正月十日の夕方。 68歳の小林はる子は、家族で焼肉へ行くため玄関に立っていた。 しかし息子・直哉は冷たく言った。 「母さん、車に乗れないから来なくていい」 四人を見送った夜、一本の電話が入る。 「はる子さん、寝たきりだって聞いていたけど……」 親戚には“認知症で入院中”と説明され、役所には要介護認定まで申請されていた。 さらに書類には―― 「認定が下り次第、田舎のマンションを売却」 翌朝には施設の迎え。 出発前に通帳と実印を探すという予定まで残されていた。 しかも、家の頭金として渡した1200万円は住宅購入に一円も使われず、嫁・絵理の父が経営する会社へ流れていた。 なぜ家族は、はる子を“認知症”に仕立てようとしたのか。 車にも、食卓にも席を与えられなかった母が、自分の人生を取り戻すため静かに反撃を始める――。