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完結第8話
鳴らなかったホイッスル
1988年、紅葉シーズンの箱根峠で、23歳の女性バスガイド・高橋美咲が突然姿を消した。 乗客確認のために濃い霧の中へ降りた彼女は、そのまま戻らなかった。警察は生活苦による失踪と判断したが、高校生だった弟・健二だけは、姉が自分を置いて消えるはずがないと信じ続けていた。 それから15年後。 台風で崩れかけた休憩所の擁壁から、髪の毛が絡みついた「ちぎれたホイッスルの紐」が見つかる。それは、美咲が仕事中に首から下げていたものと酷似していた。 姉は本当に自ら姿を消したのか。 霧の夜に響いた鈍い音、消された運行記録、事件直後に退職した運転手。 15年間封じ込められていた峠の秘密が、冷たい擁壁の隙間から静かに姿を現し始める。ミステリー|行方不明1.1萬字5 86 -
完結第7話
水槽裏の金歯
2002年、ワールドカップで街が沸いていた夜。築地の海鮮居酒屋で開かれた積立会の宴会中、400万円を受け取った魚屋の妻・鈴木恵子が突然姿を消した。 最後に見られたのは、黒いバッグを抱えてトイレへ向かう後ろ姿。財布も携帯も残らず、彼女はそのまま築地の夜から消えた。 夫の健一は「妻は逃げるような女じゃない」と訴え続けたが、ギャンブル癖と夫婦喧嘩の噂から疑いの目を向けられる。さらに、店長の証言と積立会の代表・高橋義子の涙ながらの話によって、事件は“夫から逃げた家出”として処理されてしまう。 それから8年後。 閉店した海鮮居酒屋の改修工事中、水槽裏の排水管から、泥にまみれた小さな金歯が見つかる。 それは、失踪した恵子の前歯にあったものだった。 なぜ金歯は、彼女が出て行ったはずの店の排水管に残されていたのか。 誰が嘘をつき、誰が真実を隠したのか。 400万円の積立金、秘密の帳簿、そして市場で「姉御」と呼ばれた女。 8年間沈黙していた築地の闇が、一本の排水管から静かに暴かれていく。ミステリー|行方不明1.1萬字5 55 -
完結第13話
梅の下に眠る不動産王
1995年、東京に50棟のビルを持つ不動産王・宇井源一郎が、ある夜突然姿を消した。 会長室には、読みかけの新聞、置き忘れた老眼鏡、そして冷え切った一杯のお茶だけが残されていた。専属運転手を帰し、「今日は歩いて帰る」と告げたのを最後に、彼の行方は分からなくなる。 誘拐、逃亡、裏社会との関係――。世間はさまざまな噂を立てたが、身代金の要求もなく、遺体も見つからないまま事件は迷宮入りしていく。 それから8年後。 山形の小さな町で亡くなった元駐在巡査の遺品から、1冊の古い手帳が見つかる。そこには、失踪当日の朝、宇井源一郎がある古い墓の前に立っていたという、たった1行の記録が残されていた。 なぜ東京の不動産王は、誰も知らない山あいの墓地にいたのか。 そして、その墓に刻まれていた名前は、彼の人生そのものを揺るがすものだった。 8年間、会長室に残された冷えたお茶の謎を忘れられなかった刑事が、封じられた過去へとたどり着く。ミステリー|行方不明1.9萬字5 74 -
完結第10話
兄の嘘、妹のリボン
2014年11月、再開発予定地の暗い路地で、17歳の女子高生・中村幸が遺体となって発見された。 自宅まで残りわずか100m。彼女の手には、兄への誕生日プレゼントが固く握られていた。 警察は当初、現場付近にいた前科のある男を疑う。だが捜査は決定打を欠き、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていった。 誰よりも妹を思い、涙ながらに情報提供を呼びかけていた兄・拓也。家族も町の人々も、彼だけは疑わなかった。 しかし4年後、取り壊し前の家から封印された一通の封筒が見つかる。 そこに隠されていたのは、兄が守り続けた大きな嘘だった。 最後まで兄を信じていた妹は、なぜ家のすぐ近くで命を奪われたのか。 リボンの結び目に残された小さな痕跡が、誰も見ようとしなかった真実を暴き出す――。ミステリー|行方不明1.4萬字5 248 -
完結第9話
午後4時の失踪日記
1998年8月15日、夏の白浜海水浴場で、大学生の佐藤健二が忽然と姿を消した。 友人たちが海で遊んでいる間、健二は1人で荷物番をしていたはずだった。だが戻ってきた時、敷物の上に残されていたのは、揃えられた運動靴と読みかけの専門書だけ。本人の姿も、鞄も、どこにもなかった。 事故なのか、自ら消えたのか、それとも誰かに呼び出されたのか。 手がかりのないまま、家族の時間は止まり、事件は長い沈黙の中へ埋もれていく。 それから12年後。 白浜町の小さな中古品店で、健二の学生証が入った古い鞄が見つかる。さらに内ポケットから出てきた日記には、失踪直前の彼が抱えていた“ある人物”との金銭トラブルが記されていた。 日記に何度も登場する謎の頭文字「K」。 そして最後のページに残された一文。 〈今日、全てが決まるだろう〉 午後4時、健二は誰と会い、何を決めようとしていたのか。 12年後に見つかった日記が、消えた大学生の夏を再び動かし始める。ミステリー|行方不明1.3萬字5 804 -
完結第9話
8年目の遺失物
1997年8月、東名高速道路の富士川サービスエリアで、28歳の岡田裕子が突然姿を消した。 夫と車で帰宅する途中、トイレへ行くと言って車を降りたまま戻らなかった裕子。夫はその場で通報せず、1人で車を出し、失踪届が出されたのは3日後だった。 財布も身分証も、幼い息子と写った家族写真も見つからないまま、事件は未解決のまま時だけが過ぎていく。 そして8年後。 遺失物センターの棚の奥から、古びたベージュ色のバッグが発見される。中には裕子の身分証、家族写真、そして震える文字で書かれた手紙が残されていた。 「私は今、1人では家に帰ることができません」 あの夜、裕子は本当に消えたのか。 夫はなぜ、妻を残して走り去ったのか。 そして、バッグを届けた“別の女性”は何を知っていたのか。 8年間止まっていた家族の時間が、古いバッグの中の手紙によって、静かに動き始める。ミステリー|行方不明1.3萬字5 1052 -
完結第13話
霧葬の山岳会
1998年10月、長野県の山岳会で、ただ1人の女性会員・高木真美が白い霧の中から姿を消した。 翌年に結婚を控えていた28歳の真美。仲間たちと向かった秋の黒岩岳で、彼女は突然行方不明となり、事故による滑落として処理された。赤いキャップとちぎれたザックの一部だけを残して、遺体は見つからなかった。 残された母は、娘の死を受け入れられないまま、毎年10月12日になると警察へ手紙を書き続けた。 「あの日、娘に何があったのか。どうか、もう一度調べてください」 そして16年後。 黒岩岳の岩の隙間から、古い登山靴と人骨が発見される。そこは、滑落した人間が偶然たどり着くにはあまりにも不自然な場所だった。 さらに遺骨には、事故では説明できない傷が残されていた。 16年前、霧の中で本当は何が起きていたのか。 そして、山岳会の仲間たちはなぜ同じ証言を繰り返したのか。 母の手紙が止めなかった時間が、ついに閉ざされた山の沈黙を破り始める。因果応報|行方不明|孤獨2.0萬字5 3595 -
完結第8話
消えた背番号1
平成12年、都内のホテルで開かれたプロ野球選手・藤原健二の引退会見。 肩の故障でも、年齢でもない。彼がマイクの前で語り出したのは、18年前の春に消えた天才エース投手・宮崎武志の名前だった。 昭和57年、選抜大会を目前に控えた大阪の工業高校。背番号1を背負う武志は、病気の母と幼い弟妹を支えるため、プロ入りを夢見て投げ続けていた。一方、幼い頃から常に武志の後ろにいた藤原は、誰にも言えない嫉妬を胸に抱えながら、控え投手としてその背中を見つめていた。 選抜出発の前夜、家族の苦しみと将来への不安に追い詰められた武志は、学校を出ていく。 その後を追った藤原。 月明かりの下で交わされた言葉は、2人の運命を大きく狂わせることになる。 なぜ天才エースは甲子園を目前に消えたのか。 そして18年後、すべてを手に入れたはずの藤原が、自らの引退会見で語った“本当の理由”とは――。ミステリー|行方不明1.1萬字5 1331 -
完結第8話
10年目の地下室
2004年12月、忘年会の夜。 会社員の田村孝介は、2次会で訪れたカラオケ店から妻へ電話をかけた。 「もうすぐ出る。少し地下に降りるだけだから」 それが、家族が聞いた最後の声だった。 翌朝になっても田村は帰らず、携帯電話の電源は切れたまま。財布も口座も動かず、どこかへ逃げた形跡もない。妻は何度も「夫は地下に降りると言った」と訴えたが、警察は事件性を認めず、行方不明として処理した。 その後、カラオケ店は突然廃業し、店長は海外へ出国する。 誰も調べなかった地下。 不自然に塗り固められたコンクリートの壁。 そして、田村の名前の横に残された謎の星印。 10年後、老朽化したビルの解体工事中、閉ざされていた地下から人骨が見つかる。 田村はなぜ地下へ向かったのか。 あの夜、彼は誰と何を話したのか。 そして、真実をコンクリートの奥へ封じ込めたのは誰だったのか。 忘れ去られたはずの忘年会の夜が、10年の時を越えて再び動き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 453 -
完結第8話
床下に消えた29年
2023年、岐阜県の山中にある古民家で深夜に火災が発生した。 焼け跡から見つかったのは、この家で1人暮らしをしていた高齢男性の遺体。古い木造家屋の痛ましい火事として処理されるはずだった。 しかし、消防士が焼け落ちた床を踏み抜いた時、事件はまったく別の顔を見せる。 床下に広がっていたのは、誰も存在を知らなかった暗い空間。そこには、木の板に縛りつけられたまま長い年月を過ごした、女性の乾燥遺体が横たわっていた。 遺体のそばに残されていた古い医療カード、切り裂かれた写真、そして日記に記された不気味な一文。 「もう彼女は逃げることができない」 29年前、自ら姿を消したと思われていた女性は、本当に新しい人生を選んだのか。 それとも、誰にも知られない山中の家で、ずっと助けを待ち続けていたのか。 すべてを灰に変えた火が、長年閉ざされていた床下の秘密を暴き出す。ミステリー|行方不明1.2萬字5 467 -
完結第8話
天井裏の元彼
2012年、福岡市の古いワンルームで一人暮らしを始めた小林里奈。 束縛の激しかった元恋人・山田誠と別れ、ようやく自由な生活を取り戻したはずだった。ところがその直後、誠は突然行方不明になる。 数か月後、里奈の部屋で奇妙な出来事が起こり始めた。 冷蔵庫の食べ物が少しずつ消え、置いたはずの物が別の場所へ移動する。夜になると、誰もいないはずの天井から、何かが這うような音が聞こえてくる。 警察も管理会社も、友人も、誰も里奈の言葉を信じなかった。 「疲れているだけ」 「気にしすぎだ」 そう言われ続けた里奈は、自分の記憶さえ疑い始める。 やがて彼女は、その部屋を逃げるように去った。 しかし2年後、寝室の天井裏から発見されたものが、里奈の恐怖が妄想ではなかったことを証明する。 あの夜、彼女が見上げていた天井の向こうには、確かに“誰か”がいた――。ミステリー|真相|行方不明1.1萬字5 1299 -
完結第10話
10年目のハザード
1999年10月、夜明け前の阪和自動車道に、1台のタクシーがハザードランプを点けたまま残されていた。 運転席は無人。車内に争った跡はなく、鍵も残されたまま。所有者は、大阪・堺で個人タクシーを営む藤村達夫だった。 警察が自宅を訪ねると、妻・安子と娘・真奈美の姿も消えていた。台所には冷めた味噌汁、まな板には切りかけのネギ。家族3人は、夕食の途中で突然この世から切り取られたように姿を消していた。 達夫が最後に乗せた客は誰だったのか。 そして、なぜ一家は財布も通帳も残したまま消えたのか。 10年後、取り壊しが決まった団地の室外機の裏から、1本の古いカセットテープが見つかる。 そこに残されていたのは、達夫が命がけで吹き込んだ、震える声だった――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 1257 -
完結第15話
土俵下の12年
昭和47年、東京・両国の相撲部屋から、期待の若手力士・林岳司が突然姿を消した。 能登の小さな漁村から上京し、家族の期待を背負って土俵に立っていた21歳の青年。部屋には荷物も手紙も残されたままで、まるで少し外へ出ただけのように、彼の生活だけがそこに残っていた。 両親は息子がどこかで生きていると信じ、12年間待ち続けた。 しかし昭和59年、故郷の古い土俵を解体した時、土の下から思いがけないものが見つかる。 東京で消えたはずの岳司は、なぜ故郷の土俵の下にいたのか。 稽古場で何が起き、誰が12年間も真実を隠し続けたのか。 若き力士の失踪は、故郷の土の中から静かに動き出す――。ミステリー|行方不明2.2萬字5 1206 -
完結第9話
50年目の沈黙の部屋
2021年、福井県の山あいにある閉鎖病院で、壁に塗り込められた小さな部屋が発見された。 窓もなく、扉もなく、外から完全に塞がれたその空間に残されていたのは、1人の男の骨と、古い観察記録だった。 記録の日付は、1973年。 そこに書かれていたのは、吉川明という30歳の患者の名前だった。だが不思議なことに、彼は病院の閉鎖後も、家族からも行政からも、誰からも探されていなかった。 なぜ彼は、誰にも知られず壁の中に残されたのか。 そして、最後の記録に残された「生命の兆候なし」という一文の後、病院では何が行われたのか。 50年近く沈黙していた廃病院の壁が、今、ひとりの男の消された人生を語り始める。ミステリー|行方不明1.4萬字5 607 -
完結第13話
消えた娘の38分
2023年、幼稚園から帰る途中だった少女・美緒が、父親の車に乗ったまま姿を消した。 山道で事故が起き、父は記憶を失ったと証言。警察は周辺を捜索したが、美緒の姿も、当日持っていたバッグも見つからなかった。 それから1年後。 母・雪が、かつて家族で暮らしていた古いマンションを訪れた時、突然スマートフォンに通知が届く。 それは、美緒のバッグに入れていた位置追跡チップからの信号だった。 示された場所は、誰も想像していなかった寝室の床下。 そこから見つかったバッグ、消えていた上着、空になった金庫。そして、父親の車が事故前に立ち寄っていた“38分間”の空白。 事故だと思われていた少女の失踪は、家族の秘密と金の流れに隠された、まったく別の事件へと変わっていく。ミステリー|行方不明1.9萬字5 1535 -
完結第20話
湖底の五本柱
1999年2月、記録的な豪雪に閉ざされたダム建設地・鏡谷で、3人の男が忽然と姿を消した。 彼らが乗っていた黒いセダンは、エンジンをかけたまま雪原に残されていた。ドアは開き、所持品もそのまま。だが、車の周囲には人が降りた足跡が一つもなかった。 やがて龍鳴寺の床下から見つかった1台のカメラが、事件を思わぬ方向へ動かしていく。そこに写っていたのは、消えた3人と作業員たちが、吹雪の中で何かを巡って激しく対立する姿だった。 さらに、ダムに沈むはずだった村からは、古い拳銃、止まった懐中時計、血に染まった作業車、そして「五つの柱」という不気味な言葉が浮かび上がる。 これは単なる失踪ではなかった。 ダムの底へ沈められようとしていたのは、村の風景だけではない。30年前に隠された罪と、ひとりの老人が命をかけて仕掛けた復讐だった。 雪の中で消えた男たちは、どこへ行ったのか。 そして、水没した地下から響く時計の音は、何を告げていたのか――。ミステリー|行方不明|金銭問題3.0萬字5 797 -
完結第10話
消えた弟と制服の父
1991年3月、群馬県の山間にある静かな村で、2歳の木島拓也が自宅の前庭から忽然と姿を消した。 父は警察官。母は家の中にいた。庭にはおもちゃのトラックだけが残され、足跡も、争った跡も、手がかりらしいものは何も見つからなかった。 大規模な捜索が行われても、拓也の行方は分からない。やがて事件は迷宮入りしかけるが、父・洋介の行動にはいくつもの小さな違和感が残っていた。 予定より長すぎたランニング。説明のつかないパトカーの走行距離。外したはずの銃弾。そして、父の後ろ姿を見ていた4歳の姉・香織の沈黙。 それから3年後。 成長した香織は、悪夢の中で何度も同じ光景を見るようになる。 「パパが、拓也を傷つけた」 幼い記憶の断片が少しずつつながった時、消えた2歳児をめぐる事件は、思いもよらない形で再び動き出す。 前庭から消えた子どもに、本当は何が起きたのか。 そして、家族が3年間口にできなかった“あの日の真実”とは――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 635 -
完結第12話
20年目の神隠し夫婦
2004年、奄美大島へ新婚旅行に訪れた木村俊介と伊藤しおりは、宿泊先の民宿から忽然と姿を消した。 部屋には開いたままの旅行鞄、起動中のノートパソコン、携帯電話、財布、そして現金まで残されていた。最後に確認されたのは、しおりがブログに投稿した「明日はもっと素敵な1日になるはず」という幸せな言葉。 しかし、その夜を境に、2人の足取りは完全に途絶える。 事故なのか、事件なのか、それとも自ら消えたのか。家族は誹謗中傷に苦しみながらも、わずかな手がかりを追い続けた。だが、茶色い革の鞄が見つかっても、真実にはたどり着けないまま、20年の歳月が流れていく。 そして2024年、遠く離れた異国の小さな漁村から、信じられない知らせが届く。 20年前、奄美の夜に消えた新婚夫婦は、そこで何を失い、何を守り続けていたのか。 長すぎる空白の先で明かされるのは、愛する人を想い続けた家族と、帰る道を忘れなかった2人の物語。ミステリー|行方不明1.8萬字5 1090 -
完結第13話
嘘葬りの豆腐店
1991年、茨城の古い商店街で、豆腐屋の嫁・美香が突然姿を消した。 姑と夫が語ったのは、「男を作って夜逃げした」という話。幼い息子を置いて消えた母親として、美香の名は商店街で長く汚され続けた。 しかし6年後、借金による強制執行で高橋豆腐店が取り壊されることになる。誰も近づこうとしなかった裏手のボイラー室。そのコンクリートを掘り返した時、そこから現れたのは、色褪せたスカーフと小さな金の指輪だった。 男と逃げたはずの嫁は、なぜ自宅の床下にいたのか。 そして家族は、6年間何を隠し続けていたのか。 雨の夜に消えた母の名誉を取り戻すため、古い商店街の沈黙が少しずつ崩れ始める。ミステリー|行方不明1.9萬字5 427 -
完結第11話
8年目の生マイク
8年前、宇都宮で1人の女性が明け方に姿を消した。 本田さゆり、54歳。夫は地元テレビ局で長年ニュースを担当してきた有名キャスター・本田正弘だった。彼はカメラの前で涙を浮かべ、「妻の帰りを待ち続けている」と語り、世間から“悲劇の夫”として同情を集めていた。 しかし、未解決事件を扱う生放送番組の休憩中、正弘の胸元についたピンマイクが切り忘れられていた。 誰もいない廊下で、彼が小さくつぶやいた一言。 「さゆり、お前があの時、口さえ閉じていれば……」 その音声を聞いてしまった若手ディレクターの通報により、8年間止まっていた事件が再び動き出す。 明け方の電話、隣家が聞いた重い音、失踪直前に消えた1000万円。そして、夫が隠し続けた古い土地。 完璧な悲劇を演じてきた男の仮面は、たった1つの切り忘れたマイクによって、静かに崩れ始める。ミステリー|行方不明1.7萬字5 2218