"不在着信93件の朝" 第13話
ボーナスを注ぎ込んでも焼けに。滞納がヶ続いた点で、は即座に期限の利益を喪失させ、抵当権を使した。
築からわずか数で、のデザイナーズ豪邸は裁判所によって競売にかけられた。
しかし、コロナ禍以の産の変や、無理な設計の注文宅であったことが災いし、落札価格は残債を幅に回る千百万円にしかならなかった。を奪われた挙句、元には
千百万円もの巨額の宅ローン残債
だけがく残されたのだ。
志がを親にさせて買ったドイツ製の級も、里が買い集めたブランドバッグや宝類も、すべて本差し押さえられ、束文で売却された。
さらに追い打ちをかけたのは、夫婦の醜い内紛だった。
が尽き、見栄を張れなくなった里は、毎狂ったように志を罵倒した。「あんたの甲斐性なし!」「あんたの親のせいで私のはめちゃくちゃよ!」と叫び、財具を投げつけた。
志もまた、「おがあの『支払いをく止めてみろ』なんて余計なことを言ったからだろ!」「おが親を追いしたからだ!」と妻に鳴り返し、警察汰の夫婦喧嘩を繰り返した。
親戚や友からも完全にを尽かされ、借を申し込んでも誰も相にしてくれない。
現、は都からくれた、築の暗い造賃貸アパートにを寄せている。
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夕方。かつてみつ子たちがいられていたのと全く同じように、褪せた物のジャージを着た里が、所の激スーパーの見切り品コーナーに張り付いている。
「志! くしなさいよ! 半額シールの豚肉、のに取られちゃうじゃない!」
「分かってるよ……ったく、うるせえな……」
残債の返済とアパートの賃に追われ、毎の費を数円単位で削り、を限界までし、お互いを憎みいながら沼の活をい回る々。
かつて自分たちが親に対して吐き捨てた「寄」「きがい」「みすぼらしい」という悪のすべてが、何倍ものさとなって自分たちの首を絞めげていた。
自らが蒔いた傲と怠惰の種を、涯をかけて刈り取り続ける――それが、親の尊厳を踏みにじった者たちにされた、あまりにも必然な因果応報の結末だった。
最終章 夕暮れの辺にて
ディナーを終えた翌、みつ子と正は、湘の穏やかな岸線を訪れていた。
初の爽やかな潮が、みつ子の丁寧にえられた髪交じりの髪を優しく揺らす。波打ち際では、どこまでも続く青いが、夕暮れの陽を浴びて黄にキラキラと輝いていた。
寄せては返す波の音にを傾けながら、みつ子はこの数の激の々を静かに追していた。
あの凍りついたリビングで、たいにを浸しながら絶望の淵にたされていた夜。
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親族ので嘲笑われ、尊厳を無惨に踏みにじられた正の座敷。 「くやめてみろ」という挑発に対し、徹な決を固めた寝。 件の着信を完全に見捨て、温泉の湯煙のでに入れた圧倒な静寂。 そして、ロビーで泣き叫ぶ息子夫婦に背を向け、自らので歩きしたあの。
(私は……私たちは、何つ違っていなかった)
みつ子はく、どこまでも澄み切ったを胸いっぱいに吸い込んだ。
世には、「どんな子どもであっても無条件でし、支え続けるのが親の無償のだ」「どれほど遇されても、耐え忍ぶのが美徳だ」と信じ込んでいる々がまだくいる。
だが、それはではない。ただの盲従であり、共依という名の病だ。
子をう親の真を利用し、謝を忘れ、親の命と老資を当たりのように搾取するへと成りがったならば、たとえ血を分けたが子であっても、それはもはや族ではなく、魂を蝕む害毒でしかないのだ。
親には親のがあり、守るべき尊厳がある。子どもをのとして自させるための最の教えは、理尽な甘えと傲を断固として拒絶し、自らのでたせることなのだ。
「みつ子」
背から穏やかな音がづき、正がみつ子の隣に並んで砂浜にった。
正はおしそうに妻の横顔を見つめ、優しく微笑みかけた。
「何を考えていたんだい?」
みつ子は夕に照らされた平線を見つめ返しながら、穏やかに、しかし凛とした声で答えた。
「謝していたのよ、正さんに。あの、私のを握りしめて、緒に闘ってくれたことに」
正は静かに首を振った。
「礼を言うのは俺の方さ。おが決断してくれたから、俺たちは獄から抜けすことができた。おの勇気が、俺たちのを取り戻してくれたんだ」
正はそっと、みつ子のを包み込むように握りしめた。その掌は温かく、力く、以の歳を共に乗り越えてきた確かな絆に満ちていた。
「俺たちの本当のは、まだ始まったばかりだな」
「ええ、本当にそうね。これからもっともっと、たくさんの美しい景を見て、美しいものをべて、笑って暮らしましょう」
太陽が平線の彼方へとゆっくりと沈み、空とを息を呑むほど美しい紺と茜のグラデーションへと染めげていく。
岡崎みつ子、歳。 千万円い搾取と理尽な侮辱に耐え抜いたの女性は、自らので宿命の鎖を断ち切り、完全なる自由と、何ものにも侵されない真の幸福をに入れたのである。
並んで歩きすの跡が、砂浜のに確かな軌跡を描いていく。 その背には、夕映えのがどこまでも温かく、誇らしげにり注いでいた。
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