"4時20分で止まった遺品" 第6話
しかし、彼女は言も言い返さなかった。 ただ、父である浩司の作業着の袖を、ぎゅっと指先がくなるほどく握りしめた。 浩司は、そんな娘のえ切ったさなを、から包み込むように握り返した。
からりてきた武田裕は、倉庫の入りからを度だけ、ゴミを見るような目で見渡した。 たったの度。そしてすぐに背を向けた。
「見る価値もないな。くこうぜ、美咲。カビの匂いがにつく」
はに乗り込み、エンジンを激しく吹かすと、ぬかるみのをねげながらりっていった。美咲が助席で写真を見ながらせせら笑う声が、いた窓の隙から瞬だけに乗って聞こえた。
浩司は、い鉄の扉をゆっくりと閉めた。 京錠から落ちた赤い錆が、再びのひらを汚した。 しかし、その、浩司のに最もく残ったのは、荒れ果てた倉庫の惨状でも、兄夫婦の浴びせた屈辱の言葉でもなかった。 最まで自分の袖をさなかった、恵のたく震える指先の触だった。
の法を迎えるまでの約ヶ、浩司たちの活は坂を転がり落ちるように困窮を極めていた。
父の介護のために退職してから。歳を過ぎた浩司の再就職は、像を絶する厳しさだった。 浩司はぶりに履歴をき、かつて自分が熟練の旋盤として働いていた械部品を訪ねた。
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応接にてきたのは、かつて同じ作業台で肩を並べて部品を削っていた輩だった。彼は今やとなり、仕てのいい作業着を着ていた。
は、浩司の履歴を机のに置き、しばらく無言で眺めていた。 その線は、職歴の最のと現のにある「」という空のでピタリと止まっていた。
「浩司さんが、昔ずば抜けて腕のいい職だったことは、俺もよくっていますよ」
はそう置きすると、履歴を指先で机の隅へと、ゆっくりと押しやった。
「でもね……も現をれていれば、作械は全部NC(数値制御)と最のコンピュータ制御に変わっちまった。図面も全部CADだ。浩司さんの持ってる資格も、今の規格じゃ全部取り直しになっちまうんだよ」
「から勉し直します」浩司はをくげた。「料も、の番い基準で構いません。どんな仕事でもやります」
は最まで、採用の言葉をにしなかった。 浩司は、机の端へ押しやられた自分の履歴を見つめるだけで、その沈黙のを悟るしかなかった。
そのから、浩司のは、夜けの暗い材派遣事務所のにつことから始まるようになった。 のものも、え切った作業着を着て事務所のに並んだ。しかし、配師から名を呼ばれるのは、いつも若くて体格のいい男たちが選ばれた、番過酷な現の数わせのだけだった。
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、寝たきりの父の体を毎抱き起こし、支え続けてきた腕だったが、建設現で担ぐキロのセメント袋は、まったく異なる暴力なさで浩司の体にのしかかった。
週目に入ったあるの。 ぬかるんだ事現の仮設階段を、セメント袋を肩に担いでがっていた浩司の腰に、突如として撃のような激痛がった。 「ぐっ……!」 次の歩を踏みそうとしたがのように固まり、かなくなった。バランスを崩し、肩から滑り落ちたセメント袋が、製の階段のに激しい音をてて落した。
ドスン!
いがのにいがった。階段のにいた現の班が、だらけのヘルメット越しに浩司をたく見げた。
「おい! 無理ならさっさとりてこい! 代わりなんていくらでもいるんだからよ!」
浩司は震えるで鉄パイプのすりを掴み、歯をいしばりながら、ゆっくりと腰を伸ばした。
「……丈夫です。やれます」
その、浩司は現の詰め所の救急箱から鎮痛剤を錠もらい受け、で流し込んで残りの作業をやり切った。薬の包みには、かつて父が定期通院していた総病院と同じ調剤薬局のマークが印刷されていた。
まみれになって帰宅した浩司は、狭い造アパートの玄関ので、しばらくを止めて息をえた。
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