"五輪を見なかったテレビ屋" 第7話
だから先にテレビを置いた。
テレビを持たないまで、緒に見られるようにした。
そして自分は倉庫へ入った。
あの箱のに、5の写真があった。
浩は目を閉じた。
では商の々が歓声をげていた。
その声を、信夫は倉庫ので聞いていた。
テレビ画面ではなく、古い写真を見ながら。
父は京オリンピックを見なかったのではない。
別の形で、4のたちと迎えていた。
それに気づくまで、浩にはいが必だった。
箱のには、まだ浩がを理解できていないものがあった。
いさなノートだった。
表には何もかれていない。
をくと、父の字で額が並んでいた。
「テレビ1台 100円」
「蔵庫1台 100円」
「洗濯1台 50円」
次のページにも同じような記録が続いていた。
付。
の名。
50円。
100円。
には200円。
額はさかった。
最初、浩はの積かとった。
売からしずつ修理費や備品代を積みてていたのだろうと考えた。
しかし計算がわなかった。
の正式な帳簿とは別に、なぜこんな記録を残す必があるのか。
ページをめくると、何も続いていた。
黒テレビが売れていた代から、カラーテレビへ移り、蔵庫や洗濯の種類が増えていった期まで続いている。
父のの歴史そのものだった。
そして最の方のページで、浩はさな施設名を見つけた。
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児童養護施設だった。
その名の横には、まとまった額がかれていた。
浩は過の記録を見直した。
を1台売るたび、信夫は50円、100円というさな額を別にしていた。
それを定期ため、施設へ渡していたのだ。
浩は驚いた。
父がそんなことをしているなど、度も聞いたことがなかった。
母もっていたのか分からない。
なくとも子どもの頃、で寄付について話している父を見た記憶はなかった。
額は決してきくない。
1台売るたび100円。
50円。
誰かに自できるほどの額ではなかった。
だからこそ、信夫らしいとった。
に見せるためではない。
誰かに褒められるためでもない。
ただ、続ける。
父が毎をけたのと同じように。
浩は帳へ戻った。
戦の記録。
「女のがおにぎりをくれた」
「古いをもらった」
「堂のから汁をもらった」
名もらないたち。
信夫はそのたちへ恩を返すことができなかった。
名さえらなかった。
どこにんでいるのかもらない。
それでも、もらったべ物や古着がなければきられなかったがあった。
父はそのことを忘れていなかった。
ノートの最に、い文が残されていた。
浩はその文字を見つけた瞬、ページをめくるを止めた。
「返す相がいないなら、次の子に返せばいい」
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父らしい字だった。
説はない。
誰かに読ませるための文章でもない。
ただ自分自へ言い聞かせるようにかれていた。
浩はい、その文を見つめた。
子どもの頃、自分は父をたいだとったことがある。
学で良い成績を取ってもげさに褒めない。
泣いても優しい言葉をかけるのがではない。
族旅の写真でも、笑顔はほとんどない。
自分の昔話も切しない。
京オリンピックの会式でさえ、族や所の々と緒に見ようとしなかった。
しかし、父のには別の流れがあった。
らないからもらった杯の汁。
誰かが分けてくれたおにぎり。
きすぎる古着。
仲と分けた芋。
そうしたさなものが、12歳のを次のまでかした。
になり、を持った信夫は、それを別の子どもへ渡していた。
100円ずつ。
50円ずつ。
気がくなるほどさな単位で。
「父ちゃん、こういうことくらい言えばよかったのに」
浩はわず苦笑した。
だが、もしきている父にそう言ったら、きっと同じ答えが返ってきただろう。
「言うほどのことじゃない」
そんな声が聞こえた気がした。
箱を見つけてから、浩は父のをそれまでとは違う目で振り返るようになった。
昭39の京オリンピック。
自分にとっては華やかな記憶だった。
商の々が笑い、子どもたちがテレビのへ集まり、本選の活躍に声をげた。
だが父にとって、その映像の向こうには別の京がなっていた。
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