"妻の葬儀で老犬が暴いた秘密" 第2話
その夜、私は板をけなかった。
寝からしい毛布を持ってきて、焦げた畳のそばに横になった。太郎は私の元ではなく、板と私のへ体を置くようにして伏せた。
眠れるはずもなかった。
目を閉じると、病院のい廊が浮かぶ。医師から妻のを告げられたも、私は声をげなかった。必な説を聞き、類へ署名し、葬儀社へ連絡した。
しむに、すべきことを処理した。
軍としてについた習慣だった。
だが今、その習慣が自分を責めているようにえた。もっとく疑うべきだったのではないか。階段から落ちたという説を、なぜそのまま受け入れたのか。
午2を過ぎた頃、私はノートを取りした。
と事実を分けるためだった。
つ目。幸子は自宅階段から転落し、搬送先でくなった。
つ目。警察は内に争った形跡がないと説した。
つ目。葬儀、祭壇のから為にけられた能性のある板を発見した。
つ目。には属製の物と類らしいがある。
つ目。祭壇の位置をえたのは健と真由美だった。
最のをいた、胸の奥にたいものが広がった。
しかし、健が板をけたという証拠はない。古い傷がいつついたのかも分からず、の物が妻のと関係するとも限らない。
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私はノートの余へ、くき加えた。
《推測でを犯にしない》
朝になると、私は妻のスマートフォンを確認した。
警察のち会いで度調べられていたが、事故と判断されたため、通話やメッセージの内容まで細かく確認されたわけではない。顔認証ではかず、幸子が以教えてくれた番号を入力すると、画面が静かにるくなった。
夫婦のやり取りは、ごく普通のものだった。
《今夜はえるそうです》
《太郎の薬をもらってきました》
《帰るが決まったら教えてね》
私は簡単な返事しかしていない。
《解》
《ありがとう》
《まだ分からない》
幸子は、を空ける私を責めなかった。だから私は、妻が何も抱えていないのだとい込んでいた。
弟とのやり取りをく。
最初は母親の法や親族の予定に関する連絡だった。ところが半から、銭の話が増えていた。
《姉ちゃん、今だけ何とかならないか》
《真由美の父親の治療費が必なんだ》
《必ず返すから、50万円だけ貸してくれ》
幸子は度、を振り込んでいた。しかし、そのも求は続いている。
《にも貸しました》
《返済の話をしてからにしてください》
《族だろ。義兄さんには黙っていればいい》
私はそこで指を止めた。
幸子は返していた。
《夫に隠しておを渡すことはできません》
だが、その話を私は聞いていない。
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さらに過へ遡ると、健はだけでなく、やについても繰り返し触れていた。
《あの、姉ちゃんたちには広すぎるだろ》
《いずれ売るなら、先に俺たちへ相談してくれ》
《駅の計画が通れば、の値段ががるらしい》
幸子は毎回、く断っていた。
《売る予定はありません》
《太郎が歩ける庭を残したいです》
《両親から受け継いだです》
私は以、健から度だけ相談されたことがある。
「義兄さんからも姉ちゃんを説得してくれないか。古いへしがみついても仕方がないだろう」
私は親族の見の違いだとい、「幸子が決めることだ」と答えた。それ以く聞かなかった。
今なら分かる。
健は私へ相談したのではない。私を通して幸子のを変えようとしていたのだ。
妻がくなる10のメッセージを見つけた。
《隆さん、今度帰ったら健のことで話があります》
私はこう返していた。
《何かあったのか》
幸子からは、すぐに返事が来ている。
《うん。でも今は断ったから丈夫》
たったそれだけだった。
私は「丈夫」という言葉を、そのまま受け取った。訓練の準備に追われ、話もしなかった。
妻は何を断ったのか。
なぜ私が帰るまで待とうとしたのか。
その答えを確認するに、幸子はくなった。
私はノートへ、健の求と妻の返答を付順にきした。
の求が始まった期、の話が増えた期、幸子が私へ相談しようとした。
そして、妻がくなった。
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