みかん小説
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"不在着信93件の朝" 第2話

計の針をへと巻き戻す。

息子の志が里との結婚を決め、しい族としての第歩を踏みそうとしていた頃、世界はまだ希望とびに満ちあふれているように見えていた。

の質素な居に座り、志はしかしこまった様子で湯呑みを両で包み込みながら、母親であるみつ子の顔を窺うようにして切りした。

「母さん、父さん。俺たち、どうしても自分たちのを持ちたいんだ。でも、今の貯じゃどうしても希望の物件のりなくてさ……し援助してもらえないかな?」

志の隣には、清楚なワンピースをにまとった里が座っていた。当の彼女は、控えめで礼儀正しく、義両親をから敬っているかのように見えた。

みつ子は、息子が庭を持ち、派に巣っていくれやかな未来をい描き、何の疑いも抱かずに穏やかな表で答えた。

「もちろんよ。くらい、親としてしてあげるわ。志、里さん、せっかくのしいのスタートなんだから、応援させてちょうだい」

その言葉を聞いた瞬里は顔を輝かせ、満面の笑顔を咲かせた。両を胸のわせ、座布団から滑り落ちるようにして々と畳にげる。

「お母さん、お父さん、本当に……本当にありがとうございます! 私たち、このご恩は忘れません。

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切に、切に暮らしますね!」

その無邪気で美しい笑顔を信じ、みつ子は何にして勤めげ、にした退職から、惜しげもなく百万円を引きしてとして差しした。

しかし、甘いはそこから急速に歪み始めた。

いざ産会社とで本契約を結ぶ段階になり、決定な問題が発覚したのだ。息子夫婦が選んだのは、都へのアクセスが良いに建つ、広々としたデザイナーズ注文宅だった。と建物をわせれば千万円を超える額物件。当然、志の当収と里のパート収入だけでは、到底宅ローンの本審査に通るはずがなかった。

産会社の担当営業が、申し訳なさそうな、しかし計算い表類を広げた。

「岡崎様、変申しげにくいのですが……息子様単独の与信では、希望借入額に届きません。もしこの物件のご契約をめるのであれば、ご両親様が連帯保証に入っていただくか、あるいは返済座をご両親様名義に設定していただく必がございます」

困り果てた顔をして俯く志。隣で「このを諦めたら、私の友達にわせる顔がない……」と涙ぐむ里。

その姿を見たみつ子と正は、親からな過ちを犯してしまった。連帯保証となることを承諾しただけでなく、毎の返済額である万円全額を、親である自分たちが事実引き受けて支払うという、極めてい取り決めを結んでしまったのである。

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その負担は、定退職と活を目にした初老の夫婦にとって、狂気の汰と呼べるほど過酷なものだった。

みつ子の万円。 夫である正万円。 夫婦の収入をわせても、毎万円にしかならない。

そこから毎万円が、宅ローンの返済としてに、け容赦なく座から引き落とされていく。

元に残る額は、わずか万円だった。

費、費、固定資産税の積、医療費、通信費、用品代。が尊厳を持って活するためのすべての支を、その万円のでやりくりしなければならなかった。

みつ子の活は変した。

かつてはささやかな楽しみだった所の友とのランチも、すべて断るようになった。「最みつ子さん、付きいが悪くなったわね」というに入っても、杯数百円のコーヒー代すら惜しかった。

スーパーの品売りには、必ず夕暮れの暗い帯にを運んだ。員が黄い値引きシールを貼るワゴンの周りを巻きに歩き、円、円単位でい見切り品のキャベツや、消費期限の豆腐、脂ばかりの豚肉を選び抜いた。

かつて正と楽しみにしていた休も、度の夫婦入らずの温泉旅も、完全に活から消えった。

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