一瞬だけ迷った。 それでも彼女は車を止める。 「シートなんて洗えばいいんです」 そう言って老人を乗せ、傘を差し、温かい缶コーヒーを手渡した。 しかし翌朝、美咲を待っていたのは、汚された車両と突然の解雇通告だった。 泣き崩れる彼女の前に、5台の黒塗りの車が営業所へ現れる。 昨日の泥だらけの老人は、いったい何者だったのか。 たった1本の缶コーヒーが、彼女の人生を大きく変えていく――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 27 -
完結第12話
200円の家族
23歳の大学生・高橋翔太は、感情を捨てたように生きていた。 友人の誘いも断り、食事も会話もすべてを「合理的かどうか」で判断する日々。そんな彼が、ある日ファミレスで会計できずに困っている母子と出会う。 所持金は300円。小さな娘を連れた母親は、夫に貯金を持ち逃げされ、住む場所さえ失っていた。 翔太は不足分の200円を支払い、さらに母子を自分の部屋へ連れて帰る。最初はただの合理的な判断。そのはずだった。 しかし、温かい手料理、少女の「ありがとう」、そして夜中に聞こえた小さな泣き声が、5年間閉ざしていた翔太の心を少しずつ揺らしていく。 なぜ彼は笑わなくなったのか。 なぜ「感情は判断を誤らせる」と言い続けるのか。 助けたはずの母子との出会いは、やがて翔太自身が封じ込めてきた過去を呼び覚ましていく――。因果応報|人生逆転1.9萬字5 5 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 2 -
完結第13話
名刺一枚の逆転縁談
美容師として働く藤井まなみは、恋人・桜庭優馬からプロポーズを受け、結婚を決意する。 しかし、優馬の両親は最初からまなみを見下していた。服装、髪色、職業、そして実家のことまで決めつけ、「うちの息子とは釣り合わない」と一方的に別れを迫ってくる。 迎えた両家顔合わせの日。 港区のタワーマンション暮らしを誇る優馬の父は、まなみの父が「スーパーで働いている」と聞いた途端、露骨に笑った。 「スーパー勤めのお父さんでは、家柄がねぇ」 その場で結婚をなかったことにしようとする桜庭家。まなみは悔しさに言葉を失うが、父は最後まで穏やかな表情を崩さなかった。 そして静かに、1枚の名刺を差し出す。 それを受け取った瞬間、優馬の父の顔色が変わった。 見下していた“スーパー勤めの父”の本当の正体とは。 家柄や肩書きで人を判断した家族が、たった1枚の名刺で言葉を失う――痛快な逆転劇。人生逆転|裡の顔2.0萬字5 8 -
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 9