"「名前を書くな」公害病の申請を止めた父と、娘の「息がしたいだけ」" 第9話
「班の件、悪かったな」
「いえ」
「今回は田にした」
「分かっています」
「理由、聞きたいか」
忠雄はし考えた。
「聞けるなら」
吉岡は正直に話した。
田はここ2、若の教育を担当しており、報告の作成や部署との調もしていた。現の経験だけなら忠雄の方がいが、班として必な部分で田を評価したという。
「公害申請は関係ないんですか」
忠雄は自分から聞いた。
吉岡はし顔をしかめた。
「俺が決める範囲では関係ない」
「ほかでは?」
「そこまではらん」
嘘かもしれない。
本当かもしれない。
忠雄には判断できなかった。
でも。
なくとも。
申請しなければ必ず班になれた。
という確証もなかった。
「井」
吉岡が言った。
「お、最設備の話はより細かく言うようになったな」
「迷惑ですか」
「いや。面倒だ」
忠雄は苦笑した。
「でも必だ」
吉岡も笑った。
「その代わり、じゃなく数字で言え。会社は数字でく」
忠雄は頷いた。
それから。
設備記録を。
以より細かく残すようになった。
いつ異常がたか。
どんな処置をしたか。
応急運転をどれだけ続けたか。
次回は何を交換すべきか。
誰かを責めるためではない。
同じ問題を。
「も丈夫だった」
という言で。
済ませないためだった。
美紀の申請についても、しずつ話がんでいた。
認定のための確認や診察が続き。
本も。
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何度も病院へった。
学では。
「公害病の申請してるんだって?」
と聞いてくる子もいた。
噂は。
どこからでも広がった。
「お父さんで働いてるのに?」
そう言われた。
美紀は何と答えればいいか分からなかった。
「だから何?」
とく返した。
へ帰ると。
その言葉を。
ずっと考えた。
で働いている父の娘が。
公害の認定申請をする。
それは。
矛盾なのだろうか。
夕の。
美紀は父へ聞いた。
「お父さん、私が申請したこと、恥ずかしい?」
忠雄は箸を止めた。
「なんでだ」
「学で言われた。お父さんなのにって」
忠雄はし考えた。
「別に恥ずかしくない」
「矛盾してない?」
「してるかもしれんな」
美紀は驚いた。
「でも、ってそんなもんだろ」
忠雄は噌汁をんだ。
「の料で暮らしてる。がないと困る。でも空気が悪くなるのは嫌だ。おには元気でいてほしい。全部本当だ」
「どれかつにしなくていいの?」
「簡単につにできるなら、最初から悩んでない」
芳が横で笑った。
「お父さん、やっと難しいこと言えるようになったわね」
「うるさい」
美紀も笑った。
申請をに。
「名をくな」
と言った父と。
同じだった。
けれど。
しずつ。
違う父にもなっていた。
申請からしばらく経ったある、井に通の通が届いた。芳は封筒を持ったまま、すぐにはけなかった。忠雄が帰ってくるまで待とうと言ったが、美紀は「私のことだから今見たい」
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と言い、で卓を囲むことになった。
結果を読む役目は美紀自が引き受けた。
をく。
何か読む。
途で。
息を止めた。
芳が尋ねた。
「どうだった?」
美紀はから顔をげた。
「認定された」
芳はさく息を吐いた。
忠雄は何も言わなかった。
ぶべきなのか。
しむべきなのか。
誰にもすぐには分からなかった。
認定されたということは。
治療に関する支援を受けられる。
計の負担も。
これまでより軽くなる。
でも同に。
娘が。
健康な子ではないことを。
枚の公なによって。
改めて確認されたようでもあった。
「よかったのかな」
美紀が呟いた。
芳がを握った。
「治療を続けるためにはね」
忠雄もようやくをいた。
「これで病気が決まったわけじゃない。から病気だったんだ。が来たから病気になったわけじゃない」
美紀は父を見た。
その言葉は。
以の忠雄なら。
言えなかったかもしれない。
「お父さん」
「何だ」
「名、いてよかった?」
忠雄はし笑った。
「ああ」
迷わなかった。
翌。
忠雄はへった。
認定されたことを。
会社へわざわざ報告する義務があるのか。
忠雄には分からなかった。
でも。
隠すようなことでもないとった。
休憩。
野寺へ話した。
「認定された」
野寺はしばらく何も言わなかった。
それから。
「そうか」
とだけ答えた。
「何だよ」
「いや」
野寺は缶コーヒーを握った。
「うちの息子も、このまた夜に咳がてな」
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