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"「貧乏な主婦は帰れ」と笑った銀行員――直後、支店長が私を見て凍りついた" 第4話

かれたページがの埃を吸いげ、くしゃりと音をてて無残に折れ曲がる。

その瞬――美咲のの芯で、プツンと何かが完全に切れる音がした。

それは激しい憤の爆発などではなかった。全を巡る血液が瞬にして絶対零度の氷へと凝固するような、静まり返った極限の覚だった。

周囲の員たちも、さすがにその景には息を呑み、内はを打ったような完全な静寂に包まれた。しかし、当の川だけは、自分が犯した為がどれほど致命な破滅を招くのかに、微も気づいていなかった。彼はに転がる通帳を見ろし、さも当然と言わんばかりにを鳴らすと、スリーピースのスラックスのポケットに両を突っ込んだ。

美咲は、ゆっくりと膝を折った。そして、たいに落ちた通帳を、両で壊れ物を扱うように丁寧に拾いげた。

指先で、無残に折れ曲がってしまったページの端を、優しく、まっすぐに撫で伸ばす。

『誰かの汗と涙と、切ないが形になったものなんだよ』

幼い頃、自分を抱きしめてくれた祖母の温もりが、その言葉と共に鮮烈に蘇る。祖母のその遺言が、美咲の胸の奥で静かに、しかし宇宙を焼き尽くすほどの量を秘めて点した。

このは、祖母がした所だったかもしれない。

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だが――こんな男がふんぞり返るこの所に、もはや守るべき価値など、微も残されていない。

がった美咲の双眸からは、先ほどまでの従順でしい主婦の気配が完全に消え失せていた。そこに宿っていたのは、かつて世界の融構造を裏から再編し、国関すら玉に取った伝説の才プログラマーとしての、徹無比な絶対者の輝きだった。

美咲は、川の瞳をまっすぐに見据えた。その瞳から放たれる凍てつくような威圧に、川は無識に息を呑み、わずかに退りした。

美咲はバッグのから、先ほど取りした特注のスマートフォンを構えた。指先が液晶を滑らかに操作する。黒曜のような画面に、黄のシンボルが鮮に浮かびがる。

――国際分散投資ファンド『レヴィアタン』。

その総資産規模は数兆円に達し、世界各国の王族、巨財閥、各国の国ファンドの資産を極秘裏に運用する、国際融界の頂点に君臨する巨ファンド。美咲はその基幹システムをたったで設計・構築し、現も最システム責任者(CTO)として、すべての資に関する絶対な暗号鍵と承認権限を保持する唯だった。

祖母の遺品理という私な理由から、平凡な主婦としての常にを潜めていたが、眠れる怪物の尾を自ら踏み抜いたのは、ならぬ川だった。

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画面に表示されたレヴィアタンのメイン座残を確認する。桁数がすぎてには瞬に認識すらできない文学な数字が、そこに静かに鎮座していた。

美咲は川に向かって、氷のように透き通った声で告げた。

「わかりました。では、やりますね」

それが、宣戦布告の図だった。

「はあ? 何をやると言うんですか? 主婦がスマホをポチポチいじって、ネットの掲示板に愚痴でもき込むんですか?」

川はなおも自らの絶対優位を信じ込み、卑た笑みを浮かべて挑発を続けた。美咲はそのれな言葉を完全に黙殺し、画面央に浮かぶ漆黒の起キーに親指を乗せた。

このボタンを押しすれば、帝都に分散預託されているレヴィアタン関連の全資が、即座にへと引き揚げられる。その額は、この支続はおろか、全体の資繰りと対信用を根底から砕する規模だった。

美咲の指先が、静かに画面をタップした。体認証が青からへと反転し、画面で鋭い警告ログが激しく滅を始する。

『国際決済ネットワーク:斉送シーケンスを始します』 『処理隔:5秒』 『送単位:10億円』 『対象座:帝都 各種分散勘定』

い液晶のが、美咲の徹な美貌を鮮やかに照らししていた。すべてのピースは揃った。

美咲は覚悟を決めた瞳で川を見据え、カウントダウンの始を静かに見届けた。

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