"給食を食べなかった少女" 第5話
栄治は貨を封筒へ戻した。
「こんなこと、もうするな」
娘へ押し返した。
「もえ。は貯めなくていい」
子は瞬、顔をげた。
「じゃあ――」
「かせるとは言ってない」
その言葉で。
女の表から。
わずかな期待が消えた。
父はそのまま教をた。
林は追いかけようとしたが。
子に止められた。
「先」
「何だ」
「もういいです」
「よくない」
「お父ちゃんが言ってることも、分かるから」
子は貨を拾った。
枚ずつ。
封筒へ戻していく。
「私が働いたら、弟たちもちゃんとご飯べられるし」
「子」
「先にならなくても、きてはいけます」
その言葉を聞いた林は。
なぜか。
をべず。
だけんでいたの子をいした。
この子は。
自分の分を。
すぐ削る。
事も。
鉛も。
消しゴムも。
そして最には。
自分の未来まで。
族へ譲ろうとする。
「帰るに、つだけ見せてくれ」
林は言った。
「何ですか」
「封筒」
子は議そうに渡した。
貨を戻している途。
枚の折り畳まれたが。
底からてきた。
林は最初。
学から配っただとった。
しかしいてみると。
それは。
町からしれた所にある。
紡績の。
女子員募集のだった。
《学卒業者歓迎》
という文字のに。
鉛で。
《佐伯子》
とかれている。
「これは何だ」
子の顔が変わった。
「返してください」
「誰にもらった」
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「返して」
女はを奪い取った。
「へきたいんじゃなかったのか」
子は唇を噛んだ。
しばらくして。
さな声で言った。
「けなかったのためです」
「まだもある」
「うちには、もないかもしれない」
林はが分からなかった。
「どういうことだ」
子は答えなかった。
その翌。
理由が分かった。
佐伯栄治が。
勤めていた材から。
とうとう。
解雇を言い渡されたのである。
栄治の解雇は、怪をしてから続いていた問題の終わりではなく、佐伯にとって本当の苦境の始まりだった。側もく軽作業へ回していたが、景気の悪化と員理がなり、以のように働けない者から順に契約を打ち切られた。栄治は退職らしい退職もほとんど受け取れず、末には次の働きを探さなければならなくなった。
林がそれをったのは、が学へ来たからだった。
「先。費、また遅れます」
謝る必などないのに、は何度もをげた。
「それより、ご主の仕事は」
「探してます。でもがこれでしょう。材も運べないし、は難しいみたいです」
「役には相談しましたか」
「昨きました」
使える制度や仕事の紹介を調べてもらっているという。ただ、すぐに計が楽になるわけではない。
「子には?」
「全部は言ってません」
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林はため息をついた。
「たぶん、かなり気づいてます」
は苦笑した。
「そうでしょうね。あの子、昔から変なところばっかり見てますから」
へ帰ると米びつを見る。
父親の弁当がさくなれば気づく。
母が内職を夜まで続ければ起きている。
弟が邪をひけば、薬の袋にかれた値段まで見ている。
「本当は、あの子のでおの話をしないようにしてきたんです」
は言った。
「でも、隠すほど自分で悪い方へ考えるんでしょうね」
そのの。
子はパンをべた。
林が見ていることに気づいているのだろう。
しずつ。
をかけて。
全部べた。
しかし翌の休み。
クラスメートの美代子が子へ尋ねた。
「最、毎パンべるようになったね」
何気ない言だった。
子のが止まった。
「は持って帰ってたでしょう」
「残してただけ」
「弟にあげてたんじゃないの?」
美代子には悪がなかった。
けれど子の顔は真っ赤になった。
「違うよ」
「この庭で――」
「違うって言ってるでしょう!」
教が静まり返った。
子はそのままへた。
林はしを置いて追いかけた。
女は階段の踊りで泣いていた。
「美代子は悪気があったわけじゃない」
「分かってます」
「なら、鳴らなくてもよかったな」
「分かってます」
子は袖で涙を拭いた。
「でも、嫌なんです」
「何が」
「かわいそうってわれるの」
林は黙って聞いた。
「パン分けてあげようかとか、鉛あげるとか、そういうの嫌」
「助けてもらうのは悪いことじゃない」
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