みかん小説
本棚

"1億8400万円の夜逃げ" 第11話

という苦しみだけは終わった。

の遺骨は族のもとへ戻された。

佳子は息子の部を9ぶりに理した。代の参考学で使ったノート、古い鏡ケース、就職試験の問題集がそのまま残っていた。机の引きしには、子どもの頃に父親へ贈ったまで入っていた。

になったら、父さんと母さんを楽させます》

佳子はそのを読んで泣いた。

は約束を果たせなかったとっていただろうか。

けれど両親にとって、息子が級なを買ってくれることも、を渡してくれることも、本当は必ではなかった。狭いでもいいから、毎週話をかけてきて「ご飯べたよ」と答えてくれるだけで分だった。

にした1億8400万円も、結局誰として幸せにはしなかった。はそのを使うに命を失い、健を持ちながら9眠れない活を送り、そのを刑務所で過ごすことになった。とも28歳だったは、同じ1枚の宝くじを境にまったく違う所で止まった。

事件、鈴ではの写真のに毎朝杯のが供えられるようになった。

それは以から佳子が続けていた習慣だったが、真相が分かってからも変わらなかった。朝になると彼女は台所でしいを入れ、写真のへ置いてから「おはよう」

広告

と声をかける。返事はないが、9どこにいるかも分からなかった頃とは違い、今は息子がにいるような気持ちになれるという。

発された麻布のには、かつて健が暮らした古いアパートの面は残っていない。コンクリートで覆われたも、狭い階段も、夜になると通りが消えたも、しい建物のに姿を消した。

だが、真実そのものが消えることはなかった。

2016、警察はを「宝くじに当たって国した男」と考えた。族も、債権者も、周囲のも同じようにい込み、その提が9疑われることはなかった。

実際に宝くじを買ったのは、鈴だった。

は当選した夜、で最も嬉しいらせを誰よりもく親友へ伝えた。

自分の幸運を、緒にんでくれると信じたからだった。

信じることそのものが違いだったわけではない。

を信じなければ、友族も成りたない。ただ、追い詰められたが、にどこまで変わってしまうのかを、は最までることができなかった。

9、事件の答えはにあったわけではなかった。

コンクリートのに残された黒縁鏡、解析されなかったノートパソコン、捨てられずに残っていたセメントの伝票、そして母親が覚えていた「これから幸せに暮らそう」

という言。

真実は、最初からそこにあった。

ただ誰も、それらをつにつなげることができなかっただけだった。

そして2025

の爪が20センチのコンクリートを割ったことで、9止まっていた鈴は、ようやく族のもとへ帰ってきた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: