「高瀬さん、今日から工場へ来なくていい」 集団検診の翌朝、17歳の姉だけが門前で止められた。 寄宿舎へ戻ると、作業着も櫛も裁縫箱も、すべて紙箱に詰められていた。 理由を聞いても、姉は「知らん」としか答えない。 周囲では、盗みをしたのではないかという噂まで広がった。 3日後、妹は姉の前掛けから一枚の紙を見つける。 赤鉛筆で書かれていたのは、 《要精密検査》 姉は病院へ行かず、寄宿舎からも姿を消した。 一週間後、別人の名前で小さな縫製工場に勤めていることが分かる。 「病気やと決まったら、家族へ金を送れへん」 だが翌月、その名前の本当の持ち主が大阪へ来ることになった。 しかも工場では、全員の胸部検診が予定されていた。