《400万円、ごちそうさまでした》 28年間、家族のために働き続けた母・成瀬美佐子。 息子の大学費用、結婚資金、新生活の援助――惜しみなく愛情とお金を注ぎ、「家族が幸せならそれでいい」と信じて生きてきた。 そんなある日、35歳の息子・大輔から「家族旅行に行こう」と誘われる。 久しぶりに家族の温もりを取り戻せると思い、美佐子は400万円もの旅行費を負担した。 しかし、出発当日の成田空港で告げられたのは、信じられない一言だった。 「美香のお母さんも来ることになったから、母さんの分はキャンセルした」 そして嫁は冷たく笑う。 「400万円、助かりました。ごちそうさまでした」 「金ヅルはもう用済みですから」 その瞬間、美佐子は悟った。 自分は家族として必要とされていたのではない。 ただ、お金を出す存在として利用されていただけだったのだ。 それでも怒りを見せず、静かに空港を去った美佐子。 だが、息子夫婦は知らなかった。 自分たちが切り捨てた母親が、28年間の努力で築いた信用と財産、そして決して折れない誇りを持つ女性だったことを――。 失ったのは400万円の旅行ではない。 失ったのは、母親の愛情だった。 そして始まるのは、復讐ではなく「自分の人生を取り戻すため」の静かな決断。 もう誰にも、私の優しさを利用させない。 私はあなたたちの財布でも、都合のいい母親でもない。 私は――成瀬美佐子という、一人の人間です。