"帰れなかった15歳" 第2話
「体に気をつけろよ」
「料がても全部使うんじゃないぞ」
「盆には帰ってこい」
「をくんだよ」
笑おうとする者も、最初から泣いている者もいた。教師は徒たちの名を確認し、引率者へ名簿を渡していった。
佐子と同じ学から京へ向かう女子は7だった。
美津子、節子、芳、、澄子、代、そして佐子。
全員、都内にある亜精密業という属部品で働き、同じ女子寮へ入る予定になっていた。
列がホームへ入ると、子どもたちはたちに背を押されるように乗り込んだ。佐子は窓際の席を見つけると、すぐに窓をけた。
「母ちゃん!」
トヨは娘の声を聞き、混みをかき分けて窓のまでった。
「佐子、つらかったら帰ってきていいんだよ」
「丈夫。最初の料がたら送るから」
「おはいい。体だけは事にするんだよ」
その、発のベルが鳴った。
列がゆっくりとき始める。
トヨは窓の横をった。古い履が脱げそうになっても構わず、娘の顔だけを見ながら必にった。
佐子も窓からを乗りし、何度もを振った。
「母ちゃん、ってきます!」
その声は汽笛にかき消された。
列の速度ががり、トヨの姿がしずつさくなっていく。それでも佐子は、母が見えなくなったまでを振り続けた。
やがて席へ座ると、膝のへ置いた鞄をく抱き締めた。
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隣に座っていた美津子が目元を拭いながら笑った。
「佐ちゃんのお母さん、最までってたね」
「転んでないといいけど」
佐子も笑ったが、声が震えていた。
列はの残る田畑のをへっていった。
ホームにち尽くしたトヨは、黒い煙が空の向こうへ消えてもかなかった。寒さで指先の覚がなくなっても、列が消えた線だけを見続けていた。
まさかあれが、娘との23に及ぶ別れになるとは、そののトヨにはる由もなかった。
列のには、各から集められた若者たちが乗っていた。
学ごとに固まって座り、胸には氏名や就職先をいた札をつけている。列が駅へ止まるたび、しい女が乗り込み、そのたびに内の訛りがしずつ変わっていった。
最初のうち、内は見送りの涙を引きずったように静かだった。
窓のを見つめる者、母親から渡されたを何度も読み返す者、鞄へ顔を伏せる者もいる。
しかし列がいくつもの駅を通過するうち、子どもたちはしずつ話し始めた。故郷のがざかり、見慣れない景が増えるほど、を隠すために数が増えていくようでもあった。
「寮にはテレビがあるんだって」
美津子が求票を広げると、節子がを乗りした。
「本当に? うちのじゃ、郵便局さんのにしかないよ」
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「曜なら見せてもらえるんじゃない?」
「京へったら座へこうよ。映画にてくるみたいながあるんでしょう?」
女たちは笑った。
初任で何を買うかという話になると、自分の物より族へ贈りたい物が次々に挙がった。美津子は母へい割烹着、節子は父の靴、芳は妹の箱を買うつもりだと言った。
「佐ちゃんは?」
尋ねられた佐子はし考えた。
「弟たちに本を買う」
「本?」
「学の図で借りると、読み終わるに返さなきゃならないって、いつも文句を言ってるから」
「自分の物は?」
「3に買う」
「3も何も買わないつもり?」
皆が笑い、佐子も笑い返した。
けれど3という言葉は、佐子にとって単なる冗談ではなかった。3働いて計がし楽になったら、夜学へ通えるかもしれない。京には働きながら勉できる学があると、担任から聞いていた。
そのさな希望だけは、母にも言っていなかった。
昼を過ぎる頃、女たちは持たされた弁当をいた。
卵焼きや煮物が入った者もいれば、きな握り飯と沢庵だけの者もいる。佐子の包みには麦の混じった握り飯が3つだけだった。
1つ目をゆっくりべ、2つ目は夕方にべた。
最の1つにはをつけず、再びの皮へ包む。
「それ、べないの?」
美津子が尋ねた。
「京へ着いてからべる」
「お腹すくよ」
「いいの。母ちゃんが作った最の御飯だから」
佐子はそう言って鞄の奥へしまった。
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