みかん小説
本棚

"「孤児の貧乏女」と捨てた妻の本当の正体" 第19話

そして彼だけでなく、フロアに残されてそうにち尽くしている数名の社員たち全員に向かって、よく通る声で語りかけた。

「皆さんも聞いてちょうだい。先ほど元社に宣告した通り、この会社は本をもって度倒産という形を取ります。……でも、してください」

社員たちがあっと息を呑む。私は言葉を区切り、はっきりとした調で宣言した。

からこの会社は、条グループの完全子会社として再発します。真面目に働き、理尽な層部に耐えてきた皆さんの雇用は、私が責任を持って全員守ります。未払いの残業代も、当にげられていた与も、全て適正な額で全額補償することを約束するわ」

「ほ、本当ですか……!?」

「ああ……よかった……! から族をどう養っていけばいいか、目のが真っ暗だったんだ……!」

フロアのあちこちから、堵の涙と歓声ががる。悪たちがったのオフィスに、初めて温かいが差し込んだ瞬だった。

私は再び田に向き直り、彼の肩にそっとを置いた。

「そして――となるこの会社のには、田君に就任してもらおうと考えているわ」

「えっ……!? ど、ど、どういうことですか!? 私なんてただの平社員で、営業の成績だって……」

目を丸くしてパニックになる田に、隣にっていたKホールディングスの黒田社が優しく笑いかけた。

広告

「田君。ビジネスにおいて切なのは、見せかけの成績やエリートぶった学歴ではない。誠実さと正義、そしてどんな困難にも逃げずにち向かう勇気だ。君にはそれがある。業務のサポートは々が全力でうから、どうかこの会社を、君のような真面目なが報われる組織にて直してほしい」

「黒田社……美桜お嬢様……!」

の目から、粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。毎ゴミ同然に罵られ、理尽な雑用を押し付けられながらも、決して腐ることなく正義を貫いた青。彼の努力が、ついに最の形で報われたのだ。

「私でよければ……全力でやらせていただきます!」

げる田に対し、フロアの社員たちから割れんばかりの拍が巻き起こった。その温かい景を見つめながら、私のにあった分のたい氷が、ゆっくりと溶けていくのをじていた。

それから半――。

「お嬢様、本のダージリンでございます」

「ありがとう、柴田」

京のを赤く染める夕焼け空。が所する超級ホテルの最階、ペントハウスのバルコニーで、私はよいに吹かれながら、茶のりを燻らせていた。

につけているのは、もうあの褪せた物のカーディガンではない。私本来の姿である、洗練されたシルクのドレスをにまとい、背筋をまっすぐに伸ばして美しい夕暮れを見つめている。

広告

「あれから半……彼らはどうしているかしら?」

私がポツリと呟くと、柴田は元のタブレットを操作しながら、静かに報告を始めた。

「拓也は現、刑務所ので厳しい懲役作業にしております。報の横流しと横領の罪に加えて、お嬢様への殺教唆の罪がくのしかかり、実刑は免れませんでした。さらにも、億円にまで膨れがった損害賠償をかけて返済し続ける獄の々が待っております」

「そう……」

「由と章も同様に実刑判決を受け、『おのせいだ』と刑務所ので毎のように罵りっているそうです。由の実も完全に破産し、彼女の居所はもうどこにもありません。元社も全財産を没収され、拓也の両親もを失い、今は古いアパートでその暮らしをしているとのことです」

、私を見し、踏みにじってきた者たち。彼らは今、自分たちが吐いた嘘と欲望の代償を、暗くたい檻ので支払い続けている。

「自業自得ね。でも、議と憎しみはもうないわ。彼らはただ、私にの愚かさと本当の価値を教えてくれただけの、通りすがりのだったんだから」

私はティーカップを置き、バルコニーのすりに寄りかかった。に広がる京のには、しずつ温かいの灯りが灯り始めている。

あののどこかで、田君をはじめとする企業の社員たちが、今は笑顔で働いているはずだ。

というは、決して無駄じゃなかったわ。さあ、私の本当のは、ここから始まるのよ」

「はい、お嬢様。どこまでもお供いたします」

柴田がく、そして温かい敬を込めて礼した。

が完全に沈み、煌びやかな夜景が私を祝福するように輝きす。過の鎖を断ち切り、本当の自分を取り戻した私の顔には、もう微の曇りもなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: