"車に私の席はなかった" 第24話
「昨お話しした通り、本から本格な法続きを始いたします」
彼は類を指差した。
「まずは絵理さんのご両親に対し、1200万円の返還と慰謝料の請求内容を送付します」
彼の声はとても穏やかだったが、その言葉には法を司る者としてのい志が込められていた。
私は彼に全てを託すことを誓い、用された委任状に静かに実印を押した。
朱肉の赤がいにしっかりと刻まれるのを見て、私は自分の選択が違っていなかったと再確認した。
これは単なるおの取りてではなく、踏みにじられた私のとしての誇りを取り戻す戦いなのだ。
それから数、絵理の実が経営する桜産に裁判所からの通が正式に届いた。
法座の仮差し押さえと、横領による損害賠償請求という、会社にとって致命な通告だった。
絵理の父親は慌てて懇にしている弁護士を雇い、なんとか示談で済ませようと必に抵抗したらしい。
佐藤司法士の元にも、相方の弁護士から解を求める話が何度もかかってきたという。
しかし、決定な類の証拠と自の録音音声がある以、彼らに勝ち目など万につもなかった。
事件が公になり、刑事告訴されることを恐れた絵理の父親は、最終に全ての請求をむしかなかったのだ。
広告
1200万円の元本に加え、私に対する額の慰謝料と法続きの費用。
それらを括で支払うために、絵理の両親は自分たちのむ派な邸宅を放すことになった。
さらに、方のさな町で産会社が詐欺と横領をしたという噂は、あっというに広まった。
古くからの主や顧客は次々とれ、だった取引も全てキャンセルされたという。
桜産は資繰りが急速に悪化し、従業員も辞めていき、事実の倒産状態へと追い込まれていったのだ。
の財産を騙し取り、私を認症に仕てげようとした当然の報いだった。
権力と嘘でを支配しようとしたの末は、あまりにも惨めであっけないものだった。
方、京のに取り残された直哉と絵理のにも、決定な亀裂がっていた。
絵理の両親による計画な横領が発覚し、直哉は妻とその族に対する信用を完全に失った。
彼は自分を騙していた絵理を激しく責めてて、毎のようにので鳴りいが続いたという。
しかし絵理もまた被害者ぶって、「全ては父親が勝にやったことだ」と泣き叫んで責任を逃れようとした。
自分が主導して私の偽造診断を作ろうとした罪を棚にげ、ひたすら自分を守ることだけを考えたのだ。
お互いを罵りい、過の失敗を掘り返しては責任を押し付けうの活。
広告
それはもはや、族や夫婦と呼べるような温かいものではなくなっていた。
そして、直哉に最もくのしかかったのは、あの派なのために組んだ莫な宅ローンだった。
が切使われていなかったことで、彼は数千万円という借をで背負うことになっていたのだ。
毎の支払いは彼の料の半を吹きばし、活は急速に困窮していった。
を売却して軽になろうにも、仮差し押さえのトラブルの記録がついた物件など、まともな価格で買ってくれるはいない。
相よりもはるかにい値段でしか売れず、売却したとしても額の借だけが残る計算になる。
彼は自分の勝さと愚かさが招いた絶望な借獄ので、誰の助けも得られずにもがき苦しむことになったのだ。
私という都の良い無料の政婦を追いしたことで、彼らの活は根本から成りたなくなっていた。
結局、借の圧と毎の論に耐えきれなくなった絵理は、さな娘の美咲を連れて勝にをてった。
婚届をテーブルのに残し、実が倒産状態であるにも関わらず、どこかへ姿を消したらしい。
彼女がどこへ向かったのか、どんな活をしているのかは、私にはる由もなかったし、りたいともわなかった。
ただ、あのお玉の封筒をゴミ箱から拾いげてくれた、優しい美咲のことだけが私のにさな痛みを残していた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
消された母の名前
父の三回忌を終えた夜、53歳の里美は、認知症の兆しがある母・清子から、突然知らない名前で呼ばれる。 「直子、今度こそ逃げないで」 直子とは誰なのか。なぜ母は、娘である自分を妹の名で呼んだのか。 不審に思った里美が戸籍や父の遺した書類を調べ始めると、自分の出生届に残された不自然な訂正、20年以上続いていた謎の送金、そして施設で暮らす一人の女性の存在が浮かび上がる。 母が53年間守り続けたものは、愛だったのか、嘘だったのか。 隠された12通の手紙と、海辺の古い写真が、里美の知らなかった「本当の家族」を少しずつ明らかにしていく――。人生逆転|第二の人生|親子関係2.0萬字5 0 -
完結第8話
孫の一言で、三億円の家を売りました
72歳の和子は、7歳の孫が配達員に「お金を払ってるんだから、ありがとうって言わなくてもいい」と言うのを聞き、言葉を失った。さらに48歳の息子・健一まで「間違ってない」と笑う。健一一家が12年間家賃0円で暮らしている一戸建ては、和子が1億4800万円で購入した和子名義の家。今では査定額が約3億円になっていた。ところが健一は、その家を当然のように「自分の家」と呼び、「どうせ将来俺が相続するんだから、名義を変えてもいいだろ」と言い始める。息子の言葉を聞いた夜、和子は1人で不動産会社に電話をかけた。12年間「家族だから」と与え続けてきた母親が、初めて大きな決断を下そうとしていた。因果応報|親不孝|親子関係|金銭問題1.2萬字5 10 -
完結第14話
一杯の鍋が変えた人生
柏優太は、職場でのパワハラが原因で心を壊し、半年間ほとんど誰とも話さず部屋に閉じこもっていた。 そんなある日、隣に引っ越してきた母子3人の姿を見かける。 「何も買えなくてごめんね」と泣く母親と、空腹を我慢する子供たち。 過去に大切な友人を救えなかった後悔を抱えていた優太は、思わず声をかける。 「よかったら……うちで鍋しませんか」 一杯の鍋をきっかけに、孤独だった男と傷ついた母子の人生が少しずつ変わり始める。 しかし、温かな時間の裏には、母親が隠していた過去と、子供たちを取り戻そうとする元夫の存在があった。 誰かを救おうとした優太が、実は自分自身も救われていた――。 小さな優しさから始まった、再生と家族の物語。人生逆転|第二の人生|親子関係2.2萬字5 293 -
完結第12話
寿司屋で暴かれた嫁
68歳の田村節子は、息子の再婚相手である嫁・美咲を、ずっと“よくできた人”だと思っていた。 亡き夫を失い、1人暮らしになった節子の家へ通い、手料理を届け、病院の送り迎えまで申し出てくれる優しい嫁。近所の人たちからも羨ましがられ、節子自身も本当の娘のように感じ始めていた。 しかし、美咲は少しずつ、家の権利書や預金、保険の受取人について尋ねるようになる。 そんなある日、節子は美咲に誘われ、馴染みの寿司屋へ向かった。ところが店主は、美咲の顔を見た瞬間、血相を変えて叫ぶ。 「節子さん、その人から早く逃げてください」 店主の父を騙し、財産を奪った女と同じ顔――。 信じたい気持ちと、拭えない違和感。やがて節子は、嫁の荷物の中から決定的なものを見つけてしまう。 優しい嫁の正体は何者なのか。 そして節子は、息子と家を守るため、静かに反撃を始める。因果応報|相続|親子関係1.7萬字5 47 -
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 93 -
完結第11話
追放母の25億売却
お盆のため、長崎から東京の息子夫婦のペントハウスを訪れた田中春江。 亡き夫に手を合わせ、息子の好物を詰めた重箱を抱え、半日かけて上京した彼女を待っていたのは、温かな家族の食卓ではなかった。 嫁・里奈は春江の手料理を目の前で捨て、安いホテルの予約票を差し出す。さらに息子夫婦は、自分たちが旅行へ行く間、愛犬の世話だけを春江に押しつけようとしていた。 長年、息子のために働き続け、すべてを与えてきた母。だがその日、春江はようやく気づく。 自分は家族として呼ばれたのではない。ただ都合よく使われるために呼ばれただけだった。 その夜、春江は20年以上連絡を取っていなかった“ある人物”に電話をかける。 翌日、息子夫婦が暮らしていた天空の城は、静かに動き始めた――。人生逆転|親不孝|親子関係1.6萬字5 64 -
完結第12話
無能嫁のタワマン逆転
73歳の玲子は、75歳の夫と45歳の息子・徹と暮らしていた。 夫は昔ながらの価値観を持つ元銀行員。家事も育児もすべて玲子に任せてきたにもかかわらず、完全退職後、家にいる時間が増えると、徹と玲子を見下すようになる。 「独身無職の親のスネかじりと、無能な嫁は出ていけ」 そう怒鳴られた瞬間、玲子は静かに決意した。 夫は知らなかった。引きこもりだと思い込んでいた息子が、実は在宅で高収入を得るフリーのエンジニアになっていたことを。そして、長年“何もしていない嫁”と見下していた玲子にも、正当な権利と新しい人生が残されていたことを。 2か月後。 玲子と徹が暮らすタワーマンションの前に、夫が現れる。手には、かつて玲子が好きだったコンビニスイーツ。 追い出したはずの妻と息子が、なぜ自分より豊かに暮らしているのか。 昭和の価値観にしがみついた夫が、ようやく失ったものの大きさに気づく――。相続|親子関係1.8萬字5 39 -
完結第12話
娘の遺した手紙
娘の葬儀を終えたその夜、43歳の佐藤陽子は夫から家を追い出された。 「もうお前を置いておく理由はない」 20年間支えてきた夫から浴びせられた冷たい言葉。さらに夫は、亡くなったばかりの娘の保険金を手に入れようとしていた。 しかし、夫が知らなかったのは、陽子が何も持たない専業主婦ではなかったこと。 祖父から受け継いだ700億円規模の資産、そして夫の裏切りを暴くために動き始めた秘密の調査。 やがて明らかになる、娘の死に隠された真実。 最後まで母を思い続けた娘が残した一通の手紙が、止まっていた家族の時間を動かし始める――。夫婦|親子関係1.8萬字5 34 -
完結第12話
家賃55万の置き土産
夫の家族と13年間暮らしてきたまゆ子は、ある日突然、義母から告げられる。 「里帰り出産で長男夫婦が来るから、あなたは明日までに出ていって」 家族のために尽くしてきたはずだった。血のつながらない息子にも、義母にも、夫にも、ずっと気を遣ってきた。けれど義母にとって、まゆ子はもう“用済み”の存在でしかなかった。 しかも夫は出張と偽り、別の女性と会っている疑いまで浮かび上がる。 翌日、まゆ子は言われた通り家を出ることにした。 ただし、何もかも置いていくつもりはなかった。 月55万円の家賃を払っていたのは誰なのか。リビングを埋める家具家電を買ったのは誰なのか。 まゆ子が引っ越し業者に告げた一言で、義母たちの“幸せな同居計画”は静かに崩れ始める――。兄弟姉妹|親子関係1.8萬字5 53 -
完結第10話
嫁に奪われた最後の400万円
《400万円、ごちそうさまでした》 28年間、家族のために働き続けた母・成瀬美佐子。 息子の大学費用、結婚資金、新生活の援助――惜しみなく愛情とお金を注ぎ、「家族が幸せならそれでいい」と信じて生きてきた。 そんなある日、35歳の息子・大輔から「家族旅行に行こう」と誘われる。 久しぶりに家族の温もりを取り戻せると思い、美佐子は400万円もの旅行費を負担した。 しかし、出発当日の成田空港で告げられたのは、信じられない一言だった。 「美香のお母さんも来ることになったから、母さんの分はキャンセルした」 そして嫁は冷たく笑う。 「400万円、助かりました。ごちそうさまでした」 「金ヅルはもう用済みですから」 その瞬間、美佐子は悟った。 自分は家族として必要とされていたのではない。 ただ、お金を出す存在として利用されていただけだったのだ。 それでも怒りを見せず、静かに空港を去った美佐子。 だが、息子夫婦は知らなかった。 自分たちが切り捨てた母親が、28年間の努力で築いた信用と財産、そして決して折れない誇りを持つ女性だったことを――。 失ったのは400万円の旅行ではない。 失ったのは、母親の愛情だった。 そして始まるのは、復讐ではなく「自分の人生を取り戻すため」の静かな決断。 もう誰にも、私の優しさを利用させない。 私はあなたたちの財布でも、都合のいい母親でもない。 私は――成瀬美佐子という、一人の人間です。真実|裡の顔|親子関係1.6萬字5 29