"帰れなかった15歳" 第7話
「い腕章に赤い字がいてあったとう。会社のだとってたけど、何ていてあったかまでは……」
代は別のことをいした。
「私、佐ちゃんたちを追いかけようとしたの。でも引率のに止められた。余計なことをするなって、すごく怖い顔で」
当の引率職員はすでにくなっていた。
しかし亜精密業の採用担当だった松英が、京郊で暮らしていることが分かった。
美津子はへ休暇を申請し、松の自宅を訪ねた。
古い団のからてきた老は、最初、美津子が誰なのか分からなかった。亜精密業の元社員だと伝えると、警戒するように目を細める。
「昔の採用について伺いたいんです」
「そんな昔のこと、覚えてないよ」
「昭35です。から来た集団就職の女子徒についてです」
美津子が佐藤佐子の名をすと、老は面倒そうに首を振った。
「野で逃げた子だろう。そういう子は何かいた」
「逃げたんじゃありません。途でき先を変えられた女を追いかけたんです」
「らないね」
松は扉を閉めようとした。
美津子は最に、もう1つの名をにした。
「野寺千代子さんを覚えていますか」
老のが止まった。
ほんの瞬だった。
だが顔から血の気が引いたのを、美津子は見逃さなかった。
「やっぱりっているんですね」
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「帰ってくれ」
「23、佐子のお母さんは娘を待っています。あなたがっていることを話してください」
「私は何もしていない」
「何もしなかったから、佐子は帰れなかったんじゃありませんか」
松は美津子を睨んだ。
しかしそこにあったのはりではなかった。
い隠してきたものを、今さら掘り起こされることへの恐怖だった。
しばらくすると、老は諦めたように扉をけた。
「所に聞かれたくない。へ入れ」
狭い居で、松は煙へをつけた。
「あの頃は、どこのもがりなかった。特に条件の悪いさなはな。求をしても子どもが来ない」
松は皿を見ながら話した。
表向きは待遇の良い会社が採用し、京へ着いてから別のさな請けへ回す。
そうした仲介をする業者がいたという。
女たちの賃からは「紹介料」「寮費」「費」などの名目でが差し引かれた。
辞めようとしても、「故郷までの旅費を返せ」「会社に借がある」と言われ、簡単には帰れない。
「野寺千代子も、その1だったんですね」
「……あの子だけじゃない。あのは4いた」
「佐子は、どこへったんですか」
「野で、その子たちについてった」
松は煙を吐いた。
「自分の会社へ戻れと言ったが、聞かなかった」
「き先をっていたんでしょう」
松は答えなかった。
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「っていたなら、連れ戻せたはずです」
「そんなことをすれば仲介の仕組みまで調べられる。うちだって、その業者と無関係じゃなかった」
美津子は言葉を失った。
「表汰になれば、方からを集められなくなる。あの頃は、誰もが会社をきくすることしか考えてなかった」
「だから15歳の子を見捨てたんですか」
松は俯いた。
い沈黙の、震えるでへ古い町名をいた。
荒川沿い。
かつて町や倉庫が密集していた角だった。
「島縫製所」
松はさく言った。
「表には別の会社名を使っていた。佐子がついてったのは、そこだ」
「そのは?」
「らない」
「本当に?」
「本当にらない。私は……数もすれば自分の会社へ戻ってくるとっていた」
「戻らなかったのに、探さなかった」
松の肩が落ちた。
「私は、会社を守ったつもりだった」
美津子はちがった。
「守ったのは会社じゃありません」
老を見る。
「自分のでしょう」
へるとのがっていた。
美津子は傘をくことも忘れ、濡れながら駅まで歩いた。
23、佐子は波ので千代子のをさなかった。
方、たちは自分たちのを守るため、その女たちからをしたのだ。
美津子はそののうちにトヨへ話をかけた。
「おばさん。佐ちゃんが京でった能性のある所が分かりました」
話の向こうでい沈黙があった。
やがて、老いた母の震える声が聞こえた。
「佐子は、きているのかい」
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