"届かなかった母の手紙" 第8話
「まだ駄目だ」
「いつになったらいいんだ」
「もうしになったら」
そうして、だけが京へ届いた。
言葉は田に残った。
芳子は両で顔を覆った。
「私……」
声が詰まった。
「おだけ送って、母親の役目を終わらせてるんだとってた」
佐々は首を横に振った。
「逆だよ」
芳子が顔をげた。
「をけないから、せめてだけでもとってたんだ」
芳子は返す言葉を失った。
母へのりを支えていたものが、しずつ崩れていった。
がない。
返事もない。
その事実は変わらない。
そのために芳子が苦しんだことも消えない。
けれど、その理由が自分の像とは全く違っていた。
「母ちゃん……」
4ぶりに、その呼び方が自然にからた。
佐々は箱の底を指した。
「番を見てみろ」
芳子は葉を慎に取りした。
番には、のものよりしい葉があった。
文字もらかに違っていた。
最初の「よしこへ」と比べれば、ずっとっている。
し震えてはいるが、文章として最まで読める字だった。
芳子はゆっくり読み始めた。
「芳子へ
元気に働いていますか。
母ちゃんは字がで、なかなかをせませんでした。
京で恥ずかしいいをさせたくなかったのです。
でも本当は、毎あなたのことを考えています。
帰ってこなくてもいい。
京で幸せになってください。
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母より」
途から文字が読めなくなった。
涙で界が滲んだからだ。
芳子は葉を胸に抱えた。
「馬鹿だよ……」
それが誰へ向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。
母へなのか。
自分へなのか。
「こんなの、どんな字だってよかったのに」
声をげて泣いた。
4。
自分は捨てられたとっていた。
母は京へした娘のことなど忘れたとっていた。
違った。
忘れていなかった。
毎を送りながら、毎のように葉をいていた。
届かなかっただけだった。
母の言葉は、ずっと田でまれ続けていた。
その夜、芳子はほとんど眠れなかった。
箱は枕元に置いた。
何度も起きがっては、葉を1枚取りした。
「さむくないか」
「ちゃんとねてるか」
「ごはんたべてるか」
い言葉ばかりだった。
けれど、どの葉にも母の姿が見えた。
文字を覚えるために鉛を握る姿。
違えてき直す姿。
仕事を終えた夜、疲れたで「芳子」とく姿。
芳子は、自分がらなかった4を葉ので初めて見た。
翌。
芳子は田へ帰ることを決めた。
4ぶりだった。
隆夫には、母のことを初めてきちんと話した。
「私、ずっと母に捨てられたとってた」
芳子は箱のことも、葉のことも話した。
隆夫は最まで黙って聞いていた。
そして、
「帰っておいで」
それだけ言った。
「緒にかなくていい?」
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芳子が尋ねると、隆夫は首を振った。
「最初は2で話した方がいい」
芳子は1で列に乗った。
京から田へ向かうは、15歳で京したとは逆だった。
窓のの景が都会から田園へ変わっていく。
がづくにつれ、胸が苦しくなった。
何を言えばいいのか。
「ごめん」と言うべきなのか。
それとも最初に「どうしてを送らなかったの」と聞くべきなのか。
りが完全に消えたわけではなかった。
4はい。
母の事をったからといって、あの寂しさがなかったことにはならない。
それでも、会いたかった。
駅へ着いた。
4、自分が京へ向かったさなホーム。
列からりると、たいが頬へ当たった。
とはいえ、にはまだが残っていた。
芳子は荷物を持ち、ホームを見渡した。
そこにハルがいた。
4より、さくなったように見えた。
背がし丸くなっている。
髪にもいものが増えていた。
同じもんぺ姿。
首に巻いた拭い。
芳子はを止めた。
ハルもかなかった。
親子はしばらく、数メートルれたまま向かいった。
「母ちゃん」
そう呼びたい。
けれど声がない。
ハルも何か言おうとしているようだったが、唇がくだけだった。
4分の言葉があった。
けれどすぎて、どこから話せばいいか分からなかった。
やがてハルが先にをいた。
「ちゃんとべてるか」
芳子は目を見いた。
4。
列がる直にも、母は同じことを言った。
「ちゃんとべるんだよ」
芳子の目に涙が浮かんだ。
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